第9話 昼と夜の仕事

高校卒業して本格的なモデルになった。

本格的と言っても、まだまだポーズとか自然に出来ない。

読者モデルの時は特集で写真撮影だったし、動きを止めて指を刺したり笑顔を振りまいたりしていた。

仕事としてのモデルになると、現場の空気感も真剣さも全く違ってきた。

アタシは長い髪の毛を活かし、かきあげたり指でくるくるしたり、大きなファンで風を作ってもらい、髪をなびかせた。

ワンカットのページで何枚も写真を撮るから、動きも表情も少しでも変えなければならない。

初めのうちはとても難しくて、

「動き止めないで!」

「表情が硬いよ。そう、柔らかくね」

って、ダメだしが多かった。


家に帰ってすぐさま、姿見の鏡をネットで購入。届いたその日から小物を使ってポーズの練習したり、割り箸を口に挟み表情筋を柔らかくした。


リンパマッサージも欠かせない。


疲れた時はゆっくりバスタイム。

髪の毛がトゥルントゥルンになるように、優しく丁寧にサロン専用シャンプーで洗い、

「キレイになーれ」

の呪文を唱えながらトリートメントをした。


モデルだけの仕事では、売れるまでお給料が少ない。

アタシは事務所に内緒でキャバ嬢の道に入った。

お店のママも先輩キャバ嬢たちも、誰もアタシを男の子だとは思っていなかった。

源氏名は『ニイナ』。洋服類は全てレンタルした。

最初は先輩キャバ嬢の柚希さんから、ボトルの種類や、それぞれのグラスの種類、お客様におしぼりを手渡す時のやり方を教えてもらった。

柚希さんはとても優しかった。顔も可愛いし、癒し系だろうなと思った。

仕草も柚希さんをじっくり観察していると、とても勉強になる。

難しかったのは先輩キャバ嬢のフォローに入った時、お客様との間になかなか話が入れなくって、ただ笑顔でいるしかなかった。焦り過ぎて名刺を渡すタイミングが悪かったり、

「ライン交換いいですか?」

って言ったら

「まだ早すぎるだろ!チェンジだ!チェンジ!」

って、お客様から言われてしまった。

昼の仕事も難しいけど、夜の仕事はもっと難しいと思った。

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