第27話




「雅也さん、どうしてレシピカード、持ってきていたんですか?」


 父と叔父夫婦と別れ、今日宿泊するホテルに向かう電車の中、私は不思議に思っていたことを尋ねる。


「ああ。もしかしたらお父さんが来るんじゃないか、って思っていたんだ。来ていなくても、叔父さんたちに見せたいと思っていたから。」



 雅也さんの気遣いに、胸が暖かいものでいっぱいになる。私は、この人がくれた分だけで返せているのかなぁ。そんなことを考えていたら、頬を軽く引っ張られる。



「・・・また、変なこと考えてないか。」


「か、かんがえてないでひゅ・・・。」


「じゃあ、何考えてた?」


「雅也さんから、貰うものが多すぎて・・・私は返せているかなぁって。」


 小さく呟く私の言葉に、雅也さんは少し戸惑ったように目を見張った後。




「・・・言っただろう。俺の方が貰いすぎてるって。」



 視線を逸らして、素っ気なく話すあなたが、愛しくて。以前の会話を覚えてくれていることに、満たされて。駅に着くまで、無言のままだったけれど、繋いだ手はずっと強く握られていた。





◇◇◇




「えっ・・・ここって・・・。」


 到着したホテルを見て、私の口はあんぐりと開いてしまった。ホテルの予約は雅也さんがしてくれて、私は叔父夫婦への挨拶やお土産のことで頭がいっぱいで、どんなホテルかも気にしていなかった。



「ここって、高級ホテルじゃないですか・・・。」


 田舎暮らしが長くなった私でも知っている、よくテレビでも紹介されているようなラグジュアリーホテルだ。




「・・・たまにはいいだろ。」


 そっぽを向いた雅也さんは、どこもピカピカ眩しい内装をキョロキョロと眺める私の手を、ぐいっと引っ張りフロントへと進んでいった。



◇◇◇


 



 残り二話となっております。最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

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