第3話 夢で逢えたら

――会ったところでぼくは一度無理と断ったし、いったい何が出来るってんだい。

このまま会えない方がみんなの為になるんじゃないのか? いっそのこと夢の中ででも付き合うか。


 進は、そう投げやりになりながら芽衣子にせめて夢の中で再会できますようにと祈りながら布団の中に入った。あまり強く祈り過ぎるとうまくいかないことはこれまでの経験で知っていたから軽く祈りながら半ば忘れながら自然と夢の中へ入っていった。


◇◇◇


  芽衣子が病院らしき所でこちらを見ながらニコニコ笑っている。


「ああ、芽衣子さん、会いたかった。今どこにいるんですか?」


進は、声に出したのかどうか分からないがいきなり声をかけた。


「あははは、ほんとですか? 口ばっかりじゃ駄目ですよ」


芽衣子はなおいっそう笑って答えた。


「ほ、ほんとですよ。芽衣子さんが整形外科からいなくなってリハビリ行く回数が減ってしまっているんですから」


  進は、また声を出したのかどうか分からなかったが芽衣子に言った。


「何も言わないで前の病院辞めてすみませんね。私に会いたかったんですね。分かりました。じゃ、こうしましょう、私にめぐり逢う話が入った小説を書いてみて下さい。多摩野さん、小説書いているんでしょ? 私が多摩野さんのスマホにリアルストーリーというアプリを入れておきますからそれでほんとに起こりそうなストーリー書いてくださいよ。 私に会えるような話ね。アイコンは、私の似顔絵にリアストとなっているからすぐに分かりますよ。それから年月日と国名を必ず文章に盛り込んで書いてくださいね、忘れないでね。あっ、1000文字以内で書いてね。詳しく書き過ぎると直ぐに終わっちゃいますよ。じゃ、私は、病院で待ってますね」


「そんなあ」


あまりにも鮮明過ぎる芽衣子の夢の世界に入り込んでしまっていた進はもっと話していたい、側にいたいと思わず声を出して目を覚ました。


――ああ、芽衣子さん、可愛かったなぁ。やっぱり夢だったんだな。でもやけにリアルだったなぁ。


 進の枕元には充電中のオレンジ色の半透明ケースに入ったスマホが置いてあった。進は充電用のコードを外してスイッチを入れた。 外はまだ暗く、満タンに充電を終えた画面が眩しかった。

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