第42話 もしも前世がヒーローだったら(IFエンド)

※IFエンドです。

 最終決戦で思い出した過去がもし〇〇だったら……というやつ。

 プロット段階では候補として存在していた世界線となります。

 本編とは矛盾する部分が生じますが、細けえことは気にすんな!の精神でお願いします。


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■イフエンド:前世は正義のヒーローでした


 幾千、幾万の魔物たちが王都に押し寄せている。

 その光景に、頭の芯が灼かれるような既視感をおぼえる。


 ――そうだ……あれは、ジャークダーとの最終決戦のあと……


 私は、ジャークダーとの決戦を終えて、ジャスティスイレブンを辞めた。

 ジャークダーはたしかに人類に仇なす悪だった。

 しかし、決してわかり合えない存在でもなかったはずだとわかってしまったのだ。


 ジャークダーにはジャークダーの正義があり、そして仲間同士の友情もあった。

 あのマサヨシという戦闘員が、キルレインを身を挺してかばったところで、私は、私の殉じる正義に確信を持てなくなってしまったのだ。


 本部にジャスティスバングルを置き、誰にも告げずに行方を眩ました。

 身分を詐称し、地方都市のスナックで働きはじめた。

 水商売ははじめてだったが、お客さんには意外に可愛がられた。


 そのうち常連客のひとりから「うちで働かないか」と誘われ、小さな広告代理店に入社した。

 慣れないデスクワークには苦労したが、体力だけは自信がある。

 必死で仕事に食らいついた。


 そのうち、とある企画を任された。

 全国で活躍する正義のヒーローたちのグッズ企画の案件だ。


(ここでも正義のヒーローか……)


 思わず苦笑いしてしまったが、社運のかかったプロジェクトらしい。

 社長に恩返しするためにも、私は寝食も忘れて各地のヒーローについて研究し――ているうちに、すっかりオタク化していた。


 それまでずっと「中の人」だったから気が付かなかったが、一歩引いて外から眺めていると、私がかつて信じていた正義もそう捨てたものではなかったらしい。

 そして数は少ないが、ジャークダーにもファンがいたことを知った。あの戦いで散った彼らの想いに共感するものがいたのだとわかると、なぜだか救われた気がした。


 SNSでぽつりぽつりと彼らの思い出をつぶやくと、意外にも反響を呼んだ。

 悪の秘密結社としては異例なことに、ジャークダーのグッズも大量に作られた。その中にはわが社が手掛けたものもある。会社の売上は伸び、社員も増えた。


「┓▓※▧先輩、めっちゃ仕事できますよね! 以前は何されてたんですか? 東京でバリキャリだったとか?」


 そんな風に聞かれたときは、曖昧に笑ってごまかした。

 彼らも深くは突っ込んでこない。

 この街には、訳アリが多いのだ。


 そんな穏やかな日々は、ある日突然崩壊した。


《フハハハハハ! 余は異次元皇帝ナイアルである。地球の人類どもよ、余にひれ伏す栄誉を与えてやろう》


 空が破れ、謎の魔神が現れたのだ。

 世界は瞬く間に崩壊し、空の割れ目に吸い込まれていった――


――――――

――――

――

..

.

.

.


「――そうか、そうだったんだ。真の敵は、お前だったんだな! 異次元皇帝ナイアルよ!」


 記憶とともに、私にかつての力が湧き上がってくるのを感じる。

 女神セイギネスにより、魂に刻まれた私の力。


 そうか、ジャスティスバングルは力の象徴であって、力の源ではなかったんだ。

 両腕を左に伸ばし、それをゆっくりと右に回す。

 そしてその手を前に構え、魂が導くのままに叫んだ。


「我は漆黒よりきたる騎士! 世界に害なす悪党を、この手で黒く塗りつぶすもの――ジャスティスブラック! 変ッ身ッ!!」


 そう、私は正義戦隊ジャスティスイレブン、11人目の戦士、ジャスティスブラックだったのだ!

 漆黒のバイクを駆り、漆黒のコスチュームに身を包む、異形の黒!


蝙蝠怪人バット・バッデス「おおお……どこかから、力が湧き上がってくる……」

蜘蛛怪人スパイディ・ダーマ「別人に生まれ変わったみたいクモ!」

深海怪人ダイオウ・テンタクルス「思い出した! 思い出したイカ!」

猛虎怪人ティガ・タイガー「吾輩、過去、最強! ジャスティスタテジマ推参!」

獅子怪人ライオニダス「がおおおお! 俺はジャスティスオーカーだ!」

関取怪人オーゼキング「おいはジャスティスグリーン! ただいま土俵入りにごわす!」

蟷螂怪人マンティス・シザース「あら、可愛いあーしが帰ってきちゃった❤ ジャスティスピンク、華麗に参上♪」

侍女怪人ジージョ・レディ「あっ、ブラックさん。やっと帰ってきたんですね! ……あれ、何を言ってるんだろ?」

将軍怪人オトーサマー「ハーッハッハッ! まさか儂がブラックの親になっていたとはな! すべて思い出したぞ。ジャスティスレッド、まかり通るッ!!」

百足怪人センチピードレス「パワーならあっしに任せておきな! ジャスティストライバル、いっちょう暴れてやるぜっ!」


 ははは、みんなも転生してたんだ。

 そうか、だから11人。

 そういうことだったんだ!


「異次元皇帝ナイアル! 時空を超えて、ジャスティスイレブンが貴様を倒しにやってきたぞ!」

【フハハハハ! 面白い、混沌に呑まれても魂を失わなかったのか。だが、貴様らにいまさら何ができる!】

「私たち11人、全員の力を合わせてお前を討つ! 覚悟しろ!」

【やれるものならばやるがいい。くくく、楽しみだぞ】

「ふっ、どこまで余裕ぶっていられるかな? みんな、やるぞ!」

『応ッ!』

『正義招来! 顕現せよ、ジャスティス・ファイナル・カイザー!!』


 私たちの叫びとともに、雲が渦巻き、雷鳴が響き、一体の鉄の巨人が降ってくる!

 これぞジャスティスイレブンの最終兵器! 究極正義巨人ジャスティス・ファイナル・カイザーだ!!


【な、なんだそれは!? 地球を侵略したときにはそんなものは……】

「あいにく、私が遅刻しちゃっててね。ジャスティスイレブンの真の力、いまこそ味わうといい! ジャスティス・シャイニング・サンライズ・インフィニティースラッシュ!!」

【ぐわぁぁぁあああ!? ば、馬鹿な……数千の宇宙を、次元を総べし余が……こんな……ところで……】

『正義執行!!』


 ちゅどどどどーーーーん!!!!


 ジャスティス・ファイナル・カイザーから放たれた虹色の光線によって、異次元皇帝ナイアルは吹き飛ばされた!!


 かくして、異次元皇帝ナイアルの脅威は過ぎ、世界は平和を取り戻したのである。

 しかし、ジャスティスイレブンの戦いはまだ終わらない。


 この世に悪がある限り、彼らは戦い続けるのだ!


 ~エンディングテーマを背景に名シーン集が流れる~

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