第3話 学校にて。

毎朝早く起きるので学校につくのが一番乗りなことが多い。普段は賑やかなのに、誰もいないことで訪れるこの静けさがうまく言い表せないのだがとても良いのだ。


一番最初にきたというちょっとした優越感に浸っていると誰かが教室に入ってきた。


俺の幼馴染、神永 凛だった。


少し青みがかったツヤツヤとしたボブのショートヘアに、ウサギのようなかわいい口元が特徴的だ。実際性格もウサギっぽい感じである。


「おはよう」


「うわっ、、おはよう」


少し拒絶混じりの声で俺に挨拶を返してくれた。


お互いの席は同じ列の一番前と一番後ろで凛は一番前だった。


凛が俺の前を通りかかる。ふわっと甘い香りがした。


にしてもうわってなんだようわって。幼馴染は大体主人公が好きで気さくに話しかけてくれるもんじゃないのか。


まぁ、俺ただのモブの陰キャか。


実際のところ、幼馴染同士は仲が良いという描写はアニメでは多いが、現実世界ではどうもそういう訳でもないらしい。


女子は性格が大事というが、それは顔がある程度整っているという前提条件がある。


くたばれ、世間の女子。


そんなことを考えていると、NM.phoneから通知音が聞こえた。


画面を見ると

『デイリーミッション 女子1人と話す を達成しました! 5pt獲得です』

と表示されていた。


俺だからちょうどいい難易度設定とも言えるだろうが、他の人からしたら少しイージーすぎないか?


昨日は確認しなかったが"mission"はポイントがもらえるシステムで、日によって更新され、難易度によってもらえるポイントが違うらしい。



『    ”today`s mission”

  ・女子一人に話しかける:5pt〈clear!〉

  ・女子一人を褒めて喜ばせる:10pt 

  ・女子と一緒に昼食をとる:20pt    』


うーん。最初のミッション以外クリアできそうに無いな。


そういえば、ポイントを貯めたらどんな特典がもらえるのだろうか。


泰斗はそう思うと"market" というボタンを押してみた。


『market へようこそ!ここではポイントとの引き換えにお客様の更なるQOLの向上をサポートする特典をゲット出来ます! tojima 様は初回ログインですので50ptを差し上げます。』



おお、大盤振る舞いじゃないか。ちょっとどんなものがあるか見てみよう。


 ・フェイスライン改善 強力サプリメント beautiful line 〈15pt〉

 ・ダイエットサプリメント 鍛god 〈15pt〉

 ・好感度向上フォト×5 〈20pt〉         …  


ほうほう、いろんなものがあるみたいだな。


そんな中でも、一際目立ったアイテムがあった。


フィジカル・チェンジャー?


その必要ポイント数は脅威の1000ポイントであった。


「は?」


思わず声が漏れてしまった。凛から変な目を向けられた。


説明文を読んでみると、どうやら写真で身体情報を登録すると、自分の好きなように体型、顔のパーツをいじれるらしい。


意味が分からない。


このスマホを手にしてから摩訶不思議なことがさも当然のことかのように起きまくっている。そんな中でもこの、フィジカル・チェンジャーは異形な雰囲気を漂わせていた。


恐らくはこれを入手することは到底不可であろう。そもそも奇妙すぎる。


しばらくスマホをいじっているとどんどんとクラスの中に人が入ってきた。


そして、俺が好意を寄せている宮下 夏目が教室に入ってきた。


おおっ、普段は学校指定のソックスを履いてるのに今日は黒タイツときたもんだ。


とてもいいじゃないか。性癖に刺さるぜ。


宮下さんの脚に鋭い視線を向けていると、俺に挨拶をしてきた。


「おはよう、遠島君。」


急な挨拶にビビッてしまい、心臓がバクバクする。


「お、おはよう宮下さん。今日は黒タイツを履いてきたんだね」



何てこと聞いてんだおれぇーーーー!!!!!!!!!!


これじゃあまるでただの変態脚フェチ野郎じゃねーか!!!!!


「そうよ、最近肌寒くなってきたしね」


「そうだね、、、確かに寒いかも」


俺から放たれた超絶変態セクハラ発言をものともせず受け流しながらすました顔でそう返し、自分の席へと向かっていった。


あぶねええええ!!! 何とかなったあああ!!!


周りから冷たい目線で見られてることなどは、動揺していて全く分からなかった。


はぁ、にしても今日の宮下さんも美しいなあ。


性格も誰にでも分け隔てなく優しいし、成績も優秀だし。


それなのにちょっと運動音痴っていうのがギャップ萌えするわあ。




~昼~



朝の一件から、ますます宮下さんのことを考えてしまってた。


申し訳ないが黒タイツ姿にちょっとムラムラしてしまった。


俺は本当に脚フェチの変態野郎なのかもしれない。


そういえば、ポイントが貯まってたな。少しでも宮下さんの気を引くために何か特典を買おう。


俺は試しに鍛godとかいうものを頼んでみた。




心がずっとワクワクし、駆け足で家に向かう。


すると、玄関にNM market と書かれた小さい箱が届いていた。


「おっ、きてるきてる!」


俺は一刻も中身の確認がしたかったので乱暴に段ボールを開封した。


中には、俺が頼んだ鍛god と書かれたサプリメントが入った小さなボトルが入っていた。


俺は早速部屋に持ち帰ってサプリメントを飲んでみた。


少し時間がたつと、急激な腹痛が訪れた。


おれは、最高速のスピードでトイレへと向かった。


今までになかったぐらいの便が排泄された。その間理由は不明だがものすごく汗をかいていた。


あまりの排泄物の量にトイレが詰まるところだった。


体重計に乗ってみると、体重が4kg も減っていた。


「なんなんだよ......これ......」


あまりの衝撃にそれ以外の言葉が出なかった。


その日の夕飯で母にこんなことを言われた。


「泰斗、あんた少し痩せた? あと、少し具合が悪そうよ?」


そのサプリメントは絶大な効果を示した。これを使えば、もしかしたら本当に自分を変えられるかもしれない。だが、それと同時に多少のデメリットが存在するみたいだ。


その日は眠りにつくまでわずかな吐き気と倦怠感が襲った。














 




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