ブラック企業をクビになった俺、ヤンデレ配信者たちにつきまとわれる〜ダンジョン配信がバズった途端、Sランクの美少女配信者たちが俺を束縛してこようとするんだけど、どうすればいいですか?

水間ノボル🐳@書籍化決定!

第1話 ブラック企業をクビ

「はあ……もう11時か」


俺は会社で、必死にキーボードを打っていた。

今日も終電に間に合わないな……


俺はSEだ。

就活に失敗した俺は、ブラックなIT企業に入社した。

大学卒業から2年間、毎日のようにデスマーチの連続で、死にそうになりながら働いている。

超激務の割に、給料は安い。

ああ……辞めたいぜ。


「おい。蔵田。まだ終わらないのか」


上司の佐藤がイライラしながら声をかけてきた。


「お前は仕事が遅いんだよ」

「すみません……」


佐藤が無茶な納期の案件を受注したから、こんなに残業が続いているんだ。

てめえのせいだろうが!

……と、俺は心の中で毒づく。


佐藤は上や発注元には媚びるが、部下にはパワハラをする典型的なクソ上司だ。

今まで、何人もの社員を潰している。


「……蔵田。仕事中に何を見てるんだ?」

「え。これは……」


連日残業が続いていた俺は、間違って何かをクリックしたらしい。

パソコンの画面に映っていたのは、ダンジョン探索者の配信動画だ。


今から10年前、世界各地に「ダンジョン」と呼ばれる巨大な迷宮が出現した。

ダンジョンから採れる貴重な鉱物は、かなり高額で取引されている。

一攫千金を目指してダンジョンに潜る者を、人々は「探索者」と呼んだ。

政府は、「ギルド」という探索者の管理団体を設立した。


最近、安月給の日本企業が嫌になった若者たちが、探索者に転職している。

そんな探索者たちが、ダンジョンの攻略動画を配信するのが流行っていた。


「蔵田。探索者になりたいのか?」

「いえ、別に……」

「ははは。だよな。お前みたいな仕事もロクにできないクズには無理だ」

「はは。そうっすね……」


ムカつくが、俺は我慢する。

佐藤の機嫌を損ねると、何日もグチグチ嫌味を言われるからな。


「そういえば、蔵田の妹さんは探索者だったな」

「はあ」


俺の妹——蔵田奏(くらたかなで)は、今年大学を卒業して、探索者になった。


「きっと蔵田の妹だから、ダンジョンですぐ死にそうだな。ははは」

「……なんだと?」


俺のことはいくらバカにしてもいい。

だが、愛する妹のことを悪く言うのは聞き捨てならない。


「は?」

「奏は優秀な探索者だ。稼ぎは俺やお前より多い。奏をバカにするのは許せない」

「俺は上司だぞ?そんな口聞いていいのか?」

「うるせえ!こんな会社、辞めてやる!」


ポカンとした顔で、佐藤は俺を見ていた。


「じゃあな!今日こそ俺は終電で帰ってやる!」


俺は自分の鞄を引っつかんで、衝動的に会社を飛び出した。


……ヤべえ。やってしまった。

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