光と貧しさの中で

虹のゆきに咲く

第1話 訪ね人

高級クラブにて


怜奈れなさんはどういった男性が好みですか?」


「そうですね、お金を持っている方です。」


「そうですか、僕は貿易会社の社長ですから、お金には不自由していませんよ。」

「今度、僕と同伴しませんか?」


「是非、お願いします!」


私は高級クラブで働くキャスト、これでも売り上げナンバー1なの、

やはり、男はお金かな?

でも、私の周りはお金持ちの人だらけで選びようがないわ。

それに、私の体目当てだけのような気がするし、気になる人いないかな。




ペットショップにて


「里美さん、動物の餌はもう一人で与えられるかな?」


「はい、大丈夫です。」


「そうか、まだ、新人さんだけど頑張っているね。」

「餌をやったら、もう帰っていいよ。」


「まだ、勤務時間ですが・・・」


「ああ、うちは小さなペットショップで暇なんだ。」


「わかりました、ありがとうございます。」


私は動物が好き、だから小さいけどペットショップで働くことにしたの。

給料はとても安くて、生活は苦しいけど、楽しくてやりがいがあります。

それに、私を支えてくれる健作さんがいるし、今は幸せかな。


帰宅時


「あれ、健作さん、どうしたの?」

「ギターを路上で弾いて。」


「ああ、アパートの近所からギターの音がうるさいって苦情があって・・・」

「路上で練習しているところさ。」


僕はこれでも、ギタリストを目指している。

練習のため、アルバイト生活で生活が苦しいけど、夢があって今は楽しい。


「そういえば健作さん、今日は給料日だったのでこれでギターのケースを買ってください。」

「私の友達で麗奈れなが山村楽器店の従業員で、頼んでおいたから。」

「麗奈を訪ねていって。」

「話は通してあるから。」


「いや、それは悪いよ。」


「いえ、健作さんのよろこぶ顔がみたいから。」


「里美さんも生活が大変なのに・・・」


「いいの、健作さんのためなら。」


「じゃあ、言葉に甘えるよ。」


「はい。」



高級クラブの控室にて


「怜奈さん、明日も同伴ですか?」


「そうよ。」


「怜奈さん、人気があるからうらやましいな。」


「大丈夫よ、聡美さとみも可愛いからすぐ人気がでるわよ。」


「そういえば、近くにフランス料理店でKEASUケースという店ができて評判なの。」


「じゃあ、お相手さんにお願いしてみようかしら。」



翌日


「ここかな、山村楽器は、あれ、今日は定休日かな、閉まっているぞ。」


「ああ、お客さんですか?」

「只今、改装工事をしていまして、もうすぐしましたら、オープンしますので。」


「わかりました。」



翌日、同伴客からの電話があった。



「怜奈さんですか、リクエストのKEASUに行きましょう、」

近くに山村楽器店という大きな楽器店がありますから、そこで待ち合わせしましょう。」

「そういえば、今日は私の部下がお世話になります。」

「なんでも、怜奈さんの事を話したら是非会ってみたいということで、初対面ですけど、

一度、同伴してもらえませんか?」


「わかりました、社長のお願いなら、なんでも大丈夫ですよ。」

「でも、社長と行きたかったな・・・」


「私とは今度行きましょう。」



怜奈と健作は山村楽器店へそれぞれ向かった。



「ここかな?山村楽器店は?」

「あ、あの人かな?」

「部下の人は?」


「あ、あの人が麗奈れなさんかな?」


「KEASU《ケース》の方でしょうか?」

「初めまして、怜奈れなといいます、よろしくお願いします。


「あ、こちらこそ、ケースの件で里美から聞いていた麗奈れなさんですね?」


「そうです。」

聡美さとみからも聞いていました。」

「よろしくお願いします!」


「こちらこそ。」

「さっそくケースをお願いします。」


「じゃあ、KEASUに行きましょう。」


「あ、改装中だからですね?」


「え、どういうことでしょうか?」」

「KEASUじゃないのですか?」


「そうです、ケースです。」


「じゃあ、行きましょう。」

「9時までに入店していただければ大丈夫なので。」


「え・・・」

「ギターのケースですよ?」


「ギターの生演奏があるのですね、素敵!」

「行きましょう、行きましょう。」


「はい・・・?」


「そういえば、お名前を聞いていませんでした。」

「失礼ですけど・・・」


「僕は健作といいます。」


「健作さんはラフな格好ですけどイケメンですね。」


「そんなことないですよ。」


「KEASUに着きましたね?」


「え・・・?」

「どういうことでしょうか?」


「この店じゃないのですか?」

「まあ、行きましょう、さあ、さあ」


「はい。」



「いらっしゃいませ。」



「健作さん、私はこのコースがいいですけど・・・」

「健作さんは何にしますか?」


「僕はコーヒーでいいです。」


「まあ、冗談が上手いのですね。」

「じゃあ、私と同じコースにしましょう。」

「今日のシェフのオススメコース、これ美味しそうですね。」


「あ、はい・・・」


どうしよう、彼女、勘違いしているぞ、話が通っていないのかな??

お金も持っていないしな。

どうするかな・・・


よかった、イケメンの人でいつもおじさん連中ばかりだから、

それにラフなところが好印象ね


そして、ぎこちない会話も終わり会計へ


「健作さん、ありがとうございます。」


「僕、お金ないのです・・・」


「まあ、貧乏のふりをして、私を試そうとしているのね。」

「いいですよ、初めてですけど私が支払います。」


「ごめんなさい。」


きっと、この方お金持ちよ、多分、貧乏のふりをして私を試そうとしているのだわ。

今日はラッキー


「ところで、ケースを買いたいのですが?」


「え、もしかして、この店を買収するのですか?」


「いえ、ギターのケースですよ・・・」


「もしかして、社長さんの部下の方ではないのですか?」


「社長って店長のことですか?」


「もう、いい加減からかわないでください。」


「申し訳ありません、今度、ここのお金は、いつか返しますから帰ります。」


「あ、待って。」


なんだ、今の子は訳がわからないな。

里美と話がうまくいっていないのかな、今日は気まずいから帰ろう。



高級クラブにて


「怜奈さん、困るよ、同伴をドタキャンして。」

「社長もカンカンに怒っていたぞ。」

「謝罪の電話をいれたまえ。」


「はい・・・」


いったい、どうなっているの?・・・

でも、素敵な人だったな

また、会えるといいな。

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光と貧しさの中で 虹のゆきに咲く @kakukamisamaniinori

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