Bon Jovi - The More Things Change

 今回はアメリカ・ニュージャージー発の全米を代表するハード・ロックバンドで、今もなお第一線を走り続けながら世界中のファンを席巻しているアイコン──Bon Joviから『The More Things Change』です!


 ──さあ、Bon Joviと聞いて、皆さんが最初に思い浮かべる曲は何でしょう……?


 ふむふむ、色々な声が聞こえてきましたよ。でも、その大部分は圧倒的なセールスで世界的な知名度を誇る1986年リリースの3rdアルバム『Slippery When Wet』の収録曲だったのではないでしょうか?


 え、違う……? まあそうですよね。Bon Joviはデビュー当初から音楽ファンに高い支持を受け、来日公演もしていましたから、国内外問わず老若男女に好評でした。それぞれ皆さんにとってのメモリアルソングがあるのではないでしょうか。


 とはいえ、お決まりのパターンですが、Bon Joviは海外で絶大な支持を得る一方で、母国アメリカではほとんど無名の時期がありました(ほんの数年の話ですが)。それでも、先述の3rdアルバムがリリースされ、HRバンドとして英・Led Zeppelinの記録を抜く8週連続全米No.1に輝いた功績は、彼らの人気を後押しすることに。アルバムの収録曲『You Give Love A Bad Name』や『Livin' On A Prayer』も軒並み、全米No.1を達成しました。同時期に大規模な全米ツアーを敢行していた彼らがアメリカ人のロック魂を鷲掴みにするのは、時間の問題だったのです!


 アメリカ合衆国の音楽産業において類まれなる才能を発揮したアーティストを讃える、今日世界で最も権威ある音楽賞のひとつであるグラミー賞に9度のノミネート。第49回開催となった2007年には初受賞を果たすなど、数々の飛躍を遂げてきた名実共にロックの殿堂であるBon Joviですが、そんな稀代のヒットメーカーの功績故に、彼らの楽曲の中には僕も聞いたことがないものすらあります。


 ──おい、そんな中途半端な愛でBon Joviの名曲を語ろうというのか……!


 そう思ったそこの貴方、どうか落ち着いてください。予めお断りしておきますが、執筆者である僕は所謂「にわか」です。USロックが好きといいながらUKロックを先んじて紹介したり、大好きなバンドの楽曲を全て知らなかったり、音楽について偉そうに高説を垂れていますが、その実はただの「エンジョイ勢」なのです。お許しを……。


 でも、既に知っている曲への愛情なら誰にも負けないつもりですよ! 2010年という比較的新しい時期にリリースされた『The More Things Change』は、バラード調の味わい深い重低音から高音域のシャウトまでを楽曲毎に使い分けることができるボーカリスト・Jon Bon Joviによる、軽快なリズムとメロディーに乗ったノリノリの歌声によって、今まで紹介してきた暗い内容の歌詞とは一変して、気分を明るくしてくれます。


 それでは、歌詞の翻訳をしてみましょうか。まず、当該楽曲の題名ともなっているフレーズは曲中の各所に現れます。


「変化が起きれば起きるほど、変わらないものもある」


 ──まずね、Jonの歌声が渋くてこれがまた格好良いんですよ……!


 絶妙なリズムや語感の良さもあって、このフレーズは一度聴いたら暫く頭から離れないこと間違いありません。また、たった一文のフレーズが繰り返し登場するということで、言葉に含まれている真意が気になりますね。「変わりゆくものもあれば、変わらないものもある」ですか。刻々と変化していく世の中を憂いているのか、どれだけの時を経ても変わらないものを懐かしんでいるのか、どのような視点で紡がれた言葉なのでしょうかね?


「これって俺だけなのか、それとも誰にでも見えてるのかな」

「今はもう昔とは違う、明るい新時代」

「過去は巡り巡って繰り返す、それが現実」

「所詮はメロディが違うだけの似たような歌があるだけ」

「市場はまた崩壊して」

「ダメージジーンズが再び流行り出して」

「レコードの代わりに今はMP3だ」

「もう一度心から言うよ」

「世の中が何に揺れようが」

「お前はお前で、俺は俺のままだろ」

「騒ぎ立てるつもりはなかったんだが」

「今こそ袖をまくって気合を入れようか」

「変化が起きれば起きるほど、変わらないものもある」

「いつも通り陽が昇れば、ほらまた新しい日の始まりだ」

「長いこと諦めずに頑張れば、奴等はお前のカムバックを讃えるよ」

「見ろよ、俺らが生き証人だ、そうだろ」


 長くなりましたが、アップテンポで次々と語り掛けるように歌われる楽曲なので、途中で切ることができませんでした。


 要するに、人間の個性や自然の摂理など、変わらないものがあるなかで、人々の営みは刻々と変化していく。でも、そんなことは関係ない。俺たちは自分が生き証人となれるように、その時々でできることをやっていこう。そうすれば、人々はきっと諦めの悪いド根性を認めてくれるから。「ほらな、変化がある一方で変わらないものがある。それが俺たちだぜ……!」的なことを言いたいんですかね。全然違ってたらすみません。


 楽曲はこのまま間髪入れずに2番に入っていきます。


「堂々巡りか時間切れか」

「誰もが12,3,6,9のどこかに居る」

「時の巡りの中で俺たちがページをめくる」

「ありきたりな物語でも伝え方が違うのさ」


 ここからサビまでは1番の繰り返しです。すみませんが、僕の乏しい理解力では2フレーズ目の数字が意味する内容が分かりませんでした。3の倍数で12までというと、連想するのは時計ですよね。時差によって生きている時間は違えど、地球上の人間たちは全て確かに存在しているということを伝えているのでしょうか。


 4つ目のフレーズは「温故知新」という言葉を端的に説明しているような気がします。昔からあるような古い物語でも、創意工夫を凝らして伝え方を変えれば違った価値を見出すことができる。取り敢えず世間の流行に従っておけば間違いはないけれど、既に使い古されたようなものにも隠された価値があるかもしれないと考える心の大切さを説かれているような気がします……。


 続きはサビの途中からです。


「変化が起きれば起きるほど、変わらないものもある」

「絶対だの永遠だのは聞き飽きたよ」

「未来に期待したり過去に縋りついたりすんなよ」

「変化が起きれば起きるほど、変わらないものもある」


 ──うぐっ、2フレーズ目の言葉は僕にとって会心の一撃だったようです。例えば、反抗期を迎える前のこと、小学生だった在りし日の僕は母親に「僕はお母さんが大好きだから反抗期なんて絶対ないよ」と言い切ったものです。実際は時が流れるにつれて身も心も不安定な時期に突入し、触れるもの全てを傷つけるような跳ねっ返りに成長したものです。お恥ずかしい……。結局、絶対なんてあり得ないんですよね。永遠なんてものはもっと存在しないと思います。


 だからこそ、未来に過度な期待を寄せたり、過去の失敗をいつまでも憂いていたりするのではなく、変化に身を委ねながら、変わらないものを大切にしようということでしょうかね。あ、安心してください。僕は変化に身を委ねた結果、時間が心を成長させてくれたおかげで反抗期を脱却し、今では母に罪滅ぼしを兼ねて親孝行をしているつもりです。母が僕を育ててくれた、大切な人であるという事実は、いつまでも変わりませんから。


 話が大幅に脱線しましたが、もはや恒例行事ですね。すみません。十数秒の間奏を挟んで、クライマックスに向けた元気なメロディーが鳴り響きます……!


「最近じゃ"sha la la"というよりも、"na na na"の響きがウケるのさ」

「あとはラッパーにダンサー、リミックス・ドラムマシンとかな」

「お偉いさん方とレコード会社に捧げるような音楽だ」

「もしハッピーエンドを期待してるなら」

「俺たちがもう一発かましてやるよ」

「変化が起きれば起きるほど、変わらないものもある」


 そして一瞬の静寂の後、お決まりのワンフレーズを繰り返して鳥肌もののサビへと進行しますが、以降は既に翻訳した歌詞の繰り返しなので割愛させていただきます。


 "sha la la"と言うのは、同じくBon Joviの『When We Were Beautiful』に登場する一節で、"na na na"は『Born To Be My Baby』での掛け声であるかと思われます。でも、後者の方がリリース年が古いはずなのですが、前者よりも人気だということに不満そうな歌詞ですよね。Bon Joviには何か別の思惑があったのか、それとも単に僕が翻訳を間違えているのか、分かる人は教えてください。


 今回はこれで以上です。お付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。皆さんも楽しんで頂けましたでしょうか。やっぱりUSロックもUKに負けず劣らず、最高ですよね。紹介してもし足りません。


 だから次回もUSバンドからチョイス致します。古いグループか、新しいグループか、メジャーバンドか、インディーズバンドか、まだ何も決めてないので、乞うご期待です! 余談ですが「この曲の歌詞紹介をしてほしい」という旨のリクエストも受け付けていますので、よろしくお願いします。



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はBon Jovi - The More Things Changeから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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