第3話 襲撃

私たちがゼッシュトゥルオン帝国を目指してエンヴェルクを旅立ち、およそ2週間が経った。今日中には入国して、明日のうちには見つけ出して魔力に分解されるほど細かくなるように殺す。そういう作戦だ。


「レゼ子、あそこまであと何キロ?」

「あと…、5キロくらいッス。それにしても、時間かかったッスね」

「だって頼んだのに速く移動できる乗り物作り出してくれなかったじゃん」

「アタシだって平均でいうとあと100年近く寿命が残ってるとはいっても、惜しいんッスよ!?どれくらいの速さがお望みだったかは知らないッスけど、あんまりこき使わないでほしいッス」

「まあ、それでエッセカマーに寄る都合ができて、イリーベちゃんとも合流できたし、あの時のメノカが偽物だって知れたし…。まぁ、結果オーライなんだけどね」

「でも、もしアイツと戦うって時になったらこの力は惜しまないッス!この世界の平和の為に何でもするッス」

「じゃあ、願いを聞いてくれる聖杯を作ってアイツを消すようにお願いするとかすればいいんじゃなかったの?」

「いや、神々ですら作るのが難しいとされているモノを作ろうとするとおよそ200年分の寿命を使うって言われてるッス。それに、そういうのを作るのは一族のおきてで禁止されてるッス」

「そんなこと言わずにさぁ。ね、お願い!世界の平和がかかってるんだから…」


「私がいないところで何を楽しそうなことをしているんだね?」


声がするまで気づけなかった。レゼ子の後ろには、あの時の男が立っていた。テウフェルだ。


「お前!?なんでここに…」

「なぜここにって…。貴様らを迎えに来ただけだ」

「私たちを迎えに!?何の冗談を言ってる!?」

「何も間違ったことは言ってないぞ。貴様らを冥府へ送る為に迎えに来たのだぞ?」

「そうか。私たちは冥府なんかつまらない場所に行くつもりはない。なんなら、お前だけを冥府に突き落としてやるよ」

「だぁがしかし、もう既に1人冥府に送るところだ」

「…へ」


テウフェルの手の中を見ると、ラータ君が首を絞められていた。


「お前、その手を放せ!」

「おいおい、ここでヒーロー気取りか。あのな、おとぎ話とか読んだこと、あるか?そこであっただろ。悪者は、正義の徒に命令されたことには逆らうってことが!」


そう叫ぶと、ヤツの手にはもっと力が入った。そろそろラータ君の限界も近いだろう


「シエラ、下がっていてください。ここは私が相手します」

「ダメだよ!アイツは私と互角くらいだよ!?もしもユウナが戦ったとしても死んじゃうよ!」

「シエラが見たことある人の中で、シエラの次に強いのは誰ですか?」

「ユ、ユウナだけど…」

「なら、きっと問題無いですね。もしもヤツに負けて先に冥府に行くことになっても、いつまでも、ずっと、待っています」

「ダメ!本当に…。お願い!」

「私が戦うのは、ただ無謀に死にに行く為じゃないんです。レゼさんが作ってくれている武装を着て戦って、死んだ私の仇をとってほしいからです」

「そんな…。それで私まで死んじゃったらどうするの!?」

「そしたら、また向こうですぐんい会えるじゃないですか」

「私は、ユウナも大事だけど、この世界も大事なの!」

「そうですか…。なら、できるだけ耐えてみます。イリーベも参加してくれるそう

なので」

「最後に、抱きしめてもいい?」

「いいですよ」


私はつい、最後だと思うと我慢してもしきなくて、キスをした


「…ありがとう、シエラ。私はあなたと出会えて本当によかった」

「そのセリフ、何回目…。じゃあ、待っててね」

「はい。約束です」



「待ちくたびれたぞ、小娘」

「お前、シエラがお前の起こした戦争にどれだけ苦しんだと思っている?お前だけは私が断じて許さない」

「うちもわれを逃がす訳にはいかん。絶対に殺す」


「私を楽しませてくれるか?いや、期待しない方がいいか」

「お前ごときに屈しはしない!」

「ざんじ(訳:すぐに)終わらせる」


「やってみろ!」



私はユウナとテウフェルが戦い始めたのを見届けてレゼ子のところへ行った。


「シエラちゃん、これを着るッス」

「これは…?」


それは、露出度高めの軽装らしきものと、その上から羽織る上着だった。


「…えっと…。作ってくれた武装ってたったこれだけ?」

「仕方ないじゃないッスか!布面積をできるだけ小さくすることで魔力を凝縮したんッスよ!これを着れば、布がないところでもアダマンタイトで作った硬くて重い武装と同じくらいの強度が上乗せされるッス。何と言っても、5回までなら強力な魔導兵器を作り出せるってところッス」

「…え?ま、魔導兵器ってあの、1つ1つの弾丸から禁断の爆破魔法級の威力の出るマシンガンとか、10キロ先のものまで消滅させられる弓矢とか?」

「それは知らないッスけど、まあ、これで頑張ってほしいッス。アタシにできることはこのくらいしかないので」

「うん。ありがとう」


私は着替えを済ませて、加勢に向かった。


続く 次回、遂に最終回!?

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