第5話 感情の気付き

「おーい、ふみー、一緒にご飯食べよー」


 陽菜が教室の扉から顔を覗かせる、それにクラスの男子の大半が目線を向ける、


 実のところ、陽菜はめっちゃモテるのだ。そんな陽菜が俺を呼んだということで、俺もめちゃくちゃ注目された。


「まぁ、いいぞ」


「私も一緒に食べたい。」


 桜がそう言ったが波さんに誘われ、断れきれずそっちで一緒に食べることになった。


「じゃ、行こ」


「おう」


 そういいながら教室を出た。


「あれ?ユウは?」


「なんか、部活の集合が急に入ったみたいで」


「それならほかのグループと食ってきたほうがよかったんじゃないか?」


「いやぁ、、ちょっとそれが無理そうで、、なんか女子だけで食べてると男子によく話しかけられるのよね~。」


 男除けということか、俺は理解した。


「あとは、、フミと、、いっしょ、、に食べたかったから。」


 もじもじしながら、顔を赤くしていた。


 ……え?なに俺今日死ぬの?脈ありなの?

 そう思ったが、陽菜は俺のことをフッている、にしては俺のことを意識してるように見えるが、、、気のせいか。


 なんで俺の周りには勘違いさせるような発言をするような奴が多いのか。

 思考を一回中断して食べれる場所を探す。


 ―――――――――


「こんなとこあったんだ」


「ほんとにな」


 俺と陽菜は校舎から少し離れていて誰も来なさそうなベンチに腰を掛けた。

 俺はいつも通り弁当の風呂敷をほどいて弁当を取り出す。


 その時チラッと陽菜のほうを見ると陽菜は珍しく弁当を持ってきていた。


「じゃ「いただきます!」」


 俺は黙々と箸を進める。陽菜は少し緊張したような目で俺のほうを見ている


「どうした?俺の顔になんかついてるか?」


「……いや、何でもないよ。」


「そうか、なら早く食べなよ。」


「あっ、うん。」


 まぁ無言は気まずいので、目に入ったもので話題を広げる。


「そういえば、今日弁当だけど珍しくね?」


「うん、自分でつくってみたの、、、」


「ふーん」


 言われてみればちょっと不格好だがおいしそうだ。


「そうだ!フミ味見し、、てみて」


 陽菜はそういいながら顔を真っ赤にして、卵焼きを陽菜が口をつけた箸で挟んで俺の口に近づけていた。


「いやいや、自分で取るよ」


「いいじゃん、小学の頃よく、、、やってた、、ことだし」


今と小学時代ではいろいろと違うんだよぉ!


「、、、ほら」


「お、おう、、」


 俺はその仕草にドギマギしてしまった。


「いいのか?」


「う、うん」


 俺は恥ずかしい気持ちを押し殺して卵焼きを口に入れる。


「お、おいしいよ」


 顔が熱を帯びているのが自分でもわかる。陽菜と俺は目を合わせれなくなった。



 この後、気まずくなり無言で食べ進め、無言でクラスへ帰っていった。


 クラスに入る前に陽菜に


「今日はおいていかないでね」


 と言われた。


 ちなみに、午後の授業の内容は覚えていなかった。


 =======時間を昼休みに戻す========


「桜ちゃん可愛くなったよね、何かあったの?」


 波さんと美郷さんと三人で昼食を食べていると、波さんが私に今日三回目の質問をされました。


「ちょっと気持ちの変化がありまして、、」


 ちょっと顔を赤くしてしまいました


「「やっぱりそうか~」」


 波さんと美郷さんが同時にいった


「え?」


「桜ちゃん、秀文君のこと好きでしょ」


 私はビックっと飛び跳ねる。


「は、はい、そうです。」


 波さんと美郷さんにバレていたようです。


「多分ほとんどの人は気づいてると思うよ、秀文君はなんか鈍感だから気づいてなさそうだけど。」


 え、そんな分かりやすかったですか?じゃあそんなにアピールしてるのになんでフミくんは気づいてくれないのですか?


「実は結構フミくんにアピールしてるのに気づいてないのですかね?」


「わかんない。」


「そういえば、黒崎には青谷さんがいるからな、今日も一緒にご飯を食べているみたいだし。すまんな呼び止めてしまって。」


 あれ?もしやフミくんは陽菜さんのことが好きなのでしょうか?


「それは大丈夫ですけど、、、やばいかもしれないですぅ、、」


「まぁ、関係としては友達感が強いから心配する必要はないと思うが、、」


 そんなことも聞こえず、ただ慌てていました。


 そのあとはどうしたらいいか二人と作戦会議をしました。


 ――――――――


 昼休みが終わるころフミくんが返ってきたのですがなんか顔が赤かったですが何があったのでしょう。

 気になりすぎて午後の授業の間ずっとフミくんの顔をチラチラと見ていました。


 ===============


 あ~、なんだよあの陽菜の表情、勘違いしそうになったんだが。


 いや、これが勘違いじゃない可能性もある、

 でも、陽菜が俺に好きになるきっかけは、、、ない。

 俺の考えすぎなのか?ラブコメの読みすぎでおかしくなったのか?

 そう勝手に決めつけた、その瞬間チャイムが鳴り、俺はさっさと帰ろうとする、


 すると、後ろから桜の声が聞こえた


「フミくん一緒に帰らない?」

 

「あぁ、いいけど、、ちょっと遠回りするけどいいか?」


「いいよ。」


 ―――――――


「今日はちゃんと一緒に帰ってくれるんだね。」


「ほんとにごめんて。」


 俺と陽菜、桜でとりあえず陽菜を送るために駅に向かう、なぜか陽菜と桜の機嫌は良くない。


 もし俺の勘違いじゃなければ、俺がほかの女子を呼んで帰ろうとしたからなのだが。結局のところ分からない。

 


 気まずい空気になりつつも陽菜を駅へ送り、桜と二人きりで家路についた、機嫌は良くなっていた。


「そういえば、フミくんって好きな人いるの?」


 急に刺すような質問が飛んできたので、俺はビックリした。


 俺はせっかくだし考えてみた、俺は陽菜が好きなのか?桜が好きなのか?それとも

好きという感情すらないのか?


 少し考え込んだが短時間では答えが出るはずもなく。


「おーい、大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ。好きな人はいないよ、まだ、、なんでそんなこと聞いたの?」


「きになったから」


 これは、またラブコメのテンプレじゃねぇか!だが俺は勘違いするなと自分に言い聞かす。


 俺は覚悟を決め桜に一つの質問をした。


「じゃあ、桜はさぁ好きな人とかいるの?」


「え、え、えっと、その、、いるけど、、」


 桜は顔に熱をこもらせて俺のほうをチラチラ見ながら言ってくる、


 あ、もうこれ勘違いじゃないかもしれない。


 そこからはお互いにアニメの話をしながら家へ向かった。


「フミくん、バイバイ」


「おう、じゃ」


 そういいながら俺はエレベーターの{閉}を押した。


 ――――――――――――――


 俺は家の鍵を開け自分の布団に飛び込む


 そして、今日一日のことを考え直す。


 俺は今まで、ラブコメと比較してきて『ラブコメだと~~だ』と考え勘違いだと思っていたが、ここまでくると勘違いではないかもしれない、少なくとも桜のほうは、陽菜のほうもなのだが。


 もし勘違いじゃないのなら、俺はしっかりと向き合わないと思う。そうでないと失礼だし、誰も幸せになれない。


 今ここで、俺は改めて陽菜と桜のことか好きかどうか考えた。


 

 とりあえず一回頭を冷やそうと風呂へ向かおうとしたとき


『ピンポーン』


 朝とおんなじインターホンがなった。


 急いでドアを開けると夕陽をバックにした私服の桜がそこにいた。

ワンピース姿の桜はめちゃくちゃ可愛くて綺麗きれいだった。


「フミくん、晩御飯一緒に食べない?」


「え?」


「いや、あの、、フミくんの親が忙しいって聞いて夜も一人で食べてるのかなって思って、、、迷惑だった?」


「いやいやそんなことないよ。えーと、桜の部屋に行くのかな?」


「うーん、、フミくんの部屋でいい?ついでにちょっとあそぼ。」


 俺は部屋に男女で二人きりは危ない気がしたが、断るのもなんか気が引けたので彼女を家の中にいれた。


「桜はなんか食べたいのあるか?」


「いや、私が作るよ!」


「いや、俺の家だし、、」


「フミくんの家だからこそ、私に作らせて」


「あ、え、うん。」


 シンプルに桜の料理が食べてみたくなり了承してしまった。



「「いただきます!」」

 

 俺は桜の作った生姜焼きに箸をつける。


「うまっ」


 桜の作った生姜焼きはめちゃくちゃおいしかった。


「よかった~」


 桜がほっとしたような表情を見せてくる



「そういえば、なんで急に俺んち来て食べることにしたの?」


「え、あっ、親が忙しくて毎週火曜と木曜は一人で食べてたから、一緒に食べれたらなって。あとは………。」


 俺はその答えにあっけを取れられ、心がバクバクとうるさくなった。


 もうこれは勘違いではないと確信した。


 とりあえず、無難に言葉を返すことにした。


「そうか、俺はほぼ毎日だしな、一緒に食べれてうれしいよ。」


 桜は顔をパッと輝かす。


「じゃあ、フミくんさえよければ毎週火曜と木曜に来ていい?」


 彼女は上目遣いで聞いてきた

 俺は一瞬悩んだが。その仕草にやられてしまい、了承することになった。


 ――――――――


 食事が終わり、一緒にゲームをして時計の時針じしんが{9}になり、桜が帰ろうとする。

 一緒に過ごした時間はとても楽しく時間が一瞬で過ぎていった。


「じゃ、また明日、一緒に学校いこうね。」


「お、おう。」


 そういって彼女は家の扉を閉めた。


 俺は即座に冷水のシャワーを頭から浴びた。


 ===============


 私は今日、どうかしているのかもしれません。 


 あんなことをしてとても恥ずかしいのにフミくんが承諾してくれるととても舞い上がるようになってしまうのです。


 とりあえず、フミくんが陽菜さんのことを好きになってしまう前に、絶対に私のことを好きになってもらいます。


「どっちを選ぶかはフミくん次第だけど、私のことを選んでもらうよ」

 

 少女の呟いた言葉が静寂せいじゃくの部屋の空気に溶け込んだ。













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