バフデバフ係のナナちゃんは77倍の効果が出せます! 〜勇者パーティー追放されてSランクパーティーに入ったら、もしかして知らない間にざまぁしちゃってた?〜

アキラ

バフデバフ係のナナちゃんは77倍の効果が出せます! 〜勇者パーティー追放されてSランクパーティーに入ったら、もしかして知らない間にざまぁしちゃってた?〜

 私の名前はナナ。


 私は勇者パーティーのバフデバフ係だ。

バフデバフ係は敵が現れたら勇者や剣士にバフを掛ける。

その反対に敵にはデバフを掛ける。


 雑用も沢山させられた。

依頼を取ってくるのも私だし依頼の細かい契約やらの事も作業も全部私の仕事。



 二つの仕事を担っている私だが、ついさっき勇者たちにパーティー追放された。

お前は要らない、と。


 この私が居ないとあのパーティーは安定しないのに。


 どうしようか。

これから生活するにはやはりギルドに頼って仕事をするのだが正直バフデバフ係の私に単体で何か出来る事はあるのか……。


 そうだ、私が前のパーティーから追い出されたならばもう他のパーティーに入る事は出来る筈だ。


 どこかバフデバフ係を必要としているパーティーが無いかなぁ?

ギルドに行ったら募集してるか分かるかな。


 家からギルドなんてすぐそこだ。

善は急げ! ギルドに向かおう。



 カランコロ〜ン

 気持ちの良いベルの音が響いた。


 ここは冒険者ギルド。

掲示板には色んな情報がペタペタと貼ってある。


 この中からバフデバフ係の募集が見つかれば……。

ん? 掲示板の隅から隅まで目を通したけど見つからな……い?


 お。あった、あったわよ。

しかもSランクパーティー!?

勇者パーティーに居た私なら確実に入れるよね。


 Sランクパーティーなら希望者が山程居るんだよね。

直ぐにでも受付嬢さんにお伝えして希望しないと。


 「受付嬢さん。あのSランクパーティーのバフデバフ係の要請、私、希望していいですか?」

勢い良く受付嬢さんに話しかける。


 「S、Sランクですか? 貴方が? ほ、本当に?」

私はうんうんと頷く。

受付嬢さんはあんぐりと口を開けて唖然としている。


 「りょ、了解です……。明日にでも結果は発表されるので、楽しみにしておいて下さい。まぁ貴方なのは決まりだと思って良いですけどね……。希望者が居ないのでぇ……」

受付嬢さんは少し恐る恐ると言う様に喋ってるみたい。


 「ギルドカードの提示をお願いします……」

受付嬢さんの指示に従って私はポケットからギルドカードを出して受付嬢さんに渡す。


 「え、え? 元勇者パーティーメンバー?」

ギルドカードを持つ手はブルブルと震えている。

そんなに驚くことかな?


 「じゃあ今日は帰るので明日もお願いしますねー」

私は色々準備があるから帰らないと。

準備と言っても何をするんだ? とドアノブに手を掛けた時に思った。


 「あ、ありがとうございましたぁ……」

少しだけペコリと頭を下げて受付嬢さんはカウンターから離れてせかせかと裏の方へと戻る。

どうしたんだろう? 忙しいのかしら?


 それから家に帰ってもする事なんてパーティー追放されちゃったからすることなんて無いで暇にして終わってしまった。



 よし、今日はSランクパーティーに入れるかが決まる日だ。


 早速ギルドに向かわないと。

すぐそこなのって便利だなぁ。


 カランコロ〜ン

勢い良くドアを開ける。


 中は昨日よりは人が少ない。

朝だもんね。


 私はカウンターの受付嬢さんに話しかける。


 「受付嬢さんおはようございます〜! あのう、昨日、Sランクパーティーへの加入をお願いしたんですけど……どうなりましたか?」

私の話を聞くと受付嬢さんは何やら書類を取り出した。


 「希望者が貴方しか居ないで昨日の時点で貴方になった事、決まってましたよ……ナナさん、ですよね」

受付嬢さんは書類を私に渡してくれた。


 「希望した人、私しか居なかったんですね。何でですか〜?」

私は書類に名前を記入しながら受付嬢さんに聞く。


 「えっとですね……。そのパーティー、すごい厳しいそうで……皆怖がってるんですよ……」

受付嬢さんは苦笑いで言う。


 皆怖がってるんだぁ……。

私、どうやらヤバいパーティーに入っちゃったんじゃぁ……。

いや、絶対勇者パーティーよりは楽しく過ごしてやるんだから!


 「バフデバフ担当になられるんですよね? 頑張って下さい……。そのパーティーの前バフデバフさんが辞められた理由、かなり高レベルの技を求められるからっていう事らしいので……」


 受付嬢さんの言葉に私のペンを握る手がふるふると震える。


 「そ、そうなんですかァ? ま、まぁ優しくして貰えれば良いです……」


 「そうですね……。命の限り頑張って下さい……」


 命の限り……。

まるで死んだ人が居るみたいじゃない。


 「じゃあそのパーティーの人達と会いたいんですけど……」

私が言うと受付嬢さんはカウンターから離れている座席を指差す。


 「あの席がどうしたんですかっって……」

受付嬢さんが指差していたのは多分、Sランクパーティーの人?


 「あの方々がSランクパーティーの皆さんです……」

恐る恐ると言わんばかり。

この人ホントに怖がりだなぁ。

実際あの人達が放ってるオーラもすごいんだなぁ。

 

 「ありがとうございました。私、今から話してきますね。一応同じパーティーなんですよね」

ありがとうございました。ですよ。

今から私はあの人と同じパーティーだから。


 「が、頑張って下さいね……」

ゆっくりと喋る受付嬢さん。


 私はその言葉に押されえてとぼとぼと座席まで歩き出す。


 「あのう、皆さんSランクパーティーの方ですよね……?」

自信がまだ無い喋り方なのかもしれない。


 「あぁ、そうだ。貴様がバフデバフ使いのナナと言う奴か?」

見るからにリーダーだと思える人がこちらを向いて話す。

前の勇者さんと同じ様な雰囲気の男性で普通な感じ。


 「ふぅん。貴方が噂のぉ?」

こちらは回復役といった所だろうか。

小柄な女性で髪は低めのサイドテール。


 「そうです〜! 私が希望者のナナです!」

私は顔を頑張って作って挨拶する。

第一印象、元気な人になれたのかな。


 「バフデバフですよね、私の役割!」

うんうんと合計五人位の人が頷く。

何だ、明るい人達じゃないの。

仲良く出来そう。


 五人パーティーに私が加わって六人パーティーに成るんだ。


 「バフデバフ、どの程度出来るものかこれからダンジョンにでも言ってみてはどうかな?」

ダンジョンかぁ。急過ぎる。

だけど印象的には今断るのは宜しく無い。


 「是非、一緒に行きます!」

ノリが良い人になろう。


 「ほんとに急だけど大丈夫なのぉ?」

回復役の人、ちょっと苦手かもぉ。


 「勿論! 今すぐにでも行けますよ!」

急いで行かないと日が暮れちゃう。


 「なら早速行こうか」

今度はスマートな人が話しかけて来た。

あんま戦わ無さそう。


 「はい!」



 ダンジョンに来たぁ!

ここ、最上級のダンジョンだぁ。

今まで最上級なんてチャレンジした事無いなぁ。

いつもの五個上だ。

そっか、Sだもんね。

つまり私のチャレンジしたとこはDランクって事になるのか。

随分と弱い勇者だったんだね。


 「敵が現れるのは直ぐだから気をつけてよ! 新人さん!」

魔法使いの女性だ。

新人さんって私の事か。

確かにこの人達からしたら新人だぁ。


 「分かりました! 気を付けます!」

私は辺りを警戒する。


 「来るぞ!」

暫く進んだ時にリーダーさんが言った。


 どこ!?

辺りを見渡すと真ん前にオーガらしき物が来ていた。

オーガなんて教本でしか見た事無い。


 「バフデバフお願い!」

回復さんの合図に合わせて私はバフデバフを掛ける。


 「バフ! デバフ!」

よし。いつも通り掛けられた。


 「行くぞ! って……!? これは……」

剣士は剣を振りながら驚いた様だ。

何かに。


 「こ、このバフデバフっ!? すごい!!」

魔法使いの女性も。


 皆何に驚いてるの?

「き、君のバフデバフ、一体何倍何だ!!」

私のバフデバフが何倍か?


 「えっと、ナナだから77倍です!」

ナナだもん。


 「そ、そうだろうな。いつもの何十倍も戦いやすい!」

そうかなぁ?

私、いつもは何も言われないんだけどなぁ。


 「そうですか? 普通だと思うんですけど〜?」

でも私、バフデバフ係だから戦わなくていいんだよね。

楽。正直に言って。


 「良し、殺ったぞ!」

剣士の一振りで終わってしまった。


 「早いですね!」

私は剣士の方に拍手をしながら寄って行く。


 「77倍、凄いな。いつもこんなに出せるのか」

「勿論です!」

私は胸を張って言った。


 だけどそんなに驚くことかなぁ?


 「次もバンバン行くぞ!」

と、剣士や魔法使いがどんどん前に出て行ってくれたお陰でダンジョンは一時間も掛かる事無く、クリアできたのだった。


 「いや〜、ホントにナナちゃんのバフデバフ、77倍なのね! すごいわぁ〜」

魔法使いさんは大満足の様だ。


 「いつもより効率が良かったぞ!」

剣士さんも剣を振り足りないみたいだ。


 「ナナちゃんのお陰で私の回復魔法なんて一回も登場しなかったわねぇ?」

回復さんは少し皮肉を言いながらも笑っている。


 「皆さんの力に慣れて私、嬉しいです!」

私はえへへと自慢げに鼻を擦る。


 「これからも宜しくな! ナナ!!」

と、私はSランクパーティーの皆に大歓迎されてめでたしめでたしとお金も沢山入って幸せに成る事が出来たのだ。


 

 「そろそろ日が暮れる、帰ろうか」

「そうね。また明日からもSランクパーティらしく頑張りましょ!」

エイエイオー! と、皆で手を合わせて士気を高めた。


 すると急に声が聞こえてきた。

 「きゃああ! 向こう行け! 何でゴブリンがこんなにぃ〜!!」

女性の悲鳴だ。


 「どうしたんだ? ゴブリンに追われているのか? だがここ、もうダンジョンから離れているが……」

剣士さんは意味不明。と首を傾げる。


 「ホントね。それにゴブリン如きに追われているなんて。それに他にも数人居るし。一応アレでもパーティーのつもりなのかしら?」

回復さん、流石に言い過ぎ……。


 だけどあれ、誰だろう?

ん? もしかして前の勇者パーティーの人達?


 「どうしてバフデバフの奴を追い出したんだ! 誰がそんな事言い出したんだよ!」


 「こんなことに成るなんて思ってなかったのよぉ!!」


 口論してるし……。

この人達、やっぱり私が居ないとパーティーとして成立しないんだわ。


 もしかして、知らない間にざまぁしちゃってた?


 「あんなの置いてさっさと行っちゃいましょ。今日はナナちゃんの加入記念パーティーよ〜!」

タフな魔法使いさんだなぁ。


 「そうですね! 速くギルドに向かいましょう!」


 「誰か助けて〜!!」と後ろから聞こえた気がしなくも無いけど気の所為だよね?

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