第5話

 ラファエルはかんとして右手のひとさしゆびを中天へとかかげられた。

 きゆう窿りゆうから三百六十度にすい色のこうぼうがほとばしった。ぼうぜんしつとして巨万の市民は目撃していた。すい色のこうぼうはやがて一塊の巨大なる光明の団塊となって肥大化してゆきえんえん天にみなぎっているツインタワーまでどんぜいしていった。すい色の光明につつまれたツインタワーとタワーのかいわいではたしかに『時間がとまって』いた。時間の凍結したすい色の光明のなかでツインタワーの火炎は映画の『まきもどし』をみるかたちでしゆうそくしてゆきごうぜんとして崩壊したツインタワーはおなじくじんふうきゆう窿りゆうへとしようりつしてゆくかたちで『復活』されていった。もとどおりになったツインタワーの南棟と北棟から二機の旅客機がつつがこうしようしてゆきマンハッタンのはちがいふくげきじようの日常に回帰した。すべての『治癒』がしゆうえんすると巨大なる球体状の光明は中枢へとふくそうしてゆきゆうすいと消滅した。ラファエルがおっしゃる。『神のしもべたる隣人たちよけつしてなんじの隣人をにくむなかれ』と。同時にラファエルの肉体はそくめつされきゆう窿りゆうきつりつされていたヤハウェ神もかんとされながら虚空へと――おそらくは至高天へと――消滅なされた。十秒間ほどマンハッタンにはうつぼつたる沈黙がながれしばらくして同時に隣人たちみなが万雷の拍手をおこして号泣しはじめた。いわく「Hallelujah――神様万歳」と。この『せき』の中心人物となったハンナばあさんはやはりマンハッタンのせんぱくはいしながらきゆう窿りゆうを仰視しつぶやいた。

「神様あなたを愛しています」と。

「わたくしめは永遠にあなたさまのしもべでございます」と。 

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