第3話

自宅に到着した青藍は早速に荷造りを始めた。

完成した荷物を試しに背負って見たものの、わずかな服と数枚の小銭しか持ち物が無いので、まるで近所に買い物に行くかのような格好だ。

しかし、その面持ちはこれから運命の旅に出る少女そのものだった。


出発は明日の早朝。


夜明けと共に村を出る。


山を越えて、列車に乗った先が帝都だ。

列車に乗るまでは全て徒歩となるだろう。

駅まで四時間は見ておくことにした。


明日に備えて早めに布団に入る。

自分の体温で布団がじっくりと温まっていくのを感じた。

背中からは木の床のでこぼことした感じが伝わってくる。

この布団も村長によると、青藍が生まれた時から使っているものだ。

(この布団のおかげで私は十五回の冬を乗り越えられたんだ...)

幼い頃はこの薄くてぼろぼろな布団がきらいだった。

自分の貧相さを見せつけられているようで。

しかし、今はこの布団への感謝の気持ちしかない。

(ありがとう)

そんなことを考えながら青藍はこの家での最後の眠りに落ちていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る