第19話歌保からの手紙

その頃、木村と警察の刑事宛に手紙が届く。

手紙を受け取った、佳子は裏を見て和扇

からの手紙を、慌てて夫の泰造に持って

行く。


「お父さん!和扇先生から、手紙ですよ!」


「うん?和扇先生から?」


急いで封を開ける泰造。


《木村家のみなさんへ

私の和扇と、言う名は嘘です。

霊媒師と言うのも、嘘です。

あんた達に、言った事は全部嘘です。


私の本名は高井歌保です。

あんた達の孫娘が殺した、高井愛奈の母

です。

黒田夫婦を殺したのは、私です。

あんた達も、殺したかったけど、警察が

動くと復讐が出来ないから、和扇に変装

して、あんた達のお金を、全部取り上げて

再起不能にしようとしたんだよ。

まんまと、引っ掛かって、不必要な

プライドの高い、泰造あんたは、本当に

騙し易かったよ。

これからは、謙虚に生きたら?

そして、人殺しの家族として、償いながら

生きろ!

警察に行きたければ、行けば?

じゃあ。

心清らかに、過ごしな。


沢山の、お金ありがとうね。

世の為に、使わせて貰うよ。


和扇》


手紙を読んだ、泰造は怒りで身体が震えて

いた。

佳子は、腰が抜けて動け無い状態だった。


「なんだ!あの和扇は!高井の親だと!」


「お父さん」


「これは詐欺だ!警察に訴えてやる!」


「そうですね!詐欺ですよね!」


「あ~証拠は、この手紙で十分だろう」


そして、金の亡者、泰造は警察に行く用意を

した。

一方、警察にも手紙が届いた。

受け取った、警官は刑事課宛だった為に

その手紙を持って行った。

ノックをする警官。


「はい」


「失礼します、これが届きましたので」


「何だ?手紙か?ありがとう」


「では失礼します」


警官は部屋から、出て行った。

手紙を受け取った、権田は裏を見た。


「高井歌保、充?」


「権田さん、その名前って、あの自殺した子

の両親の名前じゃ、有りませんか?ねぇ?

早川?」


既に資料に、目を通してる早川は


「そうっすね!間違い無いっす!」


「権田さん、早く開けてください!」


「あっ、あ~」


急いで封を開ける権田。

三人は、一緒に手紙を見る。


《刑事課の皆様へ


私は高井歌保です。

覚えてらっしゃいますか?

皆さんが、自殺と決め付けた、高井愛奈の母

です。

皆さんが、この手紙を読む頃には、私も

主人も、もうこの世には居ないでしょう。

愛する愛奈の元に、行っています。

あの事件には、目撃者が居ました。

愛奈の同級生の及川美弥ちゃんです。

愛奈が、あの三人に連れて行かれるのを

見て心配になり、後を着けたそうです。

すると三人は、愛奈を屋上に連れて行き

主犯の黒田涼子が、ナイフを突きつけて

脅して愛奈に、屋上の柵を乗り越えさせた

そうです。

その時に、言った言葉が【ここから飛び降りたら、スカートが広がって、花びらみたいで

キレイだろうな】だったそうです。

怖くなった美弥ちゃんは、先生を呼びに行こうとして、音をたててしまったそうです。

すると、あの三人が、お前も飛ぶか?って

言い出して、愛奈が泣きながら、美弥逃げて

コイツらの言う事なんか聞くな!逃げろ~

美弥って叫んだそうです。

それを聞いた、黒田涼子が誰がコイツらだよ

って言って、愛奈の背中を突き飛ばしたそう

です。

美弥ちゃんは、必死に職員室迄、行って

担任の吉田先生に、その事を言うと、校長

が出て来て、口止めをされたそうです。

一人は市会議員の娘、一人は祖父が県会

議員、もう一人は、その従姉妹、権力者に

逆らえない事が、分かって口止めをしたの

でしょう。

美弥ちゃんは、泣きながら逃げる様に帰って

それ以来、怖くて学校に、行けなくなった

そうです。

私は、その話を聞いて、自分の危険も顧みず

友達を助け様とした、愛奈を誇りに思います。

そして、人の命を花びら一枚に、例えた

あの三人が、どうしても許せませんでした。

その日から、私は【復讐の鬼】になりました。

あの三人を、飛び降りさせたのは私です。

予め、マンションの下見、近隣道路の防犯

カメラ等は、全てチェックしておきました。

そして、三人を言葉巧みに、呼び出して

包丁で脅して、まず矢田美咲、次に木村

真保、最後に黒田涼子、黒田涼子には遺書を

書かせて飛び降りさせました。

三人が死んで、主人に復讐をして何か変わった?と聞かれました。

何も変わらないけど、人を殺しておいて

何も変わらず、笑って暮らして居る事が

どうしても許せませんでした。


そして今度は、隠ぺい工作を図った、三人の

両親、祖父母への復讐でした。

___________________

歌保は、黒田夫婦を殺した方法、木村を

騙した手口を全て、手紙に書いていた。

そして、木村の出馬断念、校長の辞職等も

詳しく書いていた。

____________________

木村から、取り上げたお金、2億2000万と

私達の退職金を、合わせて全国の孤児院に

全額寄付しました。

私達の復讐は、終わりました。

そして、及川美弥ちゃんは、そっとして

おいて上げてください。

もう愛奈は、自殺でも何でも、いいから

今さら立証するのに、美弥ちゃんを

引っ張り出さないでください。

そんな事をしたら、あの木村が何をするか

分かりませんから。

あなた達が、絶対に守れると、今の私は

思ってませんから、そっと、お願いします。

明日、私達は北海道の愛別岳に行きます。

そこで、愛奈の元へ行きます。


あなた達に、自殺では無い、殺されたから

調べて欲しいと、お願いした筈です。

誰も裁かないのなら、自分達で裁こうと

思いました。

自分で動くしか、無かったのです。

夫は、黙って見守ってくれました。

これは、あなた達への挑戦でも、有ったのです。

復讐から、何が生まれるか?と言いますが

言って居る人は、復讐をした事が有るん

でしょうか?

刑事の皆さんは、復讐したい程、人を

憎んだ事は、有りますか?

私には、復讐しか選択肢は、有りません

でした。

それ程、愛奈は私達にとって、大切な

大切な宝だったんです。


それでは、もう二度と会えませんが、今後

こんな事件が、二度と起こらない様に

お願いします。

さようなら。


高井充

高井歌保》


手紙を見た三人は、黙りこんでしまった。

柊の頬には、涙が流れ落ちる。

早川は、必死に声を、押し殺して泣いて

居る。

権田も、やるせない気持ちで、胸が張り

避けそうだった。

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