防衛の季節

月井 忠

第1話

 二月と三月は防衛の季節である。


 会議は絶えず開かれ、防衛費は増していく。

 昨今の状況はひどいもので、経済まで悪化する始末。


 国民の苦しみは増す一方だ。


 最近では、隣国からの侵略も加わっていると聞く。

 なんでも、黄色い砂をまいて偏西風に乗せるらしい。


 研究者の話では、この砂が更に被害を増大するという報告も上がっている。


 もちろん、我が国の失策が招いた事態に変わりはない。

 隣国を責めることはできない。


 できないのだが……。




 杉を植えすぎたのが、いけないだああああああ!




 花粉イヤ!


 絶対イヤ!


 コロナのせいでマスクしてても目立たないけど、鼻は常にグズグズ。


 目は痒くてどうにもならない!


 即刻、杉を伐採せよ!




 などと喚いたところで状況は変わらない。


 自衛に徹するよりほかない。


 もっとも、私は舌下免疫療法というものをやっている。

 舌の下にタブレットみたいなものを置いて、しばらく放置。


 これを毎日行う。

 花粉に晒すことで免疫を慣らし、症状を抑えるというものだ。


 おかげで症状はほぼない。


 マジで、おすすめです。




 裏切りもの?


 違うな。


 言ったではないか、自衛するよりほかないと。


 どうせ、杉を伐採したところで、また植えられる。

 諦めて、自衛に務めることだ。




 何? 自分は花粉症ではないだと?


 安心しろ、日本人ならいつかは花粉症になる。


 杉花粉から逃れるすべはないのだから。


 二月と三月は防衛の季節である。


 知識だけでも入れておけ。


 いつか花粉症になった時のために。

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防衛の季節 月井 忠 @TKTDS

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