第6話 狙い

「鬼って、何でもありなんですね」

「なんでそんなに冷静なんじゃ。ここまで冷静にならんでも良いのじゃぞ、もっと慌ててくれ」

「それで、時空を歪ませてまで俺をここに呼んだ理由は何ですか」

「…………イジワルじゃ……。むぅ、今回の事件を解決する手伝いをしてほしいからじゃよ」


 今回の事件って、あの武士達の事か?


「ハンさんなら一人で解決できそうな気がするんですけど、駄目なんですか?」

「最初に説明したと思うが、童はこの世界に関与できん。何かをすれば、童はこの世界に存在する事が出来んくなるのじゃよ。罪を犯したからな、罰が与えられておる状態じゃ」

「何をしたんですか。というか、貴方に罰を与えられる人って誰なんですか?」

「今は関係ないのぉ。そんな事より、今回の事件は簡単に解決できる物ではない、主に手伝いを仰ぎたいのじゃよ。これからも協力してくれるじゃろ?」

「もし断ったら?」

「このままこの世界で一人、過ごしてもらう。死ぬことも出来ず、永遠の時を一人で過ごしてもらうぞ」

「選択肢ないじゃないですか」

「そうじゃな」


 笑うな、なんなんだよ、まったく。


「今回、あの男達が企んでいるのはなんですか。それもわかっているのでしょうか?」

「わかっておるよ。あの者達が今行おうとしているのは、この世界の制圧じゃ」


 世界の制圧? どういうことだ。


「今回動いておるのは、何もあの二人だけではない。もっと複数の人間が動いておる。じゃが、童の動きは制限され、夜に活動している者しか見つける事が出来んかったんじゃ。目的もやり口もわかっておるのに、何も出来んのはさすがに苦しいのじゃよ」

「つまり、貴方はこの世界が好きという事でしょうか。だから、守りたいという事でしょうか」

「世界に対しては不満が無いからのぉ」

「世界に対しては?」


 世界に不満がないという事は、他の所にはあるという事か? さっきは教えてもらえなかったけど、罰を与えられている立場なんだよね。

 ハンさんほど妖しくて、なんでもありの鬼に罰を与えられる者って、相当上の者なんじゃないの? それこそ、神様とか。


 もし、神様なんだとしたら、この世界を作っているのはその神で、でもその神が作っている世界は好きで…………あれ??


「勝手に物事を進めようとするでない。話すから、今すぐその意味の分からない思考はやめるのじゃ」

「お願いします」


 良かった、教えてもらえる。


「童に罰を与えたものは、主の予想通り神じゃよ」

「なんか、胡散臭いですね」

「予想していたと思えない奴の言葉じゃのぉ」

「続きをどうぞ」

「はらわたが煮えくりそうじゃ」


 え、怒らせてしまったのか? やばっ。


「怒っとらんよ、言ってみただけじゃ。そもそも、童は怒りという感情を持っておらん。説明を続けるぞ」

「え? あ、はい」

「童は上位の妖……ともまた違うが。こう見えても、童は何千の時を生きておる。じゃが、そんな童でも逆らえん奴がおるんじゃよ、それが世界を司る神と時を司る神の二人。今回童に罰を与えたのは、時の神じゃ」


 二人も神がいるのか。神って、一人じゃないの?


「神は三体じゃよ。一人は世界の神、一人は、時の神。一人は、妖の神じゃ」

「妖の神?」

「この世界におる、人ならざる者達を制圧している者を言う」

「そんな神がいるのですか?」

「いるから今説明しておるんじゃがのぉ」

「すいません」

「話を進めるぞ。その神の中で、童は時の神に目を付けられてのぉ。今まで持っていた力の半分以上取られてしまったんじゃよ。じゃから、今の童は元の童と比べると月とすっぽんじゃ。この世界に関与も出来なくなってしまった」


 ため息をき、ハンさんは頭を掻く。


「それと、今回の件になにか関係性が?」


 力を取られた、武士達の行動を監視。どこに共通点、関係性があるのだろうか。


「関係しているのじゃよ。言ったじゃろ? 武士達の今回の狙いは、この世界の制圧じゃ。それで、童共がおるここには、世界の神が存在する」

「っ、もしかして。その、世界の神を自分の物にとか、考えているということですか?」

「そうじゃよ。そうなれば、童にも影響がある可能性がある。動くしかないのじゃよ」

「へぇ」

「なんじゃ?」

「いえ、なんか。最もらしい言い分なんですが、なんとなく腑に落ちないというか……」


 なんか、今の説明には何かが足りない気がする。なんだろう、わかんない。


「その違和感は大事じゃよ。じゃが、今はその違和感を胸に秘め、世界の神を救う事に尽力するぞ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る