第3話愛娘の死

仕事中の充に、1本の電話が入る。


(うん?誰だ仕事中に)


携帯を見る充は、学校からだったので

席を外して、電話に出た。


「はい高井ですが」


「すみません、私1年の担任の吉田と

申します、仕事中に申し訳ございません」


「あ~いえ、それでも電話して来たの

だから何か、有ったんでしょう?」


「はい、あの…実は…」


「何ですか?」


「高井さんが、屋上から飛び降り自殺を

しまして…」


「何だって!愛奈が自殺する筈が無い

でしょう!」


「それが本当なんです、今警察と救急車

も来てまして…ただ即死状態でして高井

さんは、市内の大学病院に搬送される

そうです、そこで詳しく自殺原因を調べる

みたいです、出来ましたら病院の方に…」


「言われなくても行きます、でも愛奈は

自殺じゃ無いですよ!ちゃんと調べて

ください!」


そう言って、充は電話を切った。

仕事を終わらせて貰い、重い足取りで

歌保の部署に行き、今聞いた事を歌保に

告げると歌保は


「嘘よ!嘘!愛奈が自殺だなんて!」


そう言って、泣き崩れて座り込んで

しまった。

そんな歌保を連れて、病院に向かう充。

どちらも口を開かない。

重い空気だけが流れる。

そんな時、歌保が


「充さん、愛奈は先輩にイジメられてるって

言ってたよね?」


「あ~言ってたな」


「私は、あの時愛奈に、学校は行かなくても

いいって言ったんだよ!行かすべきじゃ

無かった!ひょっとしたら殺されたのかな?」


「えっ!まさか、そこ迄するか?」


「だって愛奈が自殺する原因が無いもの

今朝も美弥ちゃん達が、迎えに来て元気に

学校に行ったのに」


充は、返事に困って黙って、運転をした。

病院に着くと、案内された所に行く二人。

そこには、警察も来ていた。


「高井さんですか?」


「はい、そうです」


「お嬢さん、残念ですが即死でした

血液等、色々調べたんですが、これと

言って、異常が見られませんでした

こちらとしては、自殺と判断致しますが」


「そんな事ない!愛奈に自殺する理由が

無いもの、あの子は先輩達にイジメ

られてたから、殺されたのよ!刑事さん

お願いします!調べてください!」


泣きながら訴える歌保。

充も


「僕からも、お願いします!」


「分かりました、学校に行き色々聞いて

みる事にしましょう」


「ありがとうございます」


歌保と充は、頭を下げる。

愛奈の姿を見るのは、止められた。

飛び降りだから、酷い状態だったの

だろう。

二人は愛奈を、家に連れて帰った。

そして、通夜に葬儀と意識朦朧と、しながら

何とか済ませた。

愛奈の同級生も、来てくれていた様だが

二人には挨拶をする、余裕も無かった。

歌保は自殺に、納得が行かず警察からの

連絡をずっと待っていた。

そして、何日かすると刑事が、やって

来た。


「あの、この前おっしゃってた、イジメの

件なんですが、学校側は一切無いと言って

るんですよね」


「そんな……」


「そして、生徒への聞き込みは、多感期

なので止めて欲しいと」


「じゃあ、このまま自殺扱いですか?」


「そうなりますね」


「そうですか!私達の様な、一般人の

子供は死んでも、どうって事無いんですね」


「それは、どういう意味ですか?」


「いえ!もう結構です!知りたかったら

自分達で、ちゃんと調べてください!」


歌保は、ドアを閉めると悔しくて涙が

こぼれ落ちた。

そして、泣いて泣いて、考え出した。


(愛奈をイジメてた先輩の一人は、父親が

市会議員で、もう一人は祖父が県会議員

そして、後一人は、その従姉妹になるって

言ってたわね、学校は口止めをされたのね

だから子供達にも、会わずに……酷い)

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