三一階層の調査
……いたなあ。
群がる群衆の中心にいたよ。悲しいけど元気でやってるんだね、よかった。
セイラ様がうつむき加減だったのはちょっと気になるけどね。
なんか私を探していた気がするけど、あの群衆の前じゃ見つからないでしょ、いるってことはバレたかもしれないけどね。彼女とはよく連携していたから私の気配をよく知っているはず。魔法探知すればいるくらいはわかるっしょ。
アイテムボックスはそこそこ元気だった。良かったぁ。私が魔力あげないと衰弱しちゃうからね。しっぽと耳が垂れ気味なのがかわいそうだった。
私以外に懐くことはないから、強制的に動かされているんだろうな、かわいそうに。
早く連れ戻さないと。もっともっと頑張ろう。
さて。
クラリスが三一階層のオーガを討伐するのかな、それなら討伐は安心だね。
クラリスが三五階層まで探索と討伐をするのであれば私は用済み。次のダンジョンいこう。清原ダンジョンや夕焼けダンジョン、高難易度の花ふぶきダンジョンとか。未踏破のダンジョンは一杯ある。腐っても最新のダンジョン都市だからね。新規ダンジョンがうにょりと出てくることもわりとあるし。
ま、とりあえずクラリスの出方待ちだねぇ。
道具の手入れをしながら待ちましょう。
翌日、さっさと帰るクラリスを目撃。これは三一階層の処理だけでお帰りするようだね。
三二階層より先を偵察してお金と、ダンジョン管理組合:組合貢献度、を、あげておきましょ。
「へ? 三一階層の偵察ですか?」
窓口に三二階層の偵察を申し込んだら特別任務「三一階層の偵察」を頼まれた。なんで? クラリスが処分したんじゃないの?
「クラリスが〈殆ど〉のオーガを処理したのは事実です。ですが安全かどうかを見極める確認魔法を放つと〈黄色反応が出る〉んですよ。まだ危険が潜んでいるはずなんです。それを排除してほしいというのが、このミッションです。あなたを指定しているのは、元クラリスだったあなたなら密かに処分することは可能、という判断だと思います。個人的な推測ですが」
「密かに処分する理由はクラリスが討伐しきってないことを隠すためですか」
「そういうことになりますね。ちなみに現在三一階層は封鎖されています」
むー、今のクラリスは大雑把だなあ。ロラとスカルスの力技でざっとやっつけただけなんじゃないか?
「まあいいや、わかりました。どうせ三一階層が安全にならないと三二階層へいくのも難しいですしね。その任務受けます」
「ありがとうございます」
というわけでクラリスの尻拭いをすることになったよ。
捨てられた身なのに、なんだかなぁ。
所変わってここは三一階層。クラリスが派手に暴れたのか地形が見事に変わっていますわ。
丸く抉られた山肌。爪痕のようなくぼみが残る地面。軒並みなぎ倒された木々。階層全体に腐臭が立ちこめている。
「魔法使える人は乱暴にできて良いですねえ……。それじゃやりますか。タツキ、準備いい?」
「とにもかくにもくっせーですわニャ」
「タツキのほうが嗅覚優れてるもんねえ。できる限りさっさとこなしてしまおう」
ま、タツキもただのきつねじゃないし。さあ調査開始だ。
「エレベーター付近にモンスターはいない感じだね。生命反応もなさそうだ」
「開幕ぶっぱしたんだニャろね。土地も削られまくってるニャ。復興めんどくさそうだニャぁ」
「エレベーターが壊れなくて良かったよ。壊すほど馬鹿でもないとは思うけどね。奥の、村と集落に行こうか」
まずは集落。――の跡地。抉られているというレベルではないほど土地が深く破壊され、集落の痕跡はほぼ完全に無くなっていた。
未だに残る魔法の臭い――魔法痕跡と呼ばれる――を嗅ぎながら周辺も調査。逃げ出したオーガを倒したであろう、人型の動物が蒸発した痕跡や小型魔法ミサイルが無数に飛んでボロボロになったであろう木々や地面が広がっていた。
「えげつなー。こりゃ生き残りもいないでしょ。さっさと村に行こう」
拠点を去り、村へと足を向ける。ま、村もこんな感じでしょう。
歩きながら偵察弾を魔導銃から発射して周辺の観察。短距離走くらいの半径を一気に簡易走査できるのでべんりー。生命反応はないけどね。時たま遠視弾も撃って上空から見渡すことも忘れない。魔導銃強化したから便利な弾も撃てるようになった、強化して良かったなあ。
「うーん。村が見えてくるはずだけど、クレーターしか見えないなあ……」
特に危険なこともなく村の跡地へ到着。クレーターの中心部が村の中心部っぽい。強大な破壊魔法で穴ぼこを作ったようだ。ロラあたりがやったのかな。メテオフォールかなあ撃ち込んだ魔法は。
「これは調べるまでもないね。次は、予想されていた、もっと大きな拠点がある方向へ行ってみようか」
「クラリスが暴れると本当に凄いんだニャ。さすが世界最強パーティ」
「こんなに暴れているのは見たことがないけどねえ。いつも潜っている所より浅い階層の任務だったから気が緩んでたんでしょ」
気の緩みで巨大な魔力の塊を落とすメテオフォール撃たれたら、撃たれた方はやってられないとは思うけど。
奥へ進む撃ちにだんだん周りの気配が怪しくなってきた。おどろおどろしいというか、霊がいるというか。
「魔力の残さが幽霊と言われているんだよ」
「へーなのニャ。じゃあ誰でも幽霊になる可能性はあるんだニャ?」
「あるね。魔力が強ければ強いほど幽霊になる可能性はある。生前の記憶はあまり持ってないけど、ノーライフキングになるような幽霊は完全な記憶を持っていることも多いね」
「のーらいふきんぐ」
「幽霊系統の最上モンスターかな。もうモンスターとは言えないような知性を持っているし、本来は人間でしか扱えないエレベーターを使いこなして、支配下モンスターを引き連れて地上へ進軍してくるときもあるよ。ノーライフスタンピードと呼ばれたりする」
とまあおしゃべりしている内に周辺のおどろおどろしい空気が危険なレベルにまで達したので戦闘モードに。
一度に大量のオーガの魂が形成されたので、それらが集まって危険な幽霊系モンスターができたのかもしれない。それがいるとすれば確かに安全確認魔法撃っても黄色になるかも。
「幽霊が私たちに干渉し始めそうだ、除霊弾撃ち始める。これは相当に良くないな。残弾も除霊系に切り替えよう」
立ち止まって弾薬をブラストやスラッグから除霊弾に切り替える。ターンアンデットでござる。
補充用具でテキパキと補充したら弾薬袋に詰めて準備よし。
ゆっくりと進んでいく。
「基本私は破壊魔法でも撃たれなければ下級幽霊は完封出来るんだけど、タツキは出来ないもんね。マナをパンパンに体内に入れておいて、それで耐えられると思う」
「いただきますニャ! もぐもぐもぐ!」
「まーた太るなあ……」
ブタ太郎を尻目に、除霊弾を幽霊濃度が濃いところへ撃ち込んでいく。
除霊弾が炸裂すると幽霊の気配が消えて無くなりおどろおどろしい空気が無くなっていく。
今はまだ一発撃てば除霊できるからすぐに補充用具で補充してるけど、もっと幽霊の気配が濃くなったら連射しないといけないから補充が間に合わなくなるかもしれないなあ。
そうやって進んでいたら城の跡地が見えて、その奥に凄い空気が流れているのを感じた。
「遠視したけど凄いのを発見したよ。タツキ、聞きたい?」
「あんまり聞きたくないニャ」
「オーガの三倍以上デカいオーガキング。幽霊の集合体が集まって形成してる」
「逃げるニャ」
「今叩かないともっと幽霊が集合して手に負えなくなる。素のオーガキングは頭も良いし、こいつも知能高いかも。幽霊引き連れてノーライフキングのようにスタンピードを起こすかもしれない。戦うよ!」
やれやれ、やるとしますか。私の賃金は高いぜえ? (中二病的台詞を吐きたかった)
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