Blur - Song 2
それでは、続きまして紹介していきたいのは、90年代イギリスのロックシーンを代表するOasisと
曲名を見て「おいおい、適当だなぁ」と思ったそこの貴方──そうなんです。適当なんですよ。『Song 2』という曲名の由来は、バンド名を冠したセルフタイトルの5thアルバム『Blur』の2番目に収録されたからだとか、曲の長さが2分だからとか、諸説あります。まあ、いずれにせよ、恐らくは適当です。なぜなら、何を隠そう『Song 2』は、元々仮題だったと言うのですから。歌詞も短期間で練り上げられた特に意味のないもので、それを知った後だと、音響、MV、その他諸々が全て雑に見えてきます(笑)。
──しかしながら、世間の流行とは分からないもので……。『Song 2』は謂わば、適当だからこそウケたんですね。
時代の変遷によってブリットポップ・ブームの終焉も近づいた際に、多くのロックバンドが音楽性の方向転換に苦しみ喘いでいた頃、アメリカでのマーケティングを意識していたBlurは、Oasisに代表される他のバンドとは一線を画し、伝統的なブリットポップを捨て去る決断をしました。結果、全英1位を獲得した『Blur』の収録曲の中でも『Song 2』は絶大な人気を博し、現在に至るまでBlurの代表作として名声を轟かせています。
そんなBlurですが、前回ご紹介したOasisとは対立関係にあります。理由は様々ですが、例えば出身社会階級による選民思想が未だ色濃く残っている階級社会であるイギリスにおいて、Oasisは労働者階級、Blurは中流階級出身という対立軸があり、彼らを取り巻くメディアやファンはこれを格好のネタとして、
同時期に誕生したUKロックを代表する二大巨頭ということもあり、ファン同士をも巻き込んだ対立は激化しました。同じロックバンドとはいえ、音楽性の面でも「機知と皮肉に溢れた歌詞に、捻くれたポップサウンド」が特徴のBlurと「荒々しくも壮大なメロディー」を奏でるOasisは、それぞれ独創的で強烈な個性を持っていたため、世間からしても両者をライバル関係に仕立てるのは自然な流れだったように思います。──とはいえ、僕は90年代にはまだ生まれてなかったので、詳細は分かりかねます……。
実際に、OasisのGallagher兄弟はBlurに対して敵対意識を抱いていたようで、インタビューで悪口や批判を公言したり、BlurのメンバーであるDamon AlbarnやGraham Coxonの行きつけの店に殴り込んだりなど、やりたい放題っぷりは常軌を逸してました(悪口の内容は公に口に出すことは憚られるような酷いものも含まれるので、気になる方は自己責任でお調べください)。同日にシングル曲が発表されれば、本国イギリスでは"Battle of Britpop"と称され、どちらが全英1位を掻っ攫うのかで話題が持ち切りになるなど、メディアやファンもそんな彼らの激しい確執をひとつのエンターテインメントとして楽しんでいたようです。
話がかなり脇道に逸れてしまい恐縮ですが、漸く歌詞の紹介に入ります。歌詞原文を各自ご参照ください。
「え、この曲知ってるんだけど!」って方、きっと居ますよね? そうなんです。『Song 2』はGYAO!のCMソングに採用されたこともあるなど、音楽に疎い日本人でも一度は聞く機会があったかと思います。イントロやサビで出てくる"Woo-hoo!"って叫び声が何ともクセになるというか、思わず
「思考停止だ」
「ジャンボジェットでね」
「楽なもんじゃない」
「でもなんてことはない」
「ヘビーメタルを感じると」
「手足がぴりぴり痺れてくる」
「横たわって安静にしていよう」
「いつだって分からない」
「お前を求める理由は」
「お前を気に入ったよ」
──分かりますよ、読者の皆さんの言いたいことが。
Q. 「ジャンボジェット」ってなんですか?
A. すみません、よく分かりません。
でも、もしかしたら、ジャンボジェットは薬物の比喩かもしれませんね。その後の歌詞の意味を勘繰ると、そうとしか思えなくなってきました。遥か彼方の天国に向かって飛ぶことができるドラッグをジャンボジェットに例えたというのは、発想が飛躍しすぎでしょうか。ていうか、もしそうだったのなら、二作連続でドラッグ関係の楽曲を紹介していることになりますね。僕はただ単純にOasisを紹介したなら、Blurの話題は避けて通れないだろうと考えただけですから……!
続いて、2番です。
「隠れてたんだ」
「若い頃はな」
「もうどうでもいいけどさ」
昔は隠れてこそこそしていたことを、今は恥も外聞もなく自分本位にやるようになったということでしょうか。実はここの翻訳が一番苦労しまして、自信が持てません。海外の歌詞サイトやSpotifyの歌詞表示機能を使っても、2番が始まって最初のフレーズの"down"を"done"としている場合もあって、正しい歌詞すらまともに分かっていないというのが難儀でした。どなたか正解を知っている方は、お教え頂ければ嬉しいです。歌詞は以下同じフレーズの繰り返しなので、省略します。
第2作目もお付き合いくださり、ありがとうございました。中々如何して、英語の和訳というのは難しいものですね。次はもうちょっと単純明快な取っつきやすい歌詞の楽曲をチョイスしようかなと、少し反省しました。
余談ですが、冒頭紹介したOasisのフロントマンであるGallagher兄弟とBlurのDamonとの間にあったわだかまりですが、今となっては両者共に互いの音楽性や稀有な才能を称賛し合う仲になったということです。しかも、和解のきっかけは、ある日の晩にたまたま出掛けていたNoelが15年間一切会話していなかったというDamonとクラブで鉢合わせ、ビールを1杯引っ掛けたことに始まるそうです。その後、2人はDamonが独自に手掛けている音楽プロジェクトであるGorillazにて共作を披露するなど、仲睦まじい様子です。犬猿の仲として世間からも囃し立てられ、お互いに忌み嫌っていたはずのアーティストたちがひょんなことから再開して仲直り──人生、何があるか分からないものですね。
それでは、次回は日本で絶大な人気を誇った結果、本国イギリスに逆輸入される形で一躍有名となったロックバンドから取り上げてみようかと思います。乞うご期待!
†††
※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はBlur - Song 2から引用しております。
※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。
※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。
※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。
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