第17話二人で復讐の仕上げを

翌朝、二人で朝食をとる歌保と充。


「歌保、今日で終わりだな!歌保は本当は

苦しかったんじゃ無いか?歌保は弱い人の

何時も見方だったから」


「そうね、でも愛奈を失った、悲しみ

苦しみ、憎悪の方が強かったわ!」


「そうか!」


「うん!」


「じゃあ、俺はそろそろ行って来るよ!」


「うん、頑張ってね!私も、もう直ぐ

出るから!気を付けてね!」


「あ~歌保も、気を付けてな!」


「うん」


そして充は、木村の家に向かった。


「すみません」


「は~い、どちら様ですか?」


佳子が出て来た。


「私は、高井愛奈の父で、高井充と申します

木村泰造さんに、お会いしたくて」


「どの様な、ご用件ですか?」


「それは、ご主人と話しますので」


「少々、お待ちください」


そして、泰造が姿を現した。

本当に、威張ってふてぶてしい態度に

充は、嫌気がさした。


「急に来て、何の用だね」


「今、ここで話をして、いいんですか?」


充の姿に、嫌な予感がした泰造は、座敷に

充を通した。


「何の話だね?」


「木村さんは又、次の選挙に出る、おつもり

ですか?」


「君には関係無い事だ!」


「いえ!あなたの、孫に殺された娘の父と

しては、知る権利が有ります!」


「人の孫を、人殺し呼ばわりするのか!」


「人殺し呼ばわりでは無く、人殺しです!」


「何処に、そんな証拠が有るんだ!出して

みろ!」


「あのですね、目撃者が居ます!何時でも

警察でも法廷にでも、行って証人として

証言をしてくれるそうです!」


「居るなら、どうして、もっと早くに警察に

でも行かなかったんだ!」


充の目撃者が、居ると言う言葉を、疑う

木村だった。


「それは、私達が止めたんですよ!決して

あなた達の為では、有りませんから!幼い子が、警察、法廷で証言する、その大変さを

思って止めたんですよ!」


「うっ……」


「どうなんですか?出るんですか?出ないん

ですか?」


「一応、出場するつもりだ!」


「じゃあ、それは辞めて貰えますね?」


「どうしてだ!」


まだ、こんな事を言って居るのかと、充は

頭に来ていたが、冷静に話をした。


「人殺しの祖父が、選挙に出て、もし又

議員になったら何をするんですか?全ては

私利私欲の為でしょう?あなた達の様な人の

心の無い人間が、議員になっても何も良く

なりませんから!いいですね!辞めて貰え

ますね?」


「……分かった!」


「もし出馬したら、直ぐに証人に警察に

行って貰いますから!覚悟しておいて

ください!」


「……」


「じゃ、失礼します!あっ、それと人として

遺族には謝罪の、一言位有っても普通ですよ

では」


そう言って、充は木村家を後にした。

充が帰ると、佳子が直ぐに泰造の所に行った。


「お父さん、どうされました?」


「なんだ!あいつは!」


「えっ?」


「あいつは、真保が殺した、高井の父親だ!

選挙に出たら、証人を警察に連れて行くと

脅して来たんだ!」


「まぁ!証人が居たんですか?」


「あ~もう、終わりだ!和扇先生は、あれ

以来、来ないがどうしてだ?」


「さぁ~お忙しいのでは」


「そうかぁ」


肩を落とす泰造。

今迄は県会議員として、多額の報酬を貰い

ながら、威張っていたが、これから先は

莫大な借金だけが、残り身を潜める様に

生きて行くしか、道は無かった。

借金が返せ無ければ、自己破産しか、もう

方法は無かった。

歌保の思惑通りになった。

一方、歌保は学校に行き、校長との面会を

お願いしようと、職員室に入った。

歌保の顔を見た、愛奈の担任吉田は、歌保の

顔を見ると慌てて、椅子から落ちた。


「吉田先生、お久しぶりです、校長に会いたいんですが」


「あっ!はい!はい!今直ぐに」


急いで校長室に行く吉田。

少しして、帰って来ると


「校長は、今忙しいそうで……」


「あっそう!じゃあ、ここでいいわ!この

学校の校長は、生徒は、みんな平等な筈

なのに、一人の子が死に追いやられたのを

知りながら、追いやった子の父親、祖父が

政治家だった為に、隠ぺいを計りました!

私は、この事を…」


歌保が叫んで居ると、校長が諦めて出て来た。


「どうぞ、お入りください」


「はい、吉田先生も一緒に来てください!」


「僕もですか?」


「当たり前でしょ!」


キッと睨む歌保に、吉田は黙って着いて入った。


「校長、隠ぺいしましたね?」


「いや、事実が分からなかったんで…」


大汗をかいて、弁明しようとする校長。


「まだそんな事を?転校した及川美弥さんを

知ってますよね?彼女は目撃者で、直ぐに

職員室の吉田先生に、言いに行ったら校長に

口止めされたと、言ってますが」


「……」


「私は、このまま教育委員会とマスコミに

全て話ますよ?そして警察にも!」


「許してください!議員さんに、歯向かうと

私達は立場が弱いんです」


「だからって、もっと弱い生徒を、見殺しに

して、どうするんですか!」


「私は、どうするば?」


「今日付けで、辞職してください!今、私の

見て居る所で、書いてください!まだ辞職で

済んで良かったと、思ってください!さぁ

早く書いて!」


「はい!」


「吉田先生は、どうして一緒になって口止めを?愛奈は、あなたの生徒だったんですよ!」


「私は、ちゃんと警察に、言うべきだと

校長に申し上げたんですが、一喝されて

私も立場上、校長に逆らえ無くて、すみません、本当にすみませんでした!」


「そう!一応掛け合ったのね?じゃあ

あなたは、いいわ!」


ホッとする吉田。


「あの~高井さん、理由は?」


「一身上の都合で、結構よ!」


「はい!」


「じゃあ、それを必ず、今日提出してくださいね!もし裏切ったら、分かってますよね?」


「はい!勿論です!」


「じゃ、失礼します!」


歌保は、スタスタと帰って行った。

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