【リメイク版】第3話 謎の少年

「カンパーイ!!」


私たち3人は、タッグでの初任務成功祝いにお気に入りのお店で飲んでいた。


「シエラ、確か同い年と言ってましたが、17歳でお酒を飲んでも大丈夫なのでしょうか?」

「私は飲み慣れてるから大丈夫。ほら、ユウナも飲みなよ~」

「やっぱり、私は結構です」

「まったく~、そんなに警戒しなくても一口くらいは大丈夫だって!ほら、レゼ子も飲んでるし」

「彼女、私たちよりももっと飲んだら危ないと思うのですが…」

「レゼ子は見た目に反して自称19歳(たぶんウソ)だから問題ないよ。ねぇ、何か言ってあげてよ~」


「飲まなきゃやってけなんてしないッスよ!ほら、飲んだ飲んだ!」

「仕方ないですね、少しだけですよ」


ユウナは、少し苦笑にがわらいながらもどこか満更でもなさそうに言った。

私以外の2人はべろべろに酔っちゃったけど、楽しかった。



「うぅ…。シエラ、何故あなただけ2日酔いも何もないんですかぁ?」

「分かんない。始めて飲んだのは12の時だけどその頃からなんともなかったよ」

「一体何があったらそうなるんぇすかぁ…?しかも2人背負って帰ってくるなんて…」

「とりあえず、私は新しい依頼が来てないかポスト確認してくるね」


私が本拠地であるライブハウスから出て外のポストを確認しに行くと、そこには1人の軽装をした青い髪の少年がドゲザをしていた。…カオス。


「どうか、どうか僕をあなたたちのところでかくまってくれませんか!?」

「どうしたの、君?誰かに狙われてるの?」

「そ、それは…」


すると、少年は周りを見回したが何かに気づいたようだった。


「す、すみません!!やっぱり何でもないです!!」

「気をつけて帰りなよー」


私はまだ知らない。その少年がどうして匿ってほしいと言ったのかを。



私が部屋に戻ると、さっきまで苦しそうにしていたユウナが普通そうにしていた。


「ねぇ、今日も依頼来てたよ。できる?」

「はい、何とか」

「あんまり無理しなくてもいいからね。それで、今日の依頼は『正午にギルドの裏へ現れるアサシンを抹殺すること』だって。仕方ない、今回は殺さないと依頼達成にならないみたいだし殺すか」

「シエラが殺したくないなら私がやるので大丈夫ですよ」


相変わらず強がって千鳥足でそう言うユウナを私は抱きしめた。


「本っ当に無理しないでね、相手がどんな強さか分かんないから。さ、準備しよっか。」



ただいまの時刻は11時57分。もうすぐターゲットが現れるはず。


「何でターゲットの特徴が一切書かれていないのでしょう?」

「もしかして…、何かの罠!?」

「その可能性もありますし、最初は手加減しましょう。」


すると、両手にダガーを握りしめたターゲットらしき少年が現れた。が、それは今朝の少年だった。


「ど、どうしてあなたがここに…?」

「いや、それは君こそ。私は誰かから正午にここへ現れるアサシンを殺せって…」

「僕もです!まさか、これは罠ですね!?」

「じゃあ、戦わずに済む方法を考えよう。例えば、君が死んだことにするとか」

「ごめんなさい、それでは意味がありません!」

「大丈夫だって。君が君の教団に戻らなければこの罠を仕掛けた誰かさんは君が死んだと思い込むよ。私だって世界中から死んだことにされてるし」

「え!?あなたが死んだことにされてるってどういうことですか?」

「ほら、3年前の大戦争で名誉の戦死を遂げたっていう伝説のアサシン、フェリシエラ・ヘルダーって分かる?」

「はい!!僕、あの人に憧れてるんです!噂によると、美しさと可愛らしさを持ち合わせた容姿をしている上、料理も得意と聞いているので、もし生きていればその…けっ、結婚も視野に入れたいくらい、です。あ、ごめんなさい、熱弁してしまって!」


まったく、本人が目の前にいることにも気づかず…。褒めても何も出てこないぞ?

それに、この子は多分レゼ子のタイプ!言い寄られたとてレゼ子に引き渡す!


「ごめん、多分めっちゃ恥ずかしくなるだろうけど、そのフェリシエラ・ヘルダーは私だからね?」

「すみません、もしかしてジョークですか?」

「みんな最初はそうやって言うけど、本物は本物だからね?」

「…………あぁぁぁーーー!!!!!めっっっちゃ恥ずかしいーー!!!…はっ。フェリシエラさん、僕と結婚してください!!」

「ごめん、私の仲間に君を好きだって言ってる(本当はまだ言ってない)がいるから、その娘にしてくれる?」

「そ、そんなぁ…」


憧れだった私に断られて、相当ショックを受けているようだった。


「お前ら、もう用済みだ。さっさと死んでくれ。あのフェリシエラが生きているわけがないだろ」

「あ、あなたは…」


どうやら、少年の知り合いのようだ


「あなた、一体誰ですか?まさか、私たちにあの依頼を出したのはあなたですか?」

「おっと、感のいい小娘は黙ってな。ああ、俺はてめぇらにコイツを始末させようとした。それだけの話だ」

「なんで退団じゃなくて始末なんですか!?」

「始末しないと何回でも縋り付いてくるんだ。このゴミ虫めが!」


男はそう叫ぶと、少年に切りかかろうとした。けど、ユウナがそれを防いでくれた。


「おい、ソイツを殺せ!じゃねぇと来週の計画に無駄が入るじゃねぇか!」

「来週の計画って何だ!?答えなさい!」

「答えてたまるかよ…がぁっ…」


男は急に吐血して、動かなくなった。すると、小路地からタキシードを着た紳士らしき人物が出てきた。


「まったく、あなたは最後まで一言余計なんですよ。ごきげんよう、皆さん。来週の計画、知ってしまったからには私を楽しませてくださいよ」


動かなくなった方の男を地面に放り出してユウナがそのタキシード男に切りかかったが、男は残像だったかのようにぼやけて消えていった。

とりあえず、1週間後の『計画』とやらは阻止しなきゃ。


「君、私たちに協力して」

「…はい!」


少年は嬉しそうに、元気な返事を返してきた。

1週間後、少年が正式に仲間になることは、案外予想がついていたのだった。


続く

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