第16話 ひとりで反省


  進は、また豪華な部屋へひとり帰って、浴槽にお湯を張り、入った。いつもなら飲んだ後は入らないようにしているが酔いはもうすっかり覚めてしまって、あんなにフラフラしたのが嘘のようである。眠気もまったくなく、風呂に入りながら今日の反省、リアストと現実の流れを振り返ろうと思った。


――芽衣子は少し遅れてスーパーの駐車場に来たがそれは許容範囲内。リアルストーリーで触れてなくても予定通りと言ったところかな。そうだな、そうそう、ハウステンボス内を歩き始めたくらいからなんか変な感じだったなぁ。芽衣子さん、えらく優しくなったし、ぼくがあんなに引っかかって転びそうになるなんて書いていなかった。それから歌劇、想像もしてない展開だった。ぼくも歌劇好きだけど、芽衣子さんも好きだったなんて。極め付けは、バー。リアストと逆になってぼくが酔っ払った。芽衣子さんに支えられて帰ったし、先に寝てしまうなんて。ゆうや君のことなんて書いてなかったし、やっぱり今まで当たってたことは幻か。でもトトビッグは14試合全部当ってたし、それは間違いないよな。


進は、そんなことを考えながら風呂の中で眠り込まないように早めに湯舟から上がり、髪を乾かしてから再度ベッドに入って眠りについた。


 いったい夜中の何時なのか、進は、突然目が覚めた。薄暗い部屋のもう一つのベッドに芽衣子が普段着を着て腰掛けている。


芽衣子は、ニコニコと笑いながらこちらを見ていた。


「ああ、芽衣子さん、帰って来たんですか、ゆうやくんは大丈夫なんですか」


芽衣子は、更に笑って


「ゆうやは大丈夫ですよ。でも芽衣子さん帰っちゃいましたね」


――良かった。帰っちゃったって、そこにいるじゃないか。あれ、夢か、そうかそこの芽衣子さんは夢か。


 進は、夢の中でも総合的状況を判断する能力を持っていた。


「残念でしたね、多摩野さん。一緒にモーニング食べる予定だったのにね。日付が変わっちゃったんじゃない? それに国名入れましたか?」


―― ああ、日付一日分しか入れてない。一日しか入れられなかった。国名は入れた。

 

進は、夢の中でそう考えた。


「ここはハウステンボス国ですよ。パスポート持っているでしょ?」


―― ああ、そうか、やられた。ハウステンボス国か、そんなの書いていない。


と叫んだかどうかははっきりしないがそこで進は本当に目が覚めた。

スマホの画面をつけるとまだ5時30分だった。


――やっぱり夢だったか。


 半信半疑で納得して起き上がった。


進は、スッキリと目覚めた。昨夜のカクテルのアルコールはまったく残っていないようである。モーニングまではまだ時間があるので進はもう一度リアストの内容を確認しようとアイコンを捜した。



―― あれあれ、リアスト逃げたのか? あれ? どこいった。


  進は、スマホの画面の中を10分ほど捜しまわったがいっこうに見当たらなかった。アプリを殆ど入れてない進のスマホで見つからないということは無くなってしまっているに違いなかった。


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