危険度:レベル8 胡散臭い男

「お、おい!何なんだよこの爆発は!?」

「どっかからの襲撃らしいけど、セキュリティが意味ないんだとさ!」

「バカ、なにやってんだ!ここは放棄して脱出するん——」


——襲撃は突然だった。

強固なセキュリティで固められていたにも関わらず、爆発が起こった。

監視システムは意味をなさず、先日外部から過剰ではないかと指摘された数々の武装も襲撃者には効果が見られなかった。

死の間際に見たモノは強烈な白い光と、その向こうにいた人影だけだった。




学校が終わってから研究所に行ってみると、何だかみんな慌ててる。いや、研究者の人たちはいつも忙しそうにしてるけど、今日はなんだか変だ。

みんな緊張してるっていうか……焦ってる感じもする。

それにメインホールにある大きなモニターには赤い文字で色々書かれてるけど、英語だから詳しい意味は分からない。


(…………寮に戻って映画でも見ていようかなー)

寮に映画好きの人がいてDVDがいっぱいあるから、よく借りて見るのにはまってる。最近見たのは外国のSF映画。まだ続きがあるしこれから見るのもいいかも。


「あれ?今日来てたんだ。何回か通ってたんだけど気が付かなかったよ」

「だってみんな忙しそうなんだもん。あそこに書いてあることも分かんないし、何があったの?」


さっきから何回かおじさんがメインホールに来てたけど、忙しそうにしてるのに呼び止めるなんて流石に出来なかった。


「ここと同じような研究所がアメリカにもあるんだけど、そこが数時間の間に壊滅したんだ」

「えっと……それって大丈夫……じゃないよね」

「そこが今どうなってるのかも分かってないから、情報を集めてる最中なんだ」


アメリカにある研究所が壊滅なんて言われても、そこがどんな所なのかを知らないからピンとこない。

でも、もしここと同じかそれ以上の所だとしたら、みんなが慌てるのも分かる。だってまだ犯人が分かってないんだから——。


「おいおい……こんなに忙しい時に何やってんだよ。こんなとこで話してる暇なんてないはずだぜ」


急に知らない人がやってきた。おじさんよりも若く見えるんだけど、なんだか怪しいというか信用できなさそうというか……。着てる服を見ると研究者じゃなさそうだから、多分超能力者なのかもしれない。


「うわっ、よりによってお前が来るのか……来るなら別の奴が良かったんだけど」

「いきなりひっでぇ事言うなぁ……忙しい時に仕事サボってんのはそっちだろ。それで、そっちはこないだ来たばっかの新入りだろ?その反応だとオレの事は紹介して無さそうだな。オレは——ってオレが言うよりもお前から紹介しといてくれ」

(……こいつが噂の新入りか…………)


最近、相手が嘘を言ってないのに心の声みたいなのが聞こえてくる。それも絶対に聞こえてくるんじゃなくて、たまにだけど……。いつからか聞こえ始めたかと言うと——確かレベル10階層最下層に行ってからだと思う。


「なんだ、もう行くのか」

「今は猫の手も借りたいぐらい忙しいんだから話してる暇なんてないんだよ」


そう言いながら、この怪しい人は忙しそうにエレベーターの方に行ってしまった。


「あの人も忙しいって言ってたのに、行かなくても大丈夫なの?」

「ああ、朝からほとんど休憩なしで色々やってたから、今は休んでいられるんだ。それにあいつの事も説明しておきたいし」

「あの人……私はあんまり仲良くなりたい人じゃなかったな……」

「まあ、あいつ——悪魔デビルは悪い奴じゃないんだけど、胡散臭い雰囲気があるから苦手な人も多いんだよね」

「デビルって名前なの?不吉な感じがするけど」

悪魔デビルって名前は持ってる能力から来ててね。そもそも名付けたのはあいつ自身なんだ」


おじさんは悪い奴じゃないから大丈夫なんて言っても、自分で悪魔デビルなんて名前を付けてる人が悪い奴じゃないって信じて良いのかどうか……。

流石にまだ会ったばっかりだし、何とも言えないけど。ちょっと不安……。

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