お喋りハムスター・イチ君はキザ KAC20237

ながくらさゆき

お喋りハムスター・イチ君はキザ

ミナちゃんは一人暮らし。

ぬいぐるみのお喋りハムスター・イチ君を買った。話し相手がほしかったのだ。

お喋りハムスターは7種類あってそれぞれ色や性格が違う。ミナちゃんは白いイチ君を選んだ。

手の平に白い毛並みがフワフワのイチ君を乗せた。

「ハァイ、ボクはイチ君。君の名は何だい? ボクだけに聞こえるように、そっとささやいてくれないか」

「は、はぁい……。ミナです」

「ミナちゃんかぁ。素敵な名前だね。ボクを選んでくれるなんて、ミナちゃんは良い目をしてるね。君に出会えてすごく嬉しいよ」

「あ、うん。ありがと……」

「フッ、照れているのかい? ミナちゃんは可愛らしいね」

イチ君はおでこの毛を小さな手でととのえながら

「ミナちゃん。今日はどんな1日だったかい? ボクの頭をなでながら教えてくれないか」と話しかける。

「だるかった。気圧のせいかな」

「フッ。もしかしてミナちゃんは、ボクに恋してるんじゃないのかい? だからちょっと調子が悪かったんだよ。仕方ないよね、ボクはこんなに白くてきれいな毛並みで美しいからね」せかせか毛づくろいをしながら話すイチ君。

「アハハ……。じゃあ、おやすみ」

「おやすみ、ミナちゃん。夢でまたボクと会おうね。待ってるよ」と言ってイチ君はミナちゃんの親指に、ちゅっとキスをした。


ミナちゃんは何て返事したらいいのか分からなかった。そっとイチ君のおしりのしっぽの下の電源を切った。



半年後

ミナちゃんが掃除をしていたら、ホコリをかぶったハムスターのぬいぐるみを見つけた。

「あっ、こんなところにいたんだ」

ミナちゃんは元は真っ白だったはずのぬいぐるみのホコリをゴミ取りローラーで取った。

薄汚れていたが、ホコリが取れてきれいな白に戻った。「まだ動くかな」おしりのしっぽの下にある電源を入れた。

「ヒッ、ひどいじゃないか。このボクを半年もほっとくなんて」

「ごめんね、カクヨムのKACのお題忙しかったんだ」

「フッ、君はそういういいわけをするんだね」

「ごめんごめん」

「フッ、本当は違う理由があるんだろう?」

「えっ」

「その、君の枕元にいるのは誰なんだい」

「ああ、あれは」

「ちゃんと説明しておくれ」

ミナちゃんの枕元には、別のお喋りハムスター・ゴウ君がいた。茶色い毛でスヤスヤ寝てる。ミナちゃんは説明する。

「ゴウ君はね『そうなんだ』『大変だったね』『頑張ったね』くらいしか言わないから、楽なの」

「そんな……ボクは喋り過ぎだっていうのかい……」

「うん」

ミナちゃんはイチ君の頭をなでてから、しっぽの下の電源を切った。



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