Queen - Sheer Heart Attack
──コッチヲ見ロォ~!
お次は70年代のロックシーンを牽引し、偉大なるボーカリスト・Freddie Mercuryが逝去した1991年以降も、現在に至るまで精力的に活動を続けているイギリス・ロンドン発のロック・ミュージックの殿堂──Queenの登場です! 本国イギリスでは長期にわたって鳴かず飛ばずだった彼らの楽曲は日本で爆発的な人気を博したということもあって、日本人にとってQueenは最も馴染み深い海外ロックバンドのひとつなのではないでしょうか。
バンド紹介に先駆けてまずは、4オクターブにも及ぶと言われている圧倒的な声域から繰り出される異次元の歌唱力と男性としての魅力に溢れるビジュアルから、Queenの世界進出に多大な貢献をなさった故Freddie Mercuryに、改めて哀悼の意の表します。
先述の通り、Queenはデビュー当初の時点では意外にも、母国イギリスで絶対的人気を得ていた訳ではなかったというのは有名な話です。彼らも他のバンドと同じように市場での商業的成功に向けて努力を重ね、苦労の日々を過ごしていたようです。今となっては崇拝の対象として神格化されるほどのバンドですから、信じられませんよね。
Queenが世界的に成功を収めるきっかけとなったのは、我らが日本武道館で1975年に行われたコンサートでした。当時の日本は空前の洋楽バンドブームだったということもあり、Queenの来日に沸いた日本人の熱狂っぷりは凄まじいものだったと音に聞きます。また、Queenのメンバー4名の奇抜で野性味のある魅力的なビジュアルと洗練された音楽性も相まって、メディアによる猛烈なプッシュに呼応するように女性を中心とする大勢の熱狂的ファンを獲得しました。
特筆すべきは、彼らの音楽への拘りです。アーティストたるもの、音楽性に拘りを持つのは当然だと思われるかもしれませんが、Queenは凄いです……。まず、メンバーであるFreddie Mercury, Brian May, Roger Taylor, John Deaconはそれぞれ担当する楽器とは別に、全員がギターとキーボードを演奏できたと言います。これだけでも既に常人の理解の範疇を越えているような気がしますが、そんな彼らは楽曲の多くで、エレクトリック・ギターを多重録音することによる「ギター・オーケストレーション」という奏法を駆使しています。代わりにシンセサイザーを用いることなく、ギターに拘って演奏することによって、奥深く重厚感のあるサウンドを作り上げているんですね。
そんな彼らの音楽性が人々の注目を集めるのは、言わば時間の問題でもあったかと思います。日本国内ではQueenの手掛けた楽曲と様々なタイアップが実現し、TVCMや挿入歌など、Queenの曲を聞かない日はない、というくらいの持て囃されっぷりでした。日本で揺るぎない名声を確立したQueenの存在は既に本国イギリスでも注目の的でしたが、逆輸入のような形でその人気を確固たるものにしたというのが世界的大ブレイクの発端だと、僕は聞いております。以上のことに起因して、Queenは親日家になったことでも有名ですが、それを象徴するエピソードがあります。
日本でのツアーを終えたQueenは、日本ファンへの感謝を表明する一環として、1976年に発売されたアルバム『A Day At The Races』の10曲目に収録された『Teo Torriatte』で、サビの部分を日本語で作詞して歌い上げるという粋な計らいを見せてくれました。こちらも、もし知らない方がいれば一度は聞いてみて欲しいです。普通にサビだけ聞けば「日本人が歌っています」と言われても気が付かないくらいに、流暢で心のこもった歌声ですよ。
Queenは東京での公演のみならず、日本各所に赴いてファンとの親睦を深めていました。Queenの誠実で謙虚な姿勢と小粋な振る舞い、そして我々聞き手との親密な距離感が彼らの成功の裏には隠されていたのではないかと、僕はそう思います。Queen愛が暴走して曲の歌詞紹介というよりバンド紹介のようになってしまっていますが、ここから本題に入りますね……!
おいおい、というか何故『We Will Rock You』や『We Are The Champions』といったQueenを代表する伝説的楽曲や彼らの伝記映画の主題にもなった人気曲『Bohemian Rhapsody』ではないんだと、そう思われたそこの貴方──だからこそ、なんですよ。誰もが歌詞を知っているような楽曲よりも「曲自体は知っているけど、歌詞までは知らないかも」といった微妙なラインの選曲によって、洋楽の奥深さをもっと皆さんと共有したいという執筆者の思惑があります。平たく言えば、僕の趣味嗜好に基づく選曲です(笑)。
とはいえ、これから紹介する『Sheer Heart Attack』もQueenの魅力がこれでもかと詰まった名曲であり、知っている人はかなり多いかもしれません。知っている人は是非『Sheer Heart Attack』を僕と一緒にループ再生しながら、この先を読み進めていただけるとより楽しめるかもしれません。ちなみに、放り投げたままにしていた冒頭の小ネタは、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に登場する殺人鬼が使用している特殊能力・Sheer Heart Attackの台詞です。日本の漫画の元ネタにもなっているQueenは、流石といったところでしょうか(とはいえ、ジョジョは色々な洋楽の題やバンド名を登場人物や能力の名称に流用することで知られていますが)。
『Sheer Heart Attack』は、1974年にリリースされた3枚目のアルバム名ともなっているので少々ややこしいですが、今回紹介するのは1977年にリリースされた6枚目のアルバム『News Of The World』の3曲目です。当然、曲名を冠したアルバムとして『Sheer Heart Attack』は1974年のアルバムに収録される予定でしたが、楽曲の完成が間に合わず、遅れて発表される形となりました。そんな『Sheer Heart Attack』ですが、グダグダしすぎてしまったので歌詞はサビまで一挙に紹介します。各自お手元に歌詞原文をご用意ください。
軽快でありながら重厚感のあるアップテンポなギターが奏でるメロディに、縦ノリが止まりません。でも、カラオケでこれを歌おうとしたら、とてもじゃないけど歌い切れる気がしません。ましてや高得点など絶対に期待できないので、恥ずかしさが勝って歌ったことはありません。まだ『Don't stop me now』とかの方が歌いやすいですね。
余談はさておき、意味は以下の通りです。
「お前はたったの17歳、消えてしまいたいとばかり考えているな」
「分かるだろ、お前の耳と耳の間には大きな隙間がある」
「そんな風に触ってみたところで、何も感じやしないさ」
「よお、それはDNAなんだよ」
「よお、それが俺をこんな風にした」
「分かるか、俺がどんな風に感じているか?」
「完全な心臓発作だ」
「本物の心臓病だ」
「苦しみで言葉も出ねえよ」
──僕は今、自分に1つ問いたいことがあります。
洋楽の歌詞を切り口に、海外の楽曲の面白さや奥深さを皆さんと共有したいと思って始めた短編集なのに、何故いつも難解で理解不能ッ!(重ちー並感)な歌詞を取り上げるんだよと。でもね、わざとじゃないんです。好きな音楽を沢山の人に知ってもらいたいと思って「これだ!」と選んだ曲が毎回たまたまこのような歌詞なんですよ。
──それでも、僕は理解を諦めませんよ……! 何せ今回は、登場人物の個人情報が明言されていますから。そうです、年齢です。17歳と言えば多感な時期です。消えてしまいたいと塞ぎ込むようなこともあったことでしょう。僕にもそんな時期がありました。何なら今でも時々あります……。
耳と耳の間とは、所謂脳のことを示唆しているのでしょうか。外側から触ろうとしても、さながらDIOのように脳をぐちゃぐちゃと搔き回してみない限りは、絶命することはできません。だから消えてしまいたいなんて考えずに、努力ではどうしようもないDNAという先天的要素のせいにして心臓発作を起こすくらいに音楽で「ハイになっちまえば良いさ!」みたいな明るい意味が込められてたらいいなと思います。
2番の冒頭は次のような感じです。
「感情の波が押し寄せる、まるで麻痺したかのように」
「驚くべきことではないな」
「テレビをつけて目薬みたいに差しておけ」
歌詞はこの後サビに向かって既出のフレーズを繰り返すため省略します。いやぁ、相も変わらず複雑怪奇な内容に困惑しておりますが、驚くべきことではないな……!
言い訳をさせていただきたいのですが、1970年代に一世を風靡した楽曲の歌詞を、Z世代に片足突っ込んだような僕如きが当時の時代背景も加味しながら正確に読み取ろうなどと、
なんだか歌詞の紹介よりもバンドの略歴紹介がメインとなってきてしまっているので、この辺で軌道修正して次こそはまともなエッセイを書き上げたいと思う反面、これはこれで僕自身が楽しいなぁと思う気持ちもあるのですが、数少ない読者の皆さんは如何でしょうか。何かご意見ご要望がありましたら、コメント頂ければほぼ確実に、作品に反映させていただきます。
今回はジョジョネタ全開で分からない人にとっては鬱陶しく感じられる面もあったかもしれませんが、これっきりにしますのでどうかご容赦ください。それでは次回は、次世代のUKポップを担う新進気鋭のインディーズバンドから1曲紹介しようかな……?
†††
※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はQueen - Sheer Heart Attackから引用しております。
※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。
※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。
※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。
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