第三章 風邪と夏祭り

夏風邪をひいたバカ

第18話 馬鹿とは俺のことだ

 明るい夏の朝日をスポットライトに元気に合唱コンクールを始めるセミ、それに対抗するように機械音を発しながら、涼しい風を吐き出すエアコン。


「あぁぁ、さっむ、。」


 大きなあくびをした後、夏とは思えない寒気を感じ、リモコンを手元に手繰り寄せ、設定温度を確認する。


『冷房  27℃』


 別にそこまで寒く感じるような温度ではない、むしろいつもならもう少し低い温度に設定している。とりあえず、一度電源を切った。


「頭いってぇ、それこしてなんかだりぃ」


 俺はそのだるい頭を持ち上げてスマホの画面に目を向ける


『9:34  

 

 2件の新着メッセージ』


 なんかメッセージ来てる、、

 そう思い開こうとしたのだが、あまりのだるさを前にして、そんな気力すら起きず、意識をもう一度ベットに預けた。


 ―――――――


『ピコン』


 俺はその音によって目が覚めた

 一度目が覚めたときに比べだるさと頭の痛さは勢力を増していて、追加でのどの痛みもやってきていた。


「あれ、今何時だ?」


 そう呟きスマホの画面をつける。声はかすれていて、喉に少しの追撃になった。


『11:52


 27件の新着メッセージ』


 寝すぎだ。昨日、いろいろとありすぎて疲れていたにしろ寝すぎだ。

 昨日はあまりの疲労で、家に帰ると、さっさと寝た。その時間は確か10時前だった気が、、そこから計算すると、、

 こんな簡単な計算をするのもだるく感じる


 とりあえず、なにかしら飲もう。

 俺はベッドを降り、キッチンへ向かっているのだが、足に力が入らない。


 やっとの思いでキッチンにたどり着き、麦茶を二、三杯のみ、体温計を脇に挟んでソファーに横たわった。。


 体温を測り終わるまでの間に届いていた、メッセージをチェックする。

 俺はてっきり昨日の帰り道で作ったグループでのやり取りだと思っていたのだが、その予想は外れており、27件ものメッセージの送り主は桜と陽菜が大体半分ずつ、それとユウから3件ほど。


 桜と陽菜からはどちらとも最初の方はデートのお誘いで、今に近付くにつれ俺を心配するようなメッセージであった。

 陽菜の方の最後には『家に行くね』というメッセージがあった。

 ユウからは、夏休みの課題の範囲を聞く内容だった。それぐらい自分で覚えとけよ、、、


 一人ずつ返信をしていこうとしているうちに体温計が計測終了という合図の音を発する。


『38.7℃』


 うわ、やっぱりそうか、、


 正直、二度目に目が覚めたときには大体予想がついていた。


 原因として今の働かない頭で思いつくあたりとしては


 昨日、更衣室から出るときに『出てから拭けばいいか』との判断のもと、髪の毛の水分をがっつり残したまま出てたことだろうか。そのあとすぐにあの告白があり拭く機会はなかったしな、、

 『頭を冷やす』という名目で浴びた水シャワーだろうか、、、


 いや、どっちもか。夏風邪ひくやつは馬鹿っていうけど、今回に関しては完全にそうだな。


 今の頭のCPUでは一つのことしか考えられないのか、そんな今となっては意味のないことをしていると、来客を伝えるインターホンが鳴る。


 俺はゲームで言うとデバフ全開の体を引きずって、モニターを見た。

 そこには予告通りの美少女が一人、予告なしの美少女が一人、計二人が心配そうな表情の裏で、互いに牽制しあうようにドアの前に立っていた。


===時は少しさかのぼる===


 私はテーブルと向き合って3時間が経とうとしています、朝食をとってからずっと宿題をしているのですが、自分でも分かるほど意識はほかの方へ向いています。


『ピロン』


 私はスマホから通知音が発せられると同時に送り主を確認します。しかし、本屋の公式アカウントからのクーポンでした。50%offは普段ならガッツポーズして喜ぶところですが、あいにく今日の私はそれどころではありません。


 昨日の告白で私の思いはもう伝えたので、今日は自分なりですが勇気を出してフミくんに


 『デートしようよ』というメッセージを送信してみました。


 しかし、何分経っても既読すらつきません、追加で何件か送りました、それでも既読がつかないんです。

 時間が経つにつれ確認する間隔も小さくなっていきます、一日千秋とはまさにこんな感じなのでしょう。

 送信してから二時間が過ぎてくると、いよいよ心配になってきます。追加のメッセージもいよいよ二桁目になってしまいました。


 そろそろ午前中が終わるころ、いまだに既読すらつかなかったので、意を決して彼の家へ。


エレベーターに乗り込むとそこには見知った顔が


「あ、桜ちゃん」


「あ、こんにちは、陽菜ちゃん」


 私達はお互いの意図に気付き、無言で牽制するようにして、フミくんの扉の前まで来ました。


 インターホンを鳴らしてから、少しの間の後、ドアを開け、私たちが目にしたフミくんの顔色は悪く、マスクをしていました。


 そして、かすれた声で


「夏風邪をひいた馬鹿とは俺のことだ」




 




 


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