第4話 謀略の種

 とある金曜日


 パパが久々にお休みらしくて数日家に帰ってくる事となった。


 当然、ママは大喜びで昼御飯を頑張って作っている。


 だが、私はというと…顔を合わせた事の方が少ないので、割と緊張というか違和感というか…


 そうだ!式部からレアキャラが現れたら会ってもらう約束してたんだ!



『レアキャラ帰宅!』


『りょ!今晩お店行くね!』


 今晩は皆揃って小町ちゃんのご飯食べれる!




「ただいまー」


「はわー!パパおかえりなさいー♡」


「はわわー!数回しか会ってなくて違和感バリバリのパパおかえりー!」


「日本人だし歯に絹着せようよ、娘よっ!」



 帰ってくるなり、人を台無しにするソファでぐったりして、すかさずコロちゃんが得意のアイマスクで眠らせにかかる!


 秒 落 ち !


 コロちゃんさすが!



 テーブルに料理が並んだ所でパパを起こして家族でご飯を食べる。


 刺し身が用意してあるって事は、ママはパパが帰ってくるの知ってたんだな?

 二人共滅茶苦茶仲がいいので、その点は尊敬してる。


「月花、最近は《社》の依頼とか探索とかどうだ?危険な目に合ってないか?」


「大丈夫かな?最近はレッドドラゴンと戦ったのと、その子供を助けたのと、殺人事件を解決した位かな?式部も助けてくれるし!」


「そっか、いいパートナーだな式部ちゃんは!」


「自分は回復担当とか言いながら魔槍グングニルを使いこなす達人だし」


「グングニル…また凄いもの手に入れたなぁ…神話級アイテムじゃないか」


「スキルもレア物あるよ!私は技術破壊スキルブラストあるし、式部は技術強奪スキルスティール技術譲渡スキルトランスファー…あと超威圧ドラゴンアイとかっ!」


 突然発動させる……がパパにも全く効いておらず普通にお刺身をぱくついてる。


「いいスキルだな、人を殺めず無力化出来るスキルは価値があるから大事に使いなさい」


「パパも通じないのかー!うちの家族どうなってるの?」


「パパと私は…色々辛い思いもしたけど沢山経験を積んで今があるのよ?貴方達も様々な人と巡り合って、泣いて、笑って、掛け替えのない経験をなさい♡」


「はーい!あ、式部ちゃんがパパ見たことないからレアキャラ見てみたいって」


「レアキャラ…もう少し頑張って帰る様にしようかな…」


「やったー!」


 ママ大喜び!


 私もちょっと嬉しい!





 その晩、小町ちゃんの食事会が久々らしくて楽しみにしてたパパ。

 パパは美味しいものに目が無いので小町ちゃんの料理は大好物なのだろう。


 コロちゃんも入れて四人でオアシカに入る。



「小町、久しぶりー」

「ちょっと!帰ってきたらたまには顔見せてよねー!拗ねちゃうぞ?♪」


「悪かった、帰ってきたら小町の料理食べにくるよ」


「やらしいー…違った!宜しいー♪」

「人格疑われる間違い!!」




「今晩はー!駒鳥鵙式部こまどりしきぶですー♪」


「……今晩は!大きくなったなぁ!小町に似て美人だよ」


「…これは…口説かれてると取っておこう!♪」


「褒めてるだけだから口説いてないっ!式部には私がいるでしょー!」


「冗談にゃー♪よしよし」



「よし、月巴が帰ってきたし、絶対バランスいい食事は外でしてないだろうし、肉と野菜両方出しちゃおー♪」


「むむむ、外出先の孤独なグルメを見抜かれてる…」


「月花パパ、高そうな椅子に座って赤ワインをグラスで回してそうなキャラだねー♪」


「実際はコロちゃんを頭に乗せて爆睡してる人だよ」





 皆で賑やかに食事を摂って、久々の団欒だった。

 皆はうちの家に降りていったが俺だけは小町にコーヒーを貰いたくて残っていた。



「小町」


「は…はい!コーヒーどーぞ♡」


「式部ちゃん…俺の子だな?」 


「うっ…突然見破られた…ごめんなさい」


「神への願いがこれだったんだな…今彼女を見て吃驚したよ」


「見てわかったの?」


「昔、六花が逢禍になった時、過去に飛んだ技があるだろ?あれはうちの家系でたまにいる次元の歪を纏ってる者にしか使えないんだ」


「成長したから式部に現れたのかな?ごめんね…」


「いや、公には認知出来ないが、いい子に育った。こそっと認知はするよ」



「良かった…本当にごめんなさい…妹も本当に大事なのに…どうしても…どうしても貴方以外を好きになれなかった…」


 これは黒六花の気持ち?それとも小町の?…いや、尊い気持ちに変わりはない。



「別に何が変わるって事でもないだろ?気にするな。俺達はこれからも助け合っていく家族だよ」


「うん、やっと告白出来た。貴方の子だから大事に育てたよ!」


「ああ、見てわかる位いい子だ…それよりどうやって受精したんだ?俺の種をお腹に移し入れた…とか?」


「あー…あははは…それはーそのー…二人が熟睡してる間に3ヶ月ほど月巴を無意識状態にしてみっちり抱いて貰っちゃった!えへー♪」


「道理であの時スタミナメニューが頻繁に出されると思ったよ、何故かめっちゃ疲労してたし」


「そりゃ意識ないけど寝かせようとしませんでしたから♪」


「やられたー!小町を甘く見てた!」


「恋する女は強いんだぜ♪」



「そうだ!折角だし、二人の娘の腕試しをしてみるか!」






「パパが鍛えてくれるとか初めてだからちょっとドキドキ…」


「レアキャラの実力が遂に白日の元に晒される…ゴクリ」



 パパが腕輪を回すと景色がブレた!


「この多重結界内は普通の人は入れない。それと建物はこの空間が解かれた後、元通りになるから気にしなくていい」


「壊し放題!」


「やっては行けない事ってやりたくなるのがJCだよねー♪やー!」


 どーん!


「おりゃー!」


 どどーん!



「そこ!無駄に破壊しなーい!ルールはスキルなしで。二人の実力を見たい。殺すつもりで牙を立てに来い」


「はーい!じゃ、私から」


「順は不要だ、こちらも二人だ」


 パパの背後から、朱い長刀と光る文字が浮いてる巫女装束を来た人がゆらりと静かに現れる…うちのママ!


「六花は式部ちゃんを、俺は月花とやる」


「はーい!」



 一本取ってパパに良い処を見せる!


 次元から刀を抜いて切りかかる!


 だがパパも次元から刀を出し、難なく受ける!


 力で押そうとするも、優しく受け流される。


 三回!四回!打ち合ってみるが全て流されて埒が明かない!

 あれをやるか…


名も無き一撃ネームレス・スラスト…!」

「…疾風怒涛しっぷうどとう


 パパも技を繰り出す!


 発生は同時!

 突きの衝突、二人の刀のエフェクトが衝突し蒼い火花が舞う!!!


 しのぎを削る中、背後から結晶で作った剣を背中に飛ばしてみる!

 だが、巨大な結晶の壁が剣を砕きながらそびえ立った!


 蒼い稲妻の雷光の中、力を振り絞る私だったが…駄目だ、技量が違いすぎる!


 弾かれて尻もちをついてしまった!



「もーパパに手加減されまくって悔しいー!」


「ごめんごめん、それよりママの戦いを見てご覧?刀の動きに無駄がないから勉強になるよ!」



「はぁあああああ!」


 遠心力をつけてグングニルで刀を攻撃するが、力を刀で受け流されて体制を崩されている。

 崩すと一手有利になる分戦闘が有利!


列列椿つらつらつばき


 刀の連撃で槍の回転で抑えつつ、隙を良く見て決めに来てる!


 だが式部は超低姿勢スライディングで刀の連撃をくぐり抜け、ブレイクダンスの様に逆さに足を回しママのバランスを崩し、真上に蹴り上げた!


 空中に高く上がって動けないママを素早く跳ね起きて決めに行く!


「魔槍よ、敗走を与えろ!!!」


 一撃必中の槍を空中の六花に向けて放つ!


「天道花!!」


 空中に飛ばされた六花が突進技で魔槍と激突するが、ぺちん!と弾かれた!


「うそーん♪」


 気がつくと六花が喉元に刃を突きつけている。


「あー…六花ちゃん負けにゃー!」


「はーい、お疲れ様!いい子☆」

 頭撫でられてギリ拗ねるの回避成功!


「パパ達何者?腕には自信あったのになぁ…」


「六花ちゃんも強かったにゃー♪」


「ママ、強かったー!」


「今もたまになんだけど、逢禍おうかが出たら斬り祓うお仕事してるからね!」


「昔は今とは比較にならない位に逢禍が多く息を潜めてて、それを祓っていたのが日本中にいる巫覡ふげきと呼ばれる人達だったんだ」


「それがママだったんだね」


「で、鹿鳴の家系の結晶技も逢禍を祓えるから六花と一緒に戦ってたんだよ」



「パパとママの出会いだったんだ!」


「今日は勝てなかったから、お話はここまでー」


「えー!ずーるーいー!」




 小町は多重結界に入れるようになって、オアシカ前でニヤニヤしていた。


「マーマー!パパ強いねー!ああいうとこが好きだったの?」


「式部も気付いたかー!あの人の良い所は自分を犠牲にしてでも誰かの幸せを願える処。ママが一度死んだ時、パパが技で生き返らせてくれて代償にパパが死んだ事あるのよ?」


「命懸けでママを…で、何で生きてるの?」


「色々長い話になるからまた今度ね♪その二度目の生を貰った時に、優しいこの人の子供が欲しいっ!…って」


「良かった、思った通りの人だった♪」



「ちょ!あれ見て!?」


 T-REX並の大きさの逢禍!


「このサイズは自然発生しない…また創り手が現れたか!」



「私達でやるよ!」


「だよねー♪」


「ルーキー達のお手並み拝見といこうか!」




 逢禍が口からお決まりの爆発物を連発するが、


消去イレイズ!」


 スキルの前に敢え無く消える。



「廻れ魔槍!ニーベルングの指環!!」


 放たれた魔槍がリング状に回転しながら敵をえぐり取って行く!


「静寂へと還れ、御魂よ!!!!」


 斬り上げで逢禍は祓われて行ったが月まで切れたのは計算外だった。


塵は塵にダストトゥダスト!」


 残った身体を最後の一撃で塵に分解していく…




「二人ともお疲れ様ー!」


「やはりスキルを組み込んだ闘い方の方が馴染んでるな!」


「スキル第一世代だからねー!お父さんどうだった!?」


「戦い慣れてて卒はなかった。だが、格上を相手にした場合は上手く逃げる事も必要だよ?」


「はぁーい!」


「月花、強くなったね!ママ感動したよー」





「ママ、私どうだった?」


「ママと一番好きな人との子供が立派になって…何か感動しちゃった♪」


「泣いちゃ駄目ー!♪」




 親子交流成功かな?

 スキルはまだまだ未知の部分が多いし、スキルが使えなくなる事も想定すると最終的には基本的な攻撃力が物を言う。


「パパ、ママ有難う!次は勝―――つ!」

「勝―――つ!♪」


 二人の娘の頭を撫でてやる。


 思えば、必死になって駆け抜けてきて、次の世代を育てる事を怠っていた。

 少し仕事を減らしてでも、スキルの使い方等を伝えていかねば。

 うちの娘達だから心配はないだろうけど。



 お家に帰って、改めてパパとママを見る。


 家での二人はゆるいというか完全に気を抜いていて、殺気のさの字もない。


「どうしたの月花?ジロジロ見てー」


「いやー見方が変わるもんだなーって思って…ママ、専業エロ主婦じゃなかったんだねー!」


「ふっふっふっ!NOある鷹はYESを隠すのよ!」

「ちょっと何言ってるか分からないけど、二人とも凄かった!」


「少し多めに帰ってくる様にするから、戦闘経験値上げていこうか!」


「わーい!レアキャラからノーマルキャラに!」


「なんか残念な気持ちになる言い方やめなさい!」





 帰り道、歩きながらママと会話が弾む。


 スパーン!


「ん?今スリッパで叩いたのは?」


「酔っ払いエロ親父♪」


「ならいいや!…ていうかママ、本っっっ当にパパ好きなんだねー!」


「あ…え…うん…////」


「今までそんなママ見た事なかったから新鮮だにゃー♪」


「からかわないの!何人か付き合った事はあるけど…あの人は妹が逢禍になっても、次元に飛ばされても『俺に任せろ!』って有言実行で助け出した。私が敵にさらわれても、命を落としても、身を挺して助け出してくれた。誰よりも敵に、身内に優しく、心を痛めてるのに自分を顧みない献身、教科書一冊分は言えるわよ?♪」

 

「私、ママが私のママで、あの人がパパで良かったって、胸張って言えるよ!今日で確信した♪」


「さーすが、私の愛娘!♪」




『月花、《社》の依頼見た?』


 『見た見た!久々に違う世界!』


『内容は逢禍の駆除と凶悪スキルの回収』


 『世界は…どんな世界何だろう』


『座標だけだと分からないよねー!珍しく捜査の為の資金をある程度くれるらしいし、詳細は現地入りしてから時限開封メールが開くって』


 『久しぶりの別世界だから、用意は念入りにしないとね!』


『りょ!☆(ゝω・)vキャピ』

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