第5話

☆☆☆


トオコは元々人気者で、少し自慢話しをしていたって気にならなかった。



それなのに今はどうしてこんなにイライラしているんだろう。



自宅に戻ったセイコは大きな足音を立てながら階段を上がり、自室に入ってすぐに悪口ノートを取り出した。



最近はなぜかイライラすることが増えてきていて、ノートはもうほとんど残っていない。



マジックを掴むと乱暴に文字を書きなぐる。



最初の頃は『ブズ』とか『バカ』と言った悪口だったけれど、今では1ページいっぱいに『死ね』と書いたりしている。



それがあまり良くないことだとわかっているのにやめられない。



散々ノートに悪口を書きなぐって、1ページが真っ黒に塗りつぶされたころ、セイコは鞄の中から人間接着剤を取り出した。



これがあれば自分はどこまでも友人を増やすことができる。



トオコよりもっともっと人気ものになることができる。



接着剤の量は少ないけれど、まだ1回しか使っていないし、なくなればまた買えばいい。



そう決めると心がスッと軽くなっていくのを感じた。



いつの間にかトオコへの憧れは妬みや執着へと変化していて、セイコはそれに気がつくこともなかったのだった。

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