第4話 黒いあいつ

 奈菜はあの怖い夢も見ないまま、優雅な気持ちで目を覚ました。


 ほんの薄暗いが、徐々に朝になるだろうと思いながら身支度をした。丁度6時になるといつも通り執事が朝食を部屋に置き、去って行った。


 奈菜は寒さを感じながらも、椅子に座って朝食を食べた。


 暖かいスープがあり、奈菜は息を吹き掛けながらちびちび飲んでいった。徐々に体も温まり、目も冴えてきた。


 軽くストレッチをし、7時近くになったら勇が呼び鈴を鳴らすだろうと思いながら待った。


 案の定、7時近くになったら呼び鈴が鳴った。奈菜は駆け足で書斎の方に向かった。


 扉を叩き、声が聞こえると中に入った。勇は動きやすそうな格好で紅茶を飲みながら立っていた。


「おはよう。奈菜さん」

「おはようございます」

「どうだい? 昨日は変な音がしたかい?」

「いえ、何も聞こえませんでしたが、一様見ますか?」

「あぁ、是非ともそうしよう」


 勇は横に立つと、奈菜はカメラを起動した。昨日の録画を一緒に見ていたが、何も変な音や怪しいのは映っていなかった。


「変なのも写っていませんし、おまけに聞いた音も聞こえませんね」


 奈菜は動画を見て一言言うと、勇も「そうだね」と言った。


「まぁ変なのが映っていなくて良かったね」

「はい、カメラありがとうございます」


 奈菜はカメラを勇に返した。


「いえいえ、どういたしまして。さて、今日の朝のお仕事はお花にお水と周りにある枯葉を掃除をして燃やすことと、家を掃除すること、あとは洗濯だけかな? それでまた次の指示がくるまで何処でも回っていなさい」

「はい、わかりました。それでは失礼します」


 奈菜は頭を下げて書斎を出ていき、そのまま外に向かった。心の中では今日も3階の五つ目の部屋に行こうと考えた。


 外に出ると、寒いのが頬を触り、思わず身震いをした。駆け足で倉庫に向かい、チリと箒を取り出し、落ちている枯葉を箒で拾い集めた。箒を振りながら鉄の玄関を見上げた。


 烏はいない。静かな風景があった。


 思わず安堵のため息が出た。寒さに思わず手に息を吹き掛け、掃除を続けた。全ての枯葉をかき集め、ちりに貯め、焼却炉に向かった。


 枯葉を焼却炉の中に入れ、勇から預かったマッチに火を付けて中に入れた。蓋を閉め、倉庫の中に掃除道具を入れた。屋敷の中に戻り、マッチを勇に返してから二つ目の仕事に取り掛かった。


 洗濯機のある場所に向かい、籠の中に入っている服を洗濯機の中に入れ、洗剤を入れて電源を入れた。


 そのまま屋敷内にある掃除道具置き場の部屋にある雑巾と掃除機、バケツを水に組んでから掃除を始めた。


 1階の掃除を終え、最初に水の入ったバケツを2階に置き、次に掃除機を持っていった。

 

 掃除機で廊下のゴミを吸い取っていながら尚子のことを考えた。


(昨日電話したけど、大丈夫かな? 仕事あったら迷惑かけちゃったな)


 奈菜はそんなことを思いながら廊下を掃除していた。


 掃除を終え、洗濯機の置き場所に行き、籠の中に入っている服を入れ、洗剤を入れた。


 洗濯機が終えるまで、奈菜は昨日見つけた鍵をポケットにしまい、駆け足で3階に向かった。


 五つ目の部屋の前に止まり、息を吐いて部屋の中に入った。


 何もなく、ただ小さめのは梯子だけがあった。奈菜は天井を見上げ、何か線の様な物でもないかと思っていると、右奥に天井に繋がる扉があった。


 奈菜は梯子を置き、上って倒れないようにしながら鍵を差し込んで回した。カチッと音がなり、奈菜はポケットに鍵を入れ、扉をゆっくり開けた。天井に繋がる階段を支え、小さめの梯子をどかしながらゆっくりと天井の階段を降ろしていった。


 登って行くたびに木がきしむ音がしてくる。天井の中を覗くと、数個の箱と布に掛けられた何か、小さめな窓だけだった。酷いホコリの匂いに奈菜は持っていたハンカチで口元を押さえた。


 ホコリと砂まみれになった段ボールを手ではらい、蓋を開けた。見てみると、なかにはいっているのは古びた玩具、見たこともない玩具と小さい頃に見た懐かしいのが入っていた。


 もう一つの箱を見てみると、ファイルが入っていた。昔に関係する資料だと思い、後で見ようと箱を開けたままにした。三つ目の箱の中を見てみると、今には昔の本が入っていた。


(ほぁ、これは凄いな)


 奈菜は本を手に取り、中身を見てみるとパラりと何かが落ちた。


 拾ってみてみると、紙にはソファの隣に矢印、ソファの端の隣にも同じく矢印、最後には紙の形が書かれていた。


(まさか、これかしら?)


 奈菜は白い布に被せられている物に目をやった。奈菜は紙を見ながら白い布をどかした。予想通り布の下にはソファがあった。奈菜は右端のソファに触ると簡単に外せられるようになっているの。剥がしてみると、そこにはメモリーカードがセロハンテープで貼っていた。


(このサイズ、勇さんのカメラでも見れるんじゃないかしら?)


 そんなことを思いながらも、すでに洗濯機が終わっている頃だと思った奈菜は、フォイルの入った箱の蓋を閉め、ポケットにメモリーカードを入れ、白い布をソファに掛けた。


 階段を降り、天井の扉を閉め、そのまま駆け足で1階の三つ目にある洗濯機の方に向かった。


 部屋に入ると予想通り終わっており、奈菜は籠の中に濡れた服を詰め、ハンガーを入れて抱えて外に出た。


 冷たい服に触れながら一枚ずつハンガーに掛けて言った。全部掛け終わり、籠を抱えて屋敷の中に入って行った。


 仕事を終え、部屋に戻った奈菜は最初あのメモリーカードを見ようと考えたが、流石にお仕事中には失礼だと思い、いうのは夜にしようと考えながら最初は執事から借りた本にしようと思った。


 20××年 7月20日 

 また家政婦が死んだ。あの悪魔のせいだ。あの悪魔がまた家政婦の命を奪っていった。命を奪っているのはあいつだとしても、私も共犯だ。私だって執事やキャバ嬢やシャフを自殺に追い込んでしまった。つまり殺人と同じだ。私の落ち着く時間はこのように日記をしていることと街の中を散歩することと、カフェでお茶をすることだ。今は早く死にたい、あんな儀式をやるんではなかった。


 奈菜は次のページを開くと、チャイムの音が鳴った。


 奈菜は本を閉じ、駆け足で玄関に向かった。


 向かっていると、勇の声が聞こえてきた。


「奈菜さんかい?」

「はい‼ 郵便かと思うのででていきます」

「ありがとう」


 奈菜は下駄箱からいつものようにハンコとインクを取り出し、外を見てみると鉄の玄関の前に荷物を持った宅配便の男がいた。


 食材だと思い、奈菜は微笑みながら扉を開けた。


「お疲れ様です」


 奈菜はサインにハンコを押すと、宅配便の男が話しかけた。


「あの、ここに住んでいる方ですか?」

「いえ、私は2週間だけ雇われている家政婦です」


 奈菜はそう言うと、男は険しい顔で言った。


「じゃあ、早くここから出ていったほうが良いですよ」

「えっ?」


 あまりのことに唖然としていると、宅配便の男は耳元に顔を近づけた。


「ここは危険です。良いですか? 忠告しましたからね」

「あの、危険って」

「失礼します」


 宅配便の男は帽子を深く被ると、駆け足で去って行った。


「どういうこと?」


 奈菜は去って行く男の背中を見ながら首を傾げた。


 屋敷の中に入り、ハンコとインクを下駄箱の中にしまった。


 奈菜は勇の扉を叩き、声を掛けながら書斎の中に入った。


「勇さん宛てのお届け物です」

「おー。そうか。ありがとう。机の上に置いてくれ」

「はい、わかりました」


 奈菜は箱を机の上に置き、「失礼しました」と書斎を出ていった。

 


(あの女の人、大丈夫かな?)


 宅配便で働いている渕蒼汰はトラックを運転しながら心の中で思った。


 蒼汰は大学を卒業して以降、何年も宅配便の仕事を続けていた。夜にも運転するため、見えてはいけないものが見えてしまう。


 こう見えても蒼汰は霊感は強い方だと自分ではそう思っている。会社でも、この世に居ないものと挨拶をして同僚に気味が悪いと言ってくるほどだった。


 気よ付けていたほどだったが、他のよりもあの屋敷は格別だ。よくわからないものがうじゃうじゃ屋敷全体を絡んでいる。むしろよくわからない黒い塊だ。


(あんな所に長くいたらきっと何か合うに違いない。あんな忠告じゃあ、きっとわからないはずだ。明日休みだし、自分の車でまたあの屋敷に行こう。私服だと怪しまれるかもしれないから、仕事の服で)


 蒼汰はそんなことを思いながら前の車が止まりそうに見えたのでブレーキを踏んだが、一向に止まる気配はなく、ただスピードが上がってくる。


(はぁ? なんで止まんねぇんだよ)


 そんなことを思いながらもスピードは止まらない。前の車に当たりそうなため、蒼汰は横にハンドルを切った。


 ハンドルを切ると目の前に大きい電柱に激しくぶつかって止まった。


 あまりの衝撃に蒼汰は息を詰まらせた。


「おい! 車が電柱にぶつかったぞ!」

「早く救急車を呼べ!」


 誰だが分からない騒ぐ声を聞きながら、蒼汰は意識を手放した。



 部屋に行こうと思ったが、3階で見ていないところがあるような感じがし、3階に向かった。


 普通なら拒むだが、奈菜はこんな不思議なことを体験したことがないことと好奇心で拒むことより、解決したいと言う事が心の中で騒いでいた。


 奈菜はもう一回、五つ目のお部屋に向かおうとすると。


「あれ?」


 四つ目の扉の横にある壺の上に置手紙のような物が一枚置かれていた。奈菜は手に取り、それを読んだ。


 “この壺の下にあるよ”


 何があるんだろうかと思いながら壺をゆっくり退かすと下には一つの古びた鍵があった。


 奈菜は手に取り、そのカギを眺めた。


(まさか、五つ目の部屋のカギとは言わないわよね)


 そう思いながら奈菜はドアの鍵穴に差し込んでみると、ぴったりとはまった。


「うそっ」


 奈菜は思わず声を漏らした後、鍵を回した。かちゃと空いた音を聞き、息を整えて扉を開けた。


(うっ、酷い匂い)


 ホコリの匂いに奈菜は思わずポケットの中に入れていたハンカチを口に押えた。ヒビが入っている壺、枯れた花、机にランドセル、子供が書いたような絵があった。あちこちには蜘蛛の巣があった。


「まさかここも掃除していないなんて」


 あまりにも酷い匂いがため、奈菜は窓を開けて空気を吸い込んだ。


(これで少しは楽にはなったけど、ここも掃除したいなぁ)


 奈菜は部屋を見ながらそう思ったが、鍵が掛けられていたためもし執事がここの部屋を掃除したとき真っ先に疑われてしまう。


 奈菜は何かないかなと思いながら壺を眺めた。


 とても古く、高価なものだとすぐに分かる壺だった。今にも壊れてしまいそうな形だ。


 息を吐き、壁に顔を向けた。


 遊んでいる絵、おもちゃで何かをしている絵、滑り台のような物で滑っている絵がいくつか壁に飾られていた。


(勇さんが昔、書いた絵かな?)


 奈菜はハンカチの下で薄く微笑みながら見つめていると、ある違和感を感じた。


「あれ? この紙の色、他の絵の色より少し明るい?」


 奈菜は縄跳びを飛んでいる絵を見ながら他の絵を見比べた。


 絵の感じは同じだが、紙の色が他の絵より明るい。普通なら時間が経てばたつほど紙は茶色になって行くはずがこの絵だけが周りの紙より少しだけ明るめだ。


 よく見てみると、男の子の肌色の下に何かが隠れている。


「うん? まさか何か書かれている?」


 奈菜は目を細めて見たが、ふと時間を見ると12時前になっていた。


(やばい、昼食の時間になる)


 その時に部屋に戻っていなかったら執事は探しに来る。無断で三階にも行っているためバレないように、奈菜は絵を折りたたんでポケットの中に入れ、部屋に鍵を掛け、鍵を壺の下に置くと駆け足で自分の部屋に向かった。


 時計を見ると、まだ12時にはなっていない。


(よかった、間に合った)


 奈菜は一息を付き、部屋に入ってベットの上に寝転んだ。寝返りをうつと、扉が叩かれる音が聞こえた。


 立ち上がり、扉を開けると執事がいつものようにティーカートを横に置いて立っていた。


「昼食です」

「ありがとうございます」


 奈菜は扉を閉めようとしたが、執事は扉を掴み、閉めるのを阻止した。


「えっ。執事さん?」


 奈菜は何故止めるのかと聞こうとすると、執事は笑みを浮かべた言った。


「2冊目の本も……どうですか?」

「あっ、あぁ、とても面白いですよ。でも、なんか悪魔が少し怖いです」


 奈菜は苦笑を浮かべながら言うと、執事は「そうですか」と言って扉を閉めた。


 あんな執事の行動に奈菜は少しだけ恐怖を感じた。


 ティーカートをテーブルの横に置き、銀の蓋を開けた。中にはフワフワのパンケーキと蜂蜜、まだ湯気が立ってい紅茶だった。


 テーブルに置き、奈菜は蜂蜜をパンケーキに掛けた。


 甘いパンケーキを一口ずつ食べながら紅茶を飲み、部屋の全体を見回した。最初来たときはとてもいい部屋だと思っていたが、今では怖さを感じている。


 不可解な音に少し離れた場所にある屋敷に訳が分からない前の家政婦の手紙がわんさか出るなんて明らかに訳アリだ。部長の泉はそんなこと知っていたのだろうか? それとも前の家政婦は黙っていたのかと考えながらパンケーキを食べていた。


 食べ終え、ティーカートを廊下に出し、奈菜はテーブルの上に先ほど見つけたメモリーカードを見つめた。


「……一体何が映っているの?」


 奈菜は語り掛けるように言った。


 そんなことをしても無駄だと思いながらため息を付き、ベットの上に寝転んだ。


(それにしても、なんだろうなさっきの執事の行動。少し、怖かったな。それに前まであんなふうだったけ?)


 シーツを見つめながら奈菜は思った。


 すると奈菜はふと思い出した。


(ちょっと待ってよ、2階は私の部屋以外は確かあまり調べてはいない。それなら2階をしらべよう)


 奈菜は立ち上がり、部屋を出た。


(最初は図書室)


 掃除以外は近づかなかった図書室に向かった。入ると冷たい風が肌を触った。部屋の中なので風は通るはずがないと思っていると。


「あれ? 窓が開いてる?」


 左の窓が全開に開いているのを見つけた奈菜は、掃除し終わったときは閉めたはずと思いながら窓を閉めた。


 きっと執事が本を読むときに換気をするために開けただろうと奈菜は思いながら振り返ると、1冊の本が落ちていた。


(もぉ執事さん、ちゃんと元の場所に戻さないと)


 心の中で執事に文句を言い。本を拾うと何かがするりと落ちた。


「ん? なんだ?」


 奈菜はそれを拾い、見てみた。


 紙には三つの長方形、1番右の下側には赤い文字。


 三つの長方形の上には、漢字の木と1の間にプラスが書かれていた。


(何の意味? でもこの形)


 奈菜は隣にある本棚を見た。


「木と一を足す意味……本。そしてこの三つがタンスかな?」


 奈菜はなるほどと紙を見つめて関心をした。


(でも、なんで一つ目の棚の右端の方に丸が付いてんだろ。まさか、そこに何かあるんじゃ)


 奈菜は右にある本棚に行き、丸が付いている場所に向かった。


 本棚には、自然や田舎に関する本が盛りだくさんだった。子の中かなと思いながら本のタイトルを指で触った。特に変化なしなため、次は1冊ずつ本を出して探った。


 10冊目の本をずらすと、本と本の間に手紙のような物が挟まっているのがわかった。


(あっ、あった!)


 奈菜は手紙を見た。封筒の端には前田花と書かれている。


「これは、前の家政婦さんの名前?」


 奈菜はシールを剥がし、手紙の内容を見た。


 “拝啓、今見ているのは他の家政婦さんか勇さんか分かりませんが、もしこの手紙を見たら忠告します。この屋敷はとても変ですので、速やかに去ってください。何故なのかは今から説明を致します。

 私は泊まり込みの2週間で屋敷に務めておりました。ですが、二日経つと変な音などが聞こえ始めました。何かを引きずるような音です。そして今度は自分の部屋からその物音が聞こえてきました。森に散歩しに行ったときだってあの音が耳にこびり付いてくるのです。そして一回だけ変な夢を見ました。とても重苦しく、それに飲み込まれてしまうような感触がリアルに伝わってきます。起きたら額には汗がびっしり浮き上がってくることもありました。何よりも、借りている部屋が怖いです。屋敷に来て七日目の時、その正体が寝ている時の私の顔を見つめてきました。半目でその正体を見た時、とても震えが止まりませんでした。なので今日、私はここの屋敷の家政婦をやめます。そして、見たら必ず早く出て行ってください。前田花より


(まさか自分と同じ体験が他の人にあったなんて)


 奈菜は頭を振りながら手紙をポケットにしまった。

 

 その同時に扉の開く音が聞こえ、肩をビクつかせた。図書室に入ってきたのは執事だった。


「あれ? 奈菜さん。図書室にいるなんて珍しいですね。何か本でも探されていたんですか?」

「えぇ、ちょっとですね。でも何読もうか忘れちゃったからもぉ戻ります」


 奈菜は作り笑みをしながら図書室を出るとすぐに隣の部屋に駆け込んだ。


(あっぶなかったー。危うく手紙のことがバレるところだったわ)


 奈菜はホッとすると、部屋を見渡した。


 あるのはピアノと机だけが置かれていた。探すとしてもピアノだけだと思いながら蓋を開けた。


あるのは白い鍵盤と黒だけがあるだけだった。


「うーん、机になにか所にもないかな?」


 奈菜はテーブルの下を覗いたが何もなかった。


(ここは何もないか)


 奈菜はそう思うと、隣から扉がしまる音が聞こえた。


 執事が出たことに思わず奈菜は息を潜めた。遠ざかって行くのを確認をすると、次の隣の部屋に入り込んだ。


 三つ目の部屋は日本人形とフランス人形が棚に数体置かれている部屋だった。


(ここ、いつ見ても不気味だなぁ)


 奈菜は怖いと思いながら辺りを見渡して歩んだ。


 棚とかも触り、何か変化がないかを確認をした。すると、尖ったものが手に当たった。


 退かすと、紙の先端部分が棚の間に挟まれていた。


 そっと取り、紙を開いた。


 “奥から1番目の棚の斜め横にある一体フランス人形”と、文字の横に分かりやすくするために帽子を被った女の子のイラストが描かれていた。

 

 奈菜はそれを頼りにしながら、帽子を被ったフランス人形を手に取った。背中に違和感があり、振り向かせると服の中から何かが膨れ上がっている。


(なんだろう)


 疑問を感じながら服をめくると、ボイスレコーダーとイヤホンがテープで付けられていた。


「なんで人形の背中にボイスレコーダーが」


 奈菜はそんなことを思いながらも、ボイスレコーダーとイヤホンをポケットの中にしまい込んだ。


 他にはないと、奈菜は部屋を出て四つ目の部屋に入った。


 部屋には昔の描いたような絵の掛け軸、画家に掘りえが飾られていたり、置かれているのが盛りだくさんだった。


 奈菜は地面に置かれている絵画を一個ずつ退かしながら何かがないか見たが何もなかった。


 掛け軸をどかしても見たが何もなかった。


(最後の部屋は何もないか)


 奈菜は一息はくと、自分の部屋に向かった。


 ベットに座り、ポケットの中に入っているボイスレコーダーを見た。


 これも前の人達が録画をしたのかと思うと、一体何が聞こえるのだろうとドキドキしてきた。


 すると、扉を叩かれる音が聞こえ、奈菜はボイスレコーダーをポケットの中にしまい込んだ。


「はい」


 奈菜の声と同時に扉が開いた。


執事がティーカートを持ち、笑みを浮かべたま立っていた。


「お菓子の時間で御座います」

「はい、ありがとうございます」


 奈菜はティーカート受け取り、お礼を言って扉を閉めた。


 銀の蓋を開け、お菓子が乗っているお菓子を机の上に置き、いただきますと言って食べ始めた。


 奈菜は先ほどのことでお菓子の味がさっぱり分からなかった。


 食べ終え、奈菜はティーカートを外に出し、早速ボイスレコーダーを聞くことにした。


 ボイスレコーダーの付け方や履歴を見る方法は昔、友達がノートの代わりによくレコーダーで録ったことを聞き、履歴とかどうやって見るのかを教わったことがあったためか、すぐに履歴の見方などは分かっていた。


 イヤホンを耳に入れ、履歴を確認をすると先月の日付が書かれているのを見つけた。


「これかな?」


 奈菜はその日付を押し、再生をした。


 じっくりと聞いていたが、何も聞こえない。


(まさか、外れなのかな?)


 そう思っていると、徐々に何かが聞こえてくる。


 イヤホンを押さえて聞いた。ぶつぶつと、何かを喋っているような声が聞こえてくる。


 “は……く……さ……ろ”


(ん?)


 奈菜は音声を巻き戻し、同じところを聞いた。


 “はや……さ……しろ”


「……何かに気付いてほしい?」


 奈菜はイヤホンを押さえて呟いた。


 声の主はよくわからないが、何に気付いてほしいのか分からない。


 奈菜は音声を止め、イヤホンを外した。


 声の主は一体誰を探しているのかと、奈菜は心の中で呟いた。


 ボイスレコーダーを段ボールの中に入れ、ベットに寝転んだ。


 ベットに寝転んだ同時に眠気が襲い、奈菜は瞼をゆっくり閉じた。

 

 

 寒く、冷たいのが頬を触った。


 奈菜は目を開けた。


「えっ。ここは」


 さっきまで部屋で寝ていたはずが、今は雪が積っている暗闇の中にいた。そして、ここは前の夢で見た場所だった。


(なんでまたここに)


 奈菜は雪を掴んでみると、まるで現実にいるかのような感触みたいに冷たかった。


 思わず頬を抓った。


「いたっ、そんな。さっきまで部屋で寝ていたのに、なんで」


 奈菜は辺りを見回してみると、背中越しだが誰かが立っている。


(まさか、この前の人)

「あのっ」


 奈菜は駆け出しそうにすると、瞬間移動にでもなったかのように場所が移動された。


 あまりにも非現実的なことが起こり、奈菜は思わず周りを見渡した。


「ここって」


 昨日見た屋敷だった。


 昨日見た時とは大ちがく、家の周りにはつるや雑草などは一切無かった。


 辺りは暗く、屋敷からは明かりが灯されている。


「えっ。どうして」


 窓からは、2人の女性のメイドが歩いている。けれど、顔には渦巻のような黒い物が張り付いていて表情が確認出来ない。


(夢だからかな?)


 奈菜はそんなことを思いながらも、 もっと近くで見てみようと壁に手を付いた瞬間。


「きゃっ」


 沈むかのように前に倒れ込み、屋敷の中に入り込んでいった。


「えっ? 一体どうゆうこと」


 奈菜は辺りを見渡すと、前の屋敷とは違い、豪華なシャンデリや昔の人が書いたような画などが飾られていた。


 顔を見上げると、時計があった。短い針は夜の九時を指している。


(夜ってことは、何かを確認しにきたのかしら)


 奈菜はそんなことを思っていたが、勝手に入ったことに悪意を感じ、外に出ようとしたが。


「えっ、なんで通れないの」


 さっきとは違い、壁はいつものように固くなっている。


(通せないってことは、何か見ろって事なのかな?)


 奈菜は歩いて行った執事の後を追った。


 メイドは奈菜の姿に気付かず、2人で喋りながら歩いている。


「ねぇ、なんか最近さ、他の人たち止めるの多くない?」


 茶ばつのメイドが言うと、隣にいる黒髪のメイドが言った。


「そうよね。旦那様の性格が嫌だから止めていくんじゃない。最近は特にひどいけどね」

「そうかもしれないけど、他の人に聞いたらなんでも他の理由で辞めていくらしいわよ」

「えっ? それってどうゆう」


 そう言いかけた瞬間、物音が響いた。


「きゃっ‼ 何。今の音」


 茶ばつのメイドは黒髪のメイドに抱き着いた。


「きっとねずみよ。何処かにネズミが忍び込んでいて、それで動いた瞬間に物にぶつかったのよ。だから大丈……」


 黒髪が言いかけた瞬間、また物音が聞こえた。


「ちょっと、これ部屋に戻ったほうがよくない?」


 茶ばつが黒髪のメイドに抱き着いたまま言った瞬間。


「立ち去れ」


 野太い、何者かの声にメイドは悲鳴をあげて立ち去った。奈菜は逃げようとも思ったが、どうにも体が言うことを聞かずに動けないため逃げられない。思わずその場にしゃがみ込んで強く目を瞑った。


(早く、目を覚まして私!)


 奈菜は心の中で念じていると、意識が途絶えた。


「はっ!」


 奈菜は夢から覚め、飛び起きた。


 息が荒く、呼吸を静かに整えた。


(でも、なんであんな夢を)


 そんなことを思っていると、手から冷たい感触を感じ、思わず見てみると白い何かが袖に張り付いていた。


(えっ)


 袖には雪の結晶が入り付いている。


(夢なら、袖に雪の結晶なんか付かないはずじゃ)


 奈菜は思わず身震いをすると、呼び鈴が鳴り響いた。飛び起き、エプロンを着て書斎の方に向かった。


 扉を叩き、声を掛けた。


「失礼します」

「あぁ、奈菜さん。それじゃあ早速午後の仕事を頼むんだが、いいかな?」


 勇の言葉に奈菜は「はい」と返事をした。


「それじゃあえぇと、お風呂掃除とポスト確認。お風呂は掃除したあとお湯を入れてくれ。あと、もぉそろそろ夜近くになるから服を中に入れて、洗濯機の方に置いといて。執事がそのあとやってくれるからね」

「私も」

「いいんだ。奈菜さんは私の言われた通りにしてくれれば良い。それから、掃除機で廊下を掃除してくれ。それだけだな」

「わかりました、あの」

「ん? なんだい?」


 奈菜はここで言おうと思い、勇に言った、


「私、あの音がまだ気になってしまって、出来ればなんですがまたカメラを貸していただけないでしょうか?」

「あぁ、良いよ。待ってて」


 勇は机に行き、机のの中に入っているカメラを奈菜に渡した。


「はい。充電満タンだから使っていいよ」

「ありがとうございます。それでは失礼します」


 奈菜はカメラを受け取り、頭を下げて書斎を出た。


 洗濯機の中から籠を取り出し、駆け足でポストに行き、中を見たが今日は何も無かった。


 洗濯物を籠の中に入れ、屋敷の中に入り、勇に言われた通りに風呂場に置き、そのまま掃除置き場の部屋に向かった。


 掃除機を取り、廊下を掃除した。


 長い廊下を2階まで掃除し、掃除機を掃除置き場の部屋に置き、お風呂場を掃除してお湯を入れた。


(よし。終えた。さっさとお部屋に戻ろ)


 奈菜は書斎の扉に向かって、「お湯を入れましたので、出来上がったらお風呂にお入りください」と一応言った。


「あぁ、わざわざ声を掛けてくれてありがとね」


 勇は元気よく奈菜に言った。


 奈菜は部屋に戻り、エプロンの中に入っているメモリーカードを段ボールの中に入れたエプロンを外し、お風呂に入ったが壁の中に紙のことを思い出して怖くなったが勇気を振り絞って一日の疲れを落としてお風呂場を出た。


 ため息をはき、ベットの上に座った瞬間に扉が叩かれる音が聞こえた。


 奈菜は返事をしながら扉を開けた。


「はい、晩ご飯のお時間でございます」

「ありがとうございます」


 奈菜はティーカートを受け取ると、執事は奈菜に質問をした。


「奈菜さん、あれから3階に行かれましたか?」


 執事の質問に答えようかと思ったが、勝手に3階にも行っているので嘘を付いた、


「いえ、行っていませんが、何故ですか?」


 奈菜は少し警戒心気味に言うと、執事には「いえ、気になったものですから」と行って扉を閉めた。

 

 奈菜はいつものように晩ご飯を食べ終え、ティーカートを廊下に置いた。


 歯磨きをし、早速あのメモリーカードを見ようと段ボールの中に入れていたカメラとカードを取り出した。


 元々カメラの中に入っていたカードを取り出し、見つけたメモリーカードを中に入れて、再生をした。


 カードの中には前の家政婦が撮ったかのような動画が残されていたが、一つだけ雰囲気違う動画が見つけた。


 奈菜はそれを押し、再生をした。


 映し出されたのは前の家政婦が全体を映し出されるような場所に置き、ベットに置くと少しだけ灯りを灯らしてから就寝をした。


(一体、何が映し出されるの?)


 奈菜は緊張をしながら見守っていた。


 すると、何かがぶつぶつ聞こえてきた。


 次の瞬間、何かがベットの横から徐々に出てきた。


(えっ。何……これ)


 最初は少し大きなめネズミかと思ったが、黒い、何かがぶつぶつと言いながらその家政婦の顔を大きく、光がない真っ黒な目で覗き込んでいた。


「いやっ」


 奈菜は思わずカメラを落としてしまった。


 息を荒くしながらも、電気を落として布団を深く被った。


(なんなの、あの動画に映っていたものが音の正体なの?)


 奈菜は目を強く瞑り、眠るまで体を震わせていた。

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