第40話

 医師がドアまで送ってくれる。


マスクはつけなくても大丈夫ですよ。


「付けてないと浮くじゃないですか。服の色だって」


これは血を見る職種の我々の普段着です。手術の時には清潔な新しいものに着替えますので、


ご心配なく。

 

 心配していなかった。

 私は思う。

 もっと独創的で、専門的な知識を持つ、個性的なヒロインが難事件をばっさばっさと解決するような。あるいはクールに現代ナイズトされた、オマージュされた事件を科学知識を元に解決していくような。そんな、賢く。才智に溢れた。利口な。お嬢様が彼女を慰めて、ころなとやらを憎んでもよかったじゃないか。

 まさか。

「ころなは、」


マスクと、手指の消毒での予防、お互いに距離をあけること、ワクチンの接種。罹患した場合は家族からも隔離。新種への対応、その最中です。何か良い案は?


「ころな撲滅ですね」


終息すると良いのですが。


人の死んだ話の後に怖い単語を言う。終息。

「帰れますかね」


私にはいま、悩みがありません。

 

 急に医師が言う。

 だからご安心を?


また何か、訪問したい世界があったら、


楽しかったこと、思い出してくださいね



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