第9.5話 アイドル 赫月 舞姫の場合

第9.5話


「今、『何でもする』って言ったよね?」


あの時、つい私はこんな事を言ってしまった。


最初はドジで変な男の子だと思ってた。


めっちゃ噛むし、めっちゃ吃るし、めっちゃ無茶だし………


マジで私の事知らないとか何なの!?


でも………


「強かったなぁ………」


初めてとは思えない戦いっぷりだった。


初日からあのトカゲ達と戦える人なんて見た事が無い。


まぁ、一番驚いたのは性格が豹変した事だ。


どっちが素なのだろうか?


もしかしたら、スキルのせいなのかも………


私もよく言われる自覚は無いのだが、スキルを使って炎を吸収すると、性格が色々と豹変してるらしいのだ。


個人的にはキョドってる方は可愛いし、マトモな時の方は普通に格好良かった。


そして、何より………


「あの炎、めっちゃ良かった………」


そう、あの男の子の炎は滅茶苦茶良かった。


昇天するかと思ったし、めっちゃ隠していたが、少し濡らしてしまった。


バレてないと思う、というかバレてないと思いたい。


あの炎の事を思い出すと………


「ハァハァ、欲しい。欲しいよぉ………」


あの炎が恋しくて、切なくなってしまう。


────独占したい。


────私の物にしたい。


────彼は、彼の炎は私だけの物だ。


「駄目、駄目よ私………」


私はアイドル。


最近は自由恋愛がトレンドだけど、なるべく避けなければならない職種なのよ。


でも、それが理由で彼が、彼の炎が取られたら………


「死ぬわね、私………」


何故かさらっとそう思ってしまった。


かなり、強い確信と共に………


「消して良かったな、あの番号………」


彼と連絡先を交換する時に携帯を渡して貰った時、変な番号を見つけた。


彼の親と妹らしき番号はまだ良い。


『貴方の素敵な幼馴染♡』という無性に腹が立つ名前の番号が在った。


嫌な予感もしたし、何か存在が許せなかったので無断で消しておいた。


まぁ、彼なら許してくれるだろう。


「えへへ、これで彼の番号を知ってるのは私だけだ〜♪」


うん、これで良い。


「明日、彼を呼んでまた炎を貰おうっと♪」


明日、早く来ないかなぁ………


続く

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陰キャな俺は変わる為にダンジョンへ クロスディアⅡ @crossdia

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