第8.5話 秘密の会話

「久しぶり~

しゅう……」

 第一ゲーム終了後、めぐるとリツが広場で合流すると、それぞれの相棒・レイと奈ノ禍は顔を合わせるなり、不穏な空気をかもし出した。奈ノ禍の口元はニコリとしているが、目が笑っていない。レイは眉間にシワを寄せ、何か言いたそうな顔で奈ノ禍をじっと見つめる。


 少ししてレイは自身の能力で、転移機能付きの透明なワイヤレスイヤホン型テレパシー装置を二つ、こっそり作り出した。


『──まさか貴様が、旋の妹の相棒だったとはな』


『うわ! 無言であーしの耳に変なの突っ込まないでよ!』


『イヤホン型テレパシー装置だ。貴様に話がある』


 レイは自分と奈ノ禍の耳へ、イヤホンを転移させると、心の中で話し出す。もちろん、レイと奈ノ禍の声は、旋とリツには聞こえていない。


『わざわざ能力でそんなの作ってまであーしになんの用? まぁ大体、察しはつくケド』


『旋には話していないだろうな?』


『やっぱその話ね。……あーしはれいれいが旋っちのコト、今も納得してないケド、頼まれた以上はバラしたりしないから安心して』


『ならばい。……絶対に言うでないぞ』


『だから分かってるって! それにしても、旋っちのコト、今は“旋”って呼んでるんだね。相棒になったから?』


『そこはどうでもいいだろう……』


『まぁそうなんダケドね。ただ、あの頃は旋っちのコト、“相棒の友達”や“友達の相棒”くらいにしか思ってなかったっぽいし? それなのに、相棒になった途端、めっちゃ距離つめてるじゃんと思ってさ』


『……やはり駄目だったか?』


『へ……いやいや、別にダメじゃないよ?』


 明らかに落ち込んでいるレイの声を聞き、奈ノ禍は慌てて否定する。


『我はその辺の加減がよく分からぬゆえ……』


『だからダメじゃないってば! も〜……れいれいと話してると調子狂うなぁ……』


 奈ノ禍は心の中で、深いため息をついた後、話を戻す。


『れいれいはさ……旋っちがの大切なヒトだから、旋っちを守りたいんだよね? 記憶を奪ったのも、旋っちの心を守るためであり、善意でやったコト。その解釈で合ってる?』


『あぁ……それに今は旋自身も大切な存在になりつつある。ゆえに尚の事、の記憶を旋に返す訳にはいかない』


『そっか……正直、あーしからすれば、旋っちのためになってるとは思えないケド、そーゆーコトならちゃんと黙っておく。もう余計な口出しもしない』


『……協力、感謝する』


 ──そこで二人の会話は終わり、レイと奈ノ禍がそれぞれの相棒の方を見ると、心配そうな瞳と目が合う。不安がる相棒を安心させようと、奈ノ禍はリツにニコリと笑いかけ、レイは旋の頭をぎこちなく撫でた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る