第5話 姉ができて初めての学校③

 授業が全て終わり、下校中の俺。時刻も4時になろうとしている。まぁ、お分かりの通り、日向と一緒に帰っている。別に特に何も無く、ただ歩いているのだが、一つ気になるのは、やけに日向が俺の方をチラチラと見ているということ。俺は気になってしょうがないが、何より咲希の一件で何も考えられない状態。日向に質問をする余裕すらない。すると、日向が突然止まり、呟いた。


「こ、公園にいかない?」


俺はこんなに弱い声を出している日向を見るのは初めてだ。


「いいけど。」


まぁ、公園で落ちついて話でもできればいいかと思い、日向の案に賛成する。そして、公園に着き、ベンチに座る。空はもう夕日で赤くなっている。すると急に日向が、


「颯太さん。」


といつもなら呼び捨てなのに、さん付けで名前を呼ぶ。


「えっ。どうした?そんなの改まって。」


そう聞き返すと、


「えーっと、私は颯太さんのことが好きです。私と付き合ってください。」


と日向が声を張って言う。


「ま、まじ?」


フラグ回収と言ったほうがいいのでは?と思った。


「マジです。私は颯太さんが好きです。好きでたまりません。」


と言う。


「日向が俺のこと、好き?マジで言ってる?」


あの日向が俺を好きだなんてありえない。


「はい。好きです。今まであたりが少し強かったのもそのせいです。ごめんなさい。」


日向は至って真剣な眼差しで俺を見ていた。本当に好きらしい。また困ったことになった。


「いや、まぁ、当たりが強いのはいいんだけど。いや、よくないか。じゃなくて。そんなに俺のことを好きでいてくれたんだ。えーっと、なんかありがとう。でも、今は日向と付き合うことはできない。俺も別に日向が嫌いとかじゃないんだけど、恋愛対象かと言われれば、今はそうじゃないと思うからさ。」

「てことは、私も頑張れば恋愛対象になれるってことですか?」


この質問の意味は日向がこれから俺を惚れさせるためにアタックしてくるってことだろう。別に日向を好きになることはないと思うが。


「う、うん。まぁ、恋愛対象になるかもしれない。」

「じゃー、私、頑張る。颯太を振り向かせるために頑張る。」

「が、頑張って。」


そんな意気込まれても困る。


 なんか、日向って荒々しい人なのかと思っていたけど、意外とピュアな女の子なんだな、と少し思った。可愛い一面も見れそうな感じがした。ちょっと、好きになりそう。まずい。今、早速危なかった。これじゃあ今後の学校生活では気を抜いて入られない。きびしいな。




 あれから俺と日向は公園を出て、途中まで一緒に帰ってきた。しかし、ここからは一人で帰ると言い日向は走って帰ってしまった。そのため、俺は一人で家まで帰る。やっと、一人の時間が来た。今日はだいぶというか相当疲れたのでさっさと休みたいところだが、家に帰ると咲希がいる。また抱きついてきたりしたら面倒臭い。こっちだって男だ。あんなに可愛い子が抱きついてきたら、こっちだって意識してしまう。いつになったら、今まで通りの生活が戻ってくるのだろうか。




 そうも考えているうちに、家に着いた。そして家に入ろうと扉を開けると、そこには咲希が立っていた。そして咲希は言った。


「颯太♡」

「何?」

「今日はお母さんたちが家に帰ってこないって♡」


急に何を言い出すんだ。なぜ親は帰ってこないんだ。それに明らかに咲希の様子がおかしい。嫌な予感しかしない。


「だから私と一緒に入れるね♡」


まずい。

俺はまたも訳の分からない状況に理解できず、棒立ち状態。俺と咲希が二人っきり?嘘だろ、今日、あんなことがあったのに?もういい加減にしてくれ。神様。少しはイージーな人生にしてください。僕はただ父さんの幸せのために再婚をOKしたのに!

こんなんじゃ、俺が保たない。


「さあ、弟よ。家に入ってきなさい。私が全部面倒みてあげるからね♡何の心配もいらないよ♡今日はお姉ちゃんと一緒だからね♡」


 おい、咲希。人間が変わりすぎだ。そんなにブラコンなのか。だとしてもやりすぎだ。別に同い年なのに。誕生日が早いからって。本当に俺という人間が壊れそうで心配だ。

 もう俺はどうすればいいかわからず、抗うこともせずに咲希の言う通りに家に入った。


「もうどうにでもなれ。」


俺はそう小さく呟いた。

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