第25話




「言いたいこと・・・。」


 また、雅也さんに背中を優しく叩いて貰い、気持ちが落ち着いてくるのを感じる。



「お父さんが、ずっといなくて嫌だった。仕事かもしれないけど、それでも嫌だった。」


「・・・ごめん。」


「学校の行事も、誕生日も、何もかも、お父さんがいなくて悲しかった。」


「・・・うん。」


「私がいるせいで、お祖母ちゃんはずっと忙しくて、迷惑かけているのが嫌だった。お祖母ちゃんが病気になったのも私のせいだと思うと辛かった。」


「・・・っ!それは違う!瑞樹のせいじゃない!」


「だけど、そう思ってしまうほど、お祖母ちゃんは大変だった。年なのに、私の育児をして、私が大きくなったら受験や就職のことを一緒に準備してくれて、たくさん心労かけてきたの。お父さんがすべき事を全部お祖母ちゃんがしてくれた。」


「・・・すまない。」


「・・・うちはお母さんがいないから、お父さんにはいてほしかったのに。」



 父は「ごめんな」と繰り返しながら、わんわんと号泣し始め、叔父が肩を叩きながら渇を入れているのをぼーっと眺めていた。ふと、雅也さんが私にハンカチを差し出しているのに気付いた。



「・・・なんで?」


 私が不思議そうにしているのを見て、雅也さんは私の頬の辺りを拭った。ハンカチが冷たくなるのを感じ、私は自分が涙を流していることにやっと気付いた。




「・・・がんばったな。」


 小声で誉めてくれたのを皮切りに、私はぼろぼろと泣いてしまった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る