第29話

 日本列島は沈黙していた。

 ひつきようりゆう大明神は沈黙なされた。日本全国民がこんぱく接続するもののりゆう大明神は御姿をあらわされなかった。ほうはくたる日本列島津津浦浦にて全日本神國国民は『ハラキリ』の姿勢で圧倒的なる『静寂』を静聴していた。ところどころできんじゆうがないている。なぜりゆう大明神は『われわれ』をひんせきするのだ。めんの全日本神國れいみんざんにたえなかった。『われわれ』の信仰がたりないのか。大明神様は『われわれ』をてなさったのか。である。神聖ぼうとくすべからざるりゆう大明神は『われわれ』全日本神國れいみんじんえきなさった。『なんじ等朕の國のけんれい等よ。朕は連綿たるなんじ等の歴史をしつかい見守りてきたり。なんじ等は綿めんばくたるすいの祖先より子子孫孫世界に冠絶するとつこつたるけついんをたどりてこの昭和の天下に誕生したるものなり。なんじ等の祖先はれいげんあらたかなるによりて無尽蔵なる森羅万象によろずの神をし崇拝をばしたるものなり。朕の肉体なる日本列島にぞ生滅したるばんこくかみがみはこれをもちてなんじ等のけついんを守護したるものなる。なんじ等は「観測」によりて量子論的にかみがみをば信仰し朕等よろずかみがみいんの「観測」によりて量子論的にかみがみたる存在にぞをりあたひたる。ひつきよう朕等「神」ですらも量子論的観測なくしては存在こそあたはざりたれ。ゆゑになんじ等がこのハビタブル・ゾーンよりそくめつしてしまへばまた朕等かみがみもこのヒルベルト空間よりそうめつせしめられねばならぬ。つまり神と人とは相違するものにしながら一心同体なり。朕はなんじ等をがいせんせしむることあたへどもなんじ等はおうさつせしめられまた朕等もせんめつせしめられむず。朕はかみがみの代も人人の代も千代に八千代につづかむことをば冀ふところなり。しかれどもなんじ等は朕等とともに「必死」の覚悟にて欧米の邪宗にてんちゆうせむとけつするところにあるや』と。あいまいたるこんぱくそのものにめいてくるりゆう大明神のしんいんひようびようたるこえにたいして正座し『ハラキリ』をしながら全日本神國れいみんはこたえた。『全れいみんけつけつたる狂いもなく同時に』こたえたのだ。

『神も人も滅ぶかもしれません』と。

『といえども「日本」は永遠であります』と。

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