バレンタイン・ハッピーシュガー

紫蘇くらげ

今日はバレンタイン♡

2月はとてもとてもあまーいバレンタインの季節!

家族でチョコを渡しあったり、恋人同士でチョコを渡しあったり────。


「好きです!付き合ってください!」


「もちろん、僕なんかで良ければ……!」


というようにその日で実る恋ももちろんあるんだ。

だからこのぼく。バレンタインの妖精、キューピッタがみんなの恋を応援してる!


今日も今日とて一人の乙女が勇気をだしてチョコを……


「よし、この日の為にチョコの作り方とか一生懸命学んできたんだ!絶対に失敗出来ないぞ〜」


「まずはレンジで溶かしてから鍋で──」


と失敗をしては挑戦し、失敗をしては調整して。

を繰り返し黒髪ロングの主人公、キシザキアカノがチョコレート作りに挑戦する!


彼女が好きな男子はフナザキナバナという男子。その男子にとびっきり美味しいチョコを作ってイチコロ♡という訳だ。


鍋でチョコを溶かし、なんやかんやで冷蔵庫で冷やし完成し味見をしてみる


「うん、いい感じ!これでナバナ君に出せる!」


甘みと苦味の調和が取れていてとてもいい味。これだったらナバナ君に出せると私は確信した。明日の学校が楽しみ、と期待を募らせて私は眠りにつく


***

〈家〉


目覚ましかけるの忘れていてアカノは寝坊。お母さんは仕事が早い為起こしてくれない。だから自分で起きるために目覚ましを掛けていたはずなのに──


「あー!!!!午後!!」


「やばい!このままだったら遅刻だ……!チョコは持ったっけ……?うん!あるある」


とりあえずカバンにチョコがある事を確認して学校へと走っていく。もちろんパンも咥えてる。何かと話題の「いっけなーい遅刻遅刻系女子」のテンプレートの完成だー。


〈学校にて〉


「よっし!間に合ったー!」


授業が始まる直前に来た為クラスのみんなが私を見つめてきて恥ずかしい。まあ、遅れた私が悪いよね。


「あは、あはは……」


先生はとりあえず席に座れと。やがてクラスのみんなの視線は和らいでいき、私の事とかどうでもいいように授業は始まる。


授業が始まって何分か経った頃隣の席のアケミがバレンタインについて質問してくる。


「アカノ〜今日のバレンタイン誰に渡すのー?(ワクワク)」


「うーん内緒!」


「ちぇーっ」


授業が終わりそんなこんなで休み時間。渡すチャンスだ……!と思うながらも恥じらう気持ちもある。それでも勇気をだして────。


「うん。ここで止まってちゃ、いつまで経っても成長しない」


と心を決めて彼に「あ、あの」と声をかける。彼は振り返って私に心優しく「アカノちゃんじゃないか。どうしたの?」と言葉を返す。


その笑顔は優しくて、王子様で──ダメダメ。見とれてる場合じゃない。


「あの──良かったらチョコを──」


「あぁ、チョコ。」


ナバナは彼女からチョコを受け取った瞬間────。



「僕、彼女がいるんだ。こんな不味そうなチョコ、口にするだけでも嫌だ」


「じゃあね」


アカノはしばらく放心して一生懸命作ったチョコが踏みにじられた事が受け入れられなかった。しかし受け入れなければならない。


涙をこらえて教室に戻る。彼はとても紳士的で──最初に会った時から優しくしてくれたはずなのに。


なのにどうして──!


心が崩れそうだった。彼の理想が崩れたからでは無い。私の努力が踏みにじられたからでは無い。


私の理想の彼は最初からどこにもいなかったのだ。


私が勝手に理想を作り上げて、"そうあれ"と願ってるだけ。


自分で勝手に期待して勝手に失望してるんだ。私は。


その後も心が暗いままで授業に出たが頭が回らず何度も怒鳴られ、心が折れて帰路につく。


「……」


私が黙り込んでいると目の前に変な妖精っぽい何かが私に声をかけてくる。


「やぁ!僕はキューピッタ!何かお困り事かな!?」


私はその妖精の事も気にとめずにさっさと早歩きで帰っていく。あまりにも怪しすぎるから。


「んもー。一生懸命作ったチョコを踏みにじられて悲しい気持ちは分かるけど人の話は聞かなきゃ。あ、ボク妖精だった」


「で、何か用?」


「まーまーそんな冷たくしないで!ボクがとびっきり美味しいチョコを持ってくるから明日再チャレンジしようよ!」


「でも……ナバナ君は……」


「大丈夫!ボクがなんとかするから!」


もう一度チャンスがあるなら──と思い私はそれにかける。まだ未練もあるのは何でだろう──。やっぱあんな事をされても好きな人は好きな人なんだなって。


***


寝て起きてまた学校。今日は何故か普通の時間に起きた。嫌な予感がする時はいつも普通の時間に起きる。何故だろうな。


「えーアケミさんは今日お休みです。連絡事項は伝えたので授業を始めましょう」


アケミはあまり休まないのに今日は休みだ。何かあったのだろうか。休み時間に先生に聞いてみても何も答えてくれない。とりあえず"休み"という事実を受け入れるしかないということ。


そして私はキューピッタに貰った謎のチョコを片手にナバナ君の元へと向かう。


ナバナ君は元気が無さそうだった。生きる気力も何もかも失っているかのよう────。


「ナバナ君、どうしたの?」


「──あんたか。昨日の事があってもめげないとはね。クソ度胸だよほんと」


「こんな大勢の前では話せない。ちょっと着いてきてくれ」


私はナバナ君に言われるとおり、学校で誰も来ないような空き部屋に移動した。彼は移動してる途中も早歩きでとても悔しい顔で、とても悲しい顔で足を進めていた。


***


〈空き部屋にて〉


「やっぱあの事件は知らないか」


「何のこと……?」


「俺の彼女が死んだんだよ……!目の前でトラックに轢かれてさぁ!そんで轢かれた後──」


彼はアカノの後ろから少し見えたチョコレートを見た瞬間発狂しだしてやがて失神した。


「よし!チャンスだ!ナバナ君にチョコレートを食べさせてあげよう!そしたらまた復活するはず!」


私はチョコを少しづつ彼の口に入れ、やがて彼は復活して「アナタノコトガダイスキ」とロボットの様にずっと言い続けていて不気味に感じた。


「ねぇ、今食べさせたこのチョコは──」


「あぁ、そのチョコにした人間の名前はアケミだったっかな?うん!そうだった!」


「君の友達のアケミって人間はナバナ君の彼女!ボクがバスの運転手を洗脳して事故を起こした後チョコにしたんだ」


「だからさっきのチョコはアケミちゃんそのもの」


「このチョコをナバナ君が食べたことによってアケミちゃんの存在が無くなってナバナ君が君の事を好きになったんだよ」


ナイフがあれば、私はこの悪魔を殺していただろう。それぐらいの憎悪に苛まれていた。


「憎んだっていいけどこれは君が望んだ事でしょ?ちゃんとナバナ君が君に惚れたじゃないか」


それはそうだけど……こんなにする必要は────


「無い……って?」


「ははは!ウケる!」


私はなけなしの力で机を持ってキューピッタの顔面に投げてみる。これで死んだはず────


「無駄無駄!ボクは死なないよ!」


「僕を消したければ君がこの世界からいなくなれって願ったらボクは消えるけどね」


「この世界からいなくなれ」


「やばいやばい!ほんとに言っちゃったよ……。消えちゃう」


「まあ、また会えるかもね」


そう言い終えるとその生物は消え去っていった。やっとせいせいした。でも心残りはある……けど


ナバナ君が私を愛してくれるならそれで幸せ──


***


「はっ!なんだ……夢かぁ」


「こんな悪夢絶対体験したくないよね……ほんと」


悪夢から覚めて彼女は着替えて部屋を出ようとする……が


「やあ。また会ったね。」




















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