第4話 禁止日数と報酬。

昨日は散々だった。サプリの副作用で吐き気がしてうまく眠りにつけなかったし、実際喉まで何回かのぼってきてた。そのせいで俺の夜のルーティンが出来なかったじゃないか。 この俺がだぞ。


しかしその代償というべきか、鏡を見てみると少し細くなった気がしなくもない。


なんせ四キロも落ちたしな。体調不良は体が異常反応を感じとったのだろう。


そういえば、昨日シていないから、カウントが進んでるんじゃないか?


ふとそのことに気が付いた泰斗はNM.phoneを開いた。


「えーっと、禁止日数の欄どこだ? おおっ、進んでるじゃないか! やったぞ!」


禁止日数の欄には、確かに”1”と値が刻まれていた。


これまでにない感動と衝撃だった。マスターベーションという概念を知ってから毎日欠かさず自分の息子を鍛え上げてきたのに、自分がその行為をしていない日が来るのがとても誇らしかった。


うれしくて暫くその画面を眺めていると

『禁止日数とそれに対応する報酬一覧』

という文字が書いてあった。


そこをタップしてみると、一覧表のようなものがずらりと出てきた。


『禁止日数|報酬   

  3日  "camera"の"vision"、"favorability rating"機能解放

  5日  スペシャルミッション"connect"への参加権

  20日  サプリメント ”vision dive" ゲット    

  30日  リセット権                 』


下にもずらーっと表が続いていた。なるほど、結構上級者向けだな。


ところで、30日のリセット権とは何だろうか。いったい何をリセットするんだ?


まあ、すごいものに越したことはないだろう。


さてさて、今日は土曜日だ。休みの日といったら、やることは一つだよなあ?


俺は早速PCを開いていつものエロゲを開く。


「さーて、どこまで進めてたっけな」


自分の息子に手を伸ばそうとしていたその瞬間、俺の中でふと”理性”が襲ってきた。


『せっかく一歩を踏みだすことができていたのに、ここで途切らせてしまうのか?

 二度とこんなチャンスないかもしれんぞ?』


思えば確かにそうだ。暇なときは、いつも同じことの繰り返し。


俺は変わりたいんじゃないのか? あの日の決意はどこに行った?


でも、だからって何をすればいいのか。


葛藤の時間が続く。理性が勝つか、性欲が勝つか。




そんな時、自分のスマホに一通のメールが届いた。


『よう、今日ちょっと漫画を買うのに付き合ってくれないか? どうせ暇してるんだろ?』


俺の唯一の友達といえる存在、アキマサからだった。


先ほどまでの葛藤が、メールに気を取られたことによって途切れた。


いつもの俺だったら憎らしく思うだろうが、この時は違った。


『おう、心の友よ』



『何だ急にw ありがとよ。 とりあえずいつものところ集合な!』



俺は返信が返ってくると、すぐさま出かける準備をした。






________ 俺らが遊ぶときは決まっておしゃれな店が建ち並ぶ商店街の入り口と決めていた。


なぜなら、このスポットは女子高生が多く、目の保養になるからだ。ただそのせいか、俺はこの場所の雰囲気にどうも馴染めていない。



「おまたせー!」


「おっ、きたきた」


いつもの白いTシャツに水色のカーディガンを羽織った姿が見えた。アキマサだった。


いつもと変わり映えない服装なので、一瞬でそいつだと分かる。


もともとこいつは陽キャ、というほどでもないが世間一般で呼ばれる陽キャ、陰キャにも分け隔てなくフレンドリーに接し、クラスでもみんなから好かれていた。



「よし、早速行こうぜ」


「おう」


こんな俺とも仲良くしてくれるなんて、いい友を持ったものだ。



商店街を少し歩くと、いつも行っている少し大きめな書店についた。


店内に入り、それぞれが自由に店内を歩き回る。


そうしていると、圧倒的な存在感を放った見覚えのある綺麗な女子高生を見つけた。


俺が想いを寄せている、宮下 夏目さんだった。


いつもは見ることのない私服姿にドキドキし、声をかけるにもかけれなかった。



「あれ、遠島君?」



ビクッと体が反応する。なんとあっちから声をかけてきた。


「こんなとこで会うなんて偶然ですね!何を買おうとしているの?」


「あ、宮下さん。こんにちは。アキマサと一緒に買い物に来てて...」


「そうなんだ! ふふ。学校以外で友達と会えるのが嬉しいわ。」




え?




「えええええええええええええ!?!?」



と も だ ちいいいい!?!?!?!?



宮下さんの思わぬ発言に店内なのにも関わらず、大きな声が出てしまった。



「えっと、、、大丈夫かしら、、、?」



「ああああごめんなさい宮下さんに友達だと思われていたことにとてもびっくりしちゃってついごめんなさいごめんなさい」


めっちゃきょどってしまった。もうドン引き間違えなしだ。


そうすると意外に、宮下さんは笑いながらこんなことを言ってくれた。


「ふふふ、当たり前じゃないの。遠島さんは私の大事な



更なる衝撃いいいいいいいい!!!!



「あ、ありがとうございまひゅ」



人生で一番の幸福ともいえるかもしれない。こんなに嬉しくなったのは初めてだ。

もう死んでもいいぐらいだ。


気持ちが高揚する。顔にもあからさまに嬉しさが溢れていたと思う。


「そんなに嬉しがられると、こっちまで嬉しいわ」


どこまで女神なんだこの人。性格から容姿まで。神様はこの人のバランス調整を怠ったのだろうか???


そんなことで頭がいっぱいの時に、宮下さんの手には俺が大好きなマンガが握られていることに気が付いた。


「あの、それって」


「知っているの? この漫画、アニメを見てから続きが気になっちゃて、マンガに手を出したら魅力に気づいてしまったの」


「はい! それ僕もう全巻持っているんです。 特にこのヒロインが主人公を思う忠誠心がとてもよくて! そして何よりも、絵がとても好きなんです!」


「ふふ、相当好きなのね」


「あの、よかったらマンガ、貸しましょうか?」


「え、いいの?」

       

「はい、この漫画一巻の価格高いから、何巻も見たいようだったら是非貸します!」


「ありがとう、そうさせてもらうわ」


彼女は満面の笑みでそう答えた。


「月曜日、学校に持っていきますね!」


はあ、やっぱり宮下さん。ほんとに美しい。


こんな人に友達と呼ばれてしまうなんて、最高だ。


今更だけど、宮下さん、さっきから俺の手元をじっくり見ていることがある。


会話初めから手元をよく見られていたので、視線は特に気にはしていなかった。


そんなことを考えていると、宮下さんがスマートウオッチの方を見てこう言った。




「ねえ、遠島さん」






「なんで、それを持っているの?」





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