第6話 始まりの悪夢

 あの屋敷から離れて数か月、特に何も変化のないままの月日が流れ、年も超え、生暖かい4月になった。


 奈菜は今日、家政婦の仕事が休みなため、1人でお散歩をしながら屋敷の出た時のことを思い返した。


 あの屋敷から帰った次の日、尚子が連絡してお寺でお祓いをすませた。そして給料も含まれたあと、数日の休みを頂いた。


 その間でも、心配をした尚子が時々奈菜の様子を見てきてくれたしてくれた。


 何回か屋敷のことを覚えているかを聞こうと思ったが、変に思われるかも知れないと思い、言うのはやめた。


 あんなことがあって辞めたいという気持ちもありが、母の病院代を稼がないといけないのと、せっかく誘ってくれた尚子にも恩があるため辞められなかった。


 そして、あの出来事を口にする事が出来なかったのだ。


(今事勇さん、どうしているのかな)


 奈菜は微笑んでいる勇を思い出した。あの時、昔の性格にはとてもドン引きをしたが、最後に自分の犠牲にして守ってくれたことにはとても感謝をしている。


 奈菜はそんなことを思っていると、スマホが鳴り出した。


 見てみると、泉からだった。


「はい。もしもし、どうしましたか?」

「あー、奈菜ちゃん。なんか勇様からあなたに話したいことがあるって言うから今から言う電話番号を言うから、掛けてくれるかしら」


 声のトーンと様子からして、泉は屋敷のことを忘れたのだろうと思った。


「はい、わかりました。それではお願いします」


 奈菜は泉から番号を聞き出すと、一声掛けて電話を切った。


 奈菜は電話を切ると、すぐに聞いた電話番語を押して耳に宛てた。


 呼び鈴の音が一回だけなるとすぐに声が聞こえた。


「もしもし」

「あぁ、はぁ、はぁ、奈、菜さん?」

 

 電話の方から今にでも死にそうな声を出している勇の声を聞いた奈菜はあまりの声の変わり方と息遣いに驚いてしまった。


「ちょっ! どうしたんですか勇さん。声が、それになんか、息遣いが荒いですけど」

「奈菜さん、すぐに伝えなければならないんだ」

「はい、何でしょうか」

「すまないが、は、あいつは奈菜さんのことを諦めていなかった」


 勇のと言う言葉に、誰なのかはハッキリとわかった。


「あいつって、あの男ですか? ってどうゆう事ですか?」


 奈菜は勇の話に頭が付いてこず、思わず問いただした。


「あいつらは、あの時その気にさせて、本当は君のことが諦めなかったんだ。だから、数か月は間を開かせて、それで、それで」


 勇の生きの荒さが徐々に増していく。


「いきなり今日あいつが朝に気て、君との契約は終わりだ。これから奈菜さんの所に行くって言い出して」


 奈菜の心臓の鼓動が高くなる。


「すまない、本当に。もぉ時期君の所にあいつが来る。本当だ。だから」


 ブツッと電話が切れる音が聞こえた。


 奈菜はスマホを耳から離すことが出来ない。気付けば自分の体が震えていることにも気が付いたのと、呼吸が荒くなっている。


(もう時期って、まさか、まさか)
 


 体を震わせていると、何かが奈菜の足を触った。ゆっくりと下を見た。


「ッ!」


 地面にはあの黒い奴が奈菜を大きい目で見つけめている。


(まさか、こいつが居るのって)


 その時、誰かが奈菜の肩を優しく置いた。


 奈菜はゆっくりと振り返った。そこには、大きいつばの広い帽子に黒い服をまとったあの男がいた。


「やぁ、奈菜さん。久し振りだね」


 男の姿を見た奈菜は、思わず情けない声を出してしまった。


「あっ、あぁ」

「安心しろ。君に乗り移っているのはあいつの恨みの塊じゃない。ただの俺の仲間だ。それに、こいつらもお前のことを気に入っている」


 奈菜は今にでも叫びそうだったが、男は奈菜の頬を両手で包み込むように触ると自分の口元まで寄せた。


「さぁ、今日から君は、僕達の物だ」


 その言葉と同時に、この死神のようで悪魔のような怪物から逃げられないと奈菜は悟ったのだった。




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屋敷の謎 羊丸 @hitsuji29

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