第14話

 あの魔女さん、宅急便屋さんだったのか。余計な荷物預けちゃって申し訳なかったな。でも絨毯は大きかったし、アラジンな体験は怖くともできたし。憧れがいっぱい詰まってたな。そんな場合じゃなかったけれど。

 貴重な体験だ

 あとは。

 この街のどこか、ってところなんだよね。

 住宅もあれば、帽子や魚の描かれた看板もある。

 人はいるのかといえば、外国のように紙袋に買ったものをごちゃごちゃと入れたようなご婦人や手にいっぱいのレモンを抱えた少年まで。

 服は、中世としか言い表せない。今回も英国圏風かな。

 と思った瞬間、気づいたことがある。

 さっきの魔女さん、髪色、緑と青だったな。

外が緑、内側が青。紙袋のご婦人は金。レモンの子はアッシュなグレー。

 髪色が、オシャレだ。そらともそういう遺伝子なの?

 おまけにまず、魔法!誰かから情報収集したいけれど、あの魔女さんをまた呼びつけてしまうのは気が引ける。

 せめて、解決するならATMのの手数料がかからない時間帯まで。午後6時か。

 さて、私が力になれる、あるいは無事に帰れるようになる事案とやらはいずこに。

 私、桜はとにかく街を観察する。困っている人は。泣いている人は。起こっている人は。

 やがて、もっとも賑わっていない、ひとつの建物を見つける。何人かの往来やベンチ、人の店の出入りを見たけれど、この建物の。

 必要性を、感じさせないような、ロイヤリティ。

 入りづらい。だって、高貴な印象を受けるもの。

 でもだからこそ、なのか?

 違ったら違ったで、出ていけばいい。

「あのう、安い鞄はありますか」

 そんなことを言いながら鞄屋に入る人、いないだろう。おまけにそこはとても立派な鞄が一点ものとして並んでいるようなロイヤリティ。

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