えいえいおー!のニャのニャのニャー!
ゴブリン討伐は楽勝でした。
くすんだ肌に小さな体、醜悪な臭さが特徴のゴブリン。
群れることが特徴のゴブリン。
私は単発火力に特化気味だから比較的範囲攻撃になるブラストで仕留めようと思っていたんだけど、タツキが範囲魔法に優れていてね。狐火の魔法でゴブリンを炎で覆い尽くしてた。
巣ごと焼き払っちゃいました。
いやー燃えるゴブリンは臭かったなあ。
「無事に大金ゲット! 何に使おうかなー」
「ダンジョン探索の資金だニャ」
そうだね、そうしよう。今ナイフすらないもんね。
ダンジョンのギアなら何でも揃うダンジョン用品店へ移動しました。
「おう、いらっしゃいいらっしゃい! ここは何でも揃うダンジョン専門店だ!」
がたいのいいおっさんが呼び込みをしていますね。ここなら良いアイテムが揃いそうです!
「こんにちはおっさん。あの、ダンジョン用品一式を探しているんですけれども!」
「おう、嬢ちゃんもダンジョンに潜るのかい! いいぜ気に入った! 良いやつを見繕ってやろう」
そして何やら機械を取り出します。
「まずは犯罪者じゃないか調べさせてくれよ。犯罪者と管理組合にダメ出しを食らってるやつには売れねえからなっと」
ピッピー
あ、警告音っぽいのがなった。
「あれま。ダンジョン管理組合からダメ出しを食らってるのか。ダメ出し理由は……クラリスから逃げ出したから。あんた例の女か」
一気に険しくなるおっさんの顔。
「例の女ってのがわかりませんけれども、クラリスが私を置いて去ったというのが正解です。家宝のアイテムボックスまでとられましたよ」
「事情は知らねえが例の女には売れるものはないな。さっさと出て行ってくれ」
「そんなぁ。大体なんですか例の女って」
「だからクラリスから逃げ出した女のことだよ、ナツカ・シアリ伯爵令嬢様! さあ出て行ってくれ!」
「私は逃げてませんよ! 逃げたのはクラリスのほうです! というか、なんで私ってわかったんですか!?」
「そんなの魔法で顔認識してるからだろうが! 真実がなんだろうと構いやしねえよ、ダンジョン管理組合から売買不許可の通達が出てるんだ。売りたくても売れねえよ!」
うーん、こうなっちゃうともうなすすべがありません。大人しく引き下がりましょう。
しかし参りましたねえ。販売禁止になっているだなんて。スカルスあたりが考案してロラがダンジョン管理組合に取りあった形ですかね。なんたって公爵様のご子息だからね。
ロラの家長は現王様の弟。うちの国は直系子孫主義だけど、何かあったら王になる可能性だってある。
ロラが言ったのか、家に言わせたのかはわからないけど、ダンジョン管理組合だって無碍には出来ないよねえ。
まあ、クラリスが私を殺しに来てるというのがわかった感じでしょうか。
うんわかってよかった、ですかね。
私の置き土産であるアイテムボックスが心配です……。
これはとにかく現状を打破しないといけませんね。
「よーし、自分で魔導具を作りましょう。材料は管理組合の範疇ではない市場で売ってますし、採取してきてもいいですね。金属、木材、布。釘に針と糸。集めていきましょう。えいえいおー!」
「ニャのニャのニャー! でもどこで入手するニャ?」
「ダンジョン内部。質は最初だしそこまで高くなくて良いから一通りのギアを作っちゃいましょう」
「大変そうだニャア」
「大変ですよ。でも自分で自分の魔導具を作るのは魔導技師の通過儀礼でもあるし日常的な行為でもあるので、材料さえ集まれば作れます。簡単なお仕事に、難しめのお仕事を混ぜて、頑張っていきましょう!」
えいえいおー! ニャのニャのニャー!
――少しだけ月日が経ち――
「素材も集まりましたね。まずは魔導針から作成しましょうか」
「ニャ。金属を倉庫から持って来るニャ。作成用具だからちょっと良い金属を使うニャ」
ニャニャのニャのニャ。助手君も慣れた手つきで倉庫へ探しに行きます。
今私たちは「ゆうがおダンジョン」三階のヘタッた家屋に住んでいます。さすがに魔導具の技術を人に見せるわけにはいきませんしね。倉庫もついているし居住性は抜群! ……ということにしておきましょう。貧民街一歩手前レベルの家なのは否めません。
ま、それでも家屋を維持できるほどの収入があるってわけです。
何せ私は元クラリスの一員。実力は申し分なし。魔導銃があるから残弾という制限付きではあるものの魔法は使えるので、ドラゴンを倒せとかの災害級じゃなければ大体なんとかなります!
「材料持ってきたニャ。これで良かったかニャ?」
魔人の金属に貴金属が少量。「ゆうがおダンジョン」地下二五階の良質な土がひとつかみ。切っ先の切れる鋭い黒曜石。
「良い感じですね。早速魔導具作成に取りかかりましょうか」
魔導具とは魔素が込められた道具のこと。簡易補充用具で魔素を加えながら加工していきます。
魔素が入っていない、もしくは動いていない物体に注入道具や人の手で魔素を加えると、魔素に反応して物体がだんだんと個性が出てきます。魔人の金属は流体系になりました。
その魔人の金属を、ゆうがおダンジョンの土で作った型に流し込んでいきます。鋳造みたいな感じですね。
小さくてかつ消耗品なので、同じ動作を繰り返しながらいくつも型に流し込んでいきます。
「そしてある程度固体になった魔人の金属に、黒曜石で魔素の流れを制御する基板を書き込めば……魔導針の完成です」
ででででーん。魔導針が出来たぞー。
これに市販されている魔導布で服を作れば魔法がエンチャントされた魔導着の完成だー。
「ま、今の時代魔導着なんて誰も着ませんけどね。全ての効果が上で魔素の補充も要らず、効果が永久エンチャントされている”魔法着”が生み出されましたからね」
この世は残酷な大魔法時代なのです。魔導具は時代遅れ。
ま、私には魔導具がないと何も出来ませんからね。やるしかないっす。
さて縫うために魔導針を作成したわけじゃあありません。ほつれを直したりするときに使いますけど。
これを使って魔素の流れを制御する基板を細かくかつ広く書き込むためです。
いわば魔導の羽根ペンのペン先みたいなものですね。
さて、魔導銃の弾丸を一つ分解して、弾丸の先端に魔導針を差し込めるようにしました。
これで弾丸を魔素容器にして、魔素を魔法針に流し込みながら細かくてかつ大規模に魔導回路を書き込む準備が整いました。
本格的な魔導具作成の始まりです。
まずはナイフや鍋など遠征時に必要なものを作ります。錬金術で金属を曲げて作っただけの簡素なシロモノ。これにはエンチャント「キーンエッジ」「オートシャープナー」を付与しましたけど、あとは機能があって内部が拡張されている空間拡張ポーチに入ればいい。
そして革を編み込んで作った空間拡張ポーチを一つ追加。煙幕や魔導グレネードなど、投てき物をここにしまいます。
自動攻撃迎撃装置「オーブ」を作ろうと思ったけど素材の質が追いつかなくて断念。金属の剛性が足りなかった。固くないと割れちゃうからね。
ま、改良型弾薬を作って補充できる魔法の種類も増えたしなんとかなるよね。
そうそう、補充用具のバージョンアップも行いました。もう簡易ではないかなって程度。簡易じゃあ魔素注入できない魔導具なんかもあるので補充用具はできるだけその時その時の最新世代で作っておきたいですね。
一応今まで使っていた補充用具は予備としてとっておいた。魔素補充できなかったら私は死ぬ。
補助装備も作っておこう。
魔導着の補助としてシールドリング。魔導銃の補助として魔導パチンコを作成。簡素なものだけど普通のオーク位なら完封出来る。
とりあえずダンジョン攻略の道具は揃ったかな。さすがにただの魔法の水筒なんかは購入できたよ。低品質だけど。
「ダンジョン攻略をして住む所や装備の質を上げていこうね! 今からが私たちの物語の始まりだよ!!」
「ニャン!」
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