* * *

 ――回目。

 あれから、どれほどの世界線を繰り返しただろうか。

 度重なる検証・実験の結果判明したことは、どうやらこのタイムリープを回避する方法は、


 --誰かとのキスではなく、緑ヶ丘続とのキス

 

 が必要だという事。

 そして、それを一日たりとも欠かしてはならないという事だった。

 それだけでも冗談にして欲しいところなのに、どの世界線にも彼にとって大切な人――宿連寺凪という少女が傍にいるのだった。

 まるで運命の二人だった。

 勝てるはずがない。

 どれほどの世界線を超えても尚、強く結ばれている二人に割って入る事など、出来るはずがない。

 そんな諦めて落ち込んだ日々も、たしかにあった。



 しかし――。

 とある世界線で私は気がついたのだ。


 彼の心が揺らいでいる――という事に。


 まさか、と思った。

 キスを繰り返して関係を構築し、日々を重ねていく中で、彼が少しずつ私に惹かれ始めていたのだった。


 本当に、この世界線を生きていく事ができるかもしれない――そんな風に思った。

 けれど、彼と私が結ばれるという事は、彼と凪の未来を奪うことと同義でもある。

 私は、繰り返す日々の中で、彼に対する恋心と同様、凪に対しても大切な感情を抱くようになっていた。

 だから、二人のどちらかが悲しむ未来は、見たくない。

 三人での日常は、余りにも居心地が良かったから――。


 しかし、私が明日を迎えるためには、彼と結ばれる以外に道はない。

 堂々巡り。

 正解のない問題を、目的地の曖昧な旅を、私は続けることになる。

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