determined future

月簡

determined future

 隊長となった俺――田楽 たらくが手記を見つけたのは5月に door周辺を見回りしていた時だった。


 少し汚れているが新しく、上手く製本されていた。


 本の表紙には『未来 future』と書いてありその下には著者の名前だろうか『ミネ』と書いてある。


 読んでみようか……。そんな考えが頭をよぎった。




 家に持ち帰り本を開いた。だが最初のページ、文庫本ならばタイトルと著者が書いてあるページに驚くべきことが書いてあったのだ。




 この本はあの扉が出現した経緯とお詫び、そして……私の日記だ。


 これを読んでいる人はきっとolfの隊長だろう。doorを閉じたのは偉業だ。こちらとしても感謝を伝える。




と書いてあったのだ。


 俺はすぐさま読むことにした。




 


――4月15日


 まずは簡単な自己紹介からいこうか。


 私はミネと言う。バイオテクノロジー研究家だ。そもそもこの本が書かれているのは2073年だ。


 この本は過去に向けて書かれている。




 事の発端は昨日、私が国に命令されたことからだった。


「異常に発達したバイオ生物をどうにかして欲しい。そして国の信用のために内密に頼む」


と言われたことからだった。


 バイオテクノロジーで作られた動物は法律により殺処分できない。古くからある法律で、なぜ制定されたのかすら分からない。


 なのに殺す必要は無い、という事で無くならないのだ。


 そして私は気づいたのだ。


 過去に謎の生物が東京に出現したという事例、あれはなんだったのか。


 その時に関する書類に記述されていた生物の特長とバイオ生物の特長が一致していたのだ。


 つまり、このバイオ生物達を過去に送ったことになる。


 すぐさま私は転送装置の制作に取り掛かった。




――4月17日


 昨日は忙しかったため書くことが出来なかった。だが進展はあった。


 過去に出現した転送装置はドアのような形をしていたと言う。つまりそれを作ればいいのだ。


 まずは通常の転送装置を作成する。そして歴史改変が起きないよう、転送装置部分をドア部品で隠す。完璧だ。


 私は設計図を専門家に送り付け、眠りについた。




――4月19日


 問題に気がついた。


 いくらあの時代の最先端技術と言えどそのままのバイオ生物には勝つことは出来ないのだ。


 私は弱体化薬品の制作に取り掛からなければならなった。


 ドアが閉じられるというのは記録で分かっていた。だから閉じられる日時までに全てのバイオ生物を送らなければいけない。




――8月7日


 ついにドアいやdoorの転送が完了した。ここまで何も書けなかったこと、申し訳なく思っている。


 だがこの日記ももう必要は無い。後に過去に送ればいいのだ。そうすればきっと理解を示してくれるだろう。


 これを後世に伝え、しっかりと良い結末にしてもらいたい。






と書かれていた。残りのページは全て空白だ。


 これがdoor騒動の原因であるというのなら、未来で俺たちは過去にバイオ生物を仕向けなければならないということだ。


 そんなことでいいのだろうか。


 だが今はdoorが閉じられているため平和だ。それを維持することこそが、きっと最優先なのだ。

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