第14話 威力ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ

 翌日、土曜日。俺は斗亜の家の前で斗亜を待っていた。斗亜は昨日俺が話をしようと言っていた付き合いの長い親友。玲は今年からだが、斗亜は小1のときからの付き合いだ。定期的にキャッチボールに誘われる。今日もキャッチボールをしようと言われ待っているのだ。


「お、早いな。」

「まぁお前の家目の前だしな。」


 斗亜の家は俺の家から数十秒で着く距離にある。だからこうして簡単に集まれる。やっぱり斗亜はでかいな。俺も身長は172と高い方だがこいつは178。でけぇ。


「んで、お前キャッチボールついでに話したいことあるって言ってなかった?」

「後で良い。とりあえずキャッチボールしようぜ。」

「ん。」


 斗亜に話すとは言ったが、まだ心の準備ができていない。しばらくはキャッチボールを楽しもう。


「そんな感じ。やっぱお前高校から野球やらん?」

「キャッチボールすんのは楽しいけど野球はしない。」


 こんな話をキャッチボールをする度にしている。斗亜とキャッチボールをするのは楽しいが野球部に入ろうとまでは思わない。でも恒例行事かのように毎回言われる。そこから30分ほど黙々とキャッチボールをし、休憩に雑談をする。いつも通りだ。

 だがこれから俺が話すことによっていつも通り日常崩れる非日常に


「やっぱ斗亜は察してるだろ。俺が言うことがかなりやばいことだって。」

「お前が話したいことあるって言うってことはまともなことじゃないだろ?」

「俺をなんだと思ってるんだお前は…」

「やばいやつ。」

「あながち間違ってないのが余計に腹立つ。」


 冗談を言ってくるものの斗亜の目は覚悟をした人間の目だ。なら…俺も覚悟を決めよう。


「昨日さ、猫を拾ったんだよ。」


 そして俺は語り始める。猫を助けたこと、その時に起きたことを。にわかには信じられない話だが、きっと信じてくれる。斗亜だから。全てを語った俺は黙って斗亜を見つめる。


「俺は信じる。けど、いきなり言われてもなんてリアクションしていいかわからん。」

「やっぱり斗亜は斗亜だな。俺の言ってほしいことを言ってくれる。」

「なんか期待されてたんか。」

「いや、気にしないでくれ。」


 斗亜は信じてくれたが、心のどこかで俺はなんでそんな簡単に信じてくれるのか、と不安に思っていた。最近少しおかしいな、と思いつつ俺は言葉を紡ぐ。


「でも…まだ何ができるかもわかってないんだよ。だから色々試していこうと思う。」

「色々見せてくれよ。」

「え?今?」

「見たい。」

「…わかった。」


 わかったとは言ったが…何ができるか本当にわからないんだよな。なぁ、”俺”。


「何が出来るも何も…お前がしたいことだよ。厨二病だろ?考えてみろよ。」


 そうか。なら試しがいがありそうだ。ありがとな。


「ん。またなんかあったら呼べ。」


りょーかい。


「斗亜、流石にここは人目につくからちょっと移動だ。」

「わかった。」


 この街は自然が多くあり、少し歩いたところに森もある。試すには丁度いい場所だろう。だから俺は斗亜を連れて森の少し奥の方まで向かった。


「この辺で良いだろ?」

「ああ。何するか知らんけど森壊すなよ。」

「だからお前は俺を何だと思ってるんだよ!」

「やばいや…」

「わかったもういい。全力で試してやる。」


 そういった俺は自分の内側に意識を向ける。よくある魔法ってやつは自分に流れる魔力を魔法として打ち出すらしい。俺の場合も仕組みは似たようなものじゃないかと思うのだ。自分の中に流れる”何か”を力に。風として打ち出せば森に被害はないはず。


「なぁ…お前ほんとに森壊すなよ?なんかやばい何かを感じるんだが…」


 発射の直前、斗亜の一言で俺は咄嗟に真上に向けて風を放つ。


 音こそしなかったものの、俺の放った風は上空の雲を吹き飛ばし、曇り気味だった空が快晴に。


「嘘だろ…なんだよこの威力…」

「お前俺が何も言わなかったら森壊してたな。」

「ありがとな。でもこの威力はマズいぞ…加減ができない。」

「マンガとかでも最初はそうだろ、練習しろよ。」

「なんでお前が冷静なんだよ。」

「知らね。」

「俺も知らね。」


 そしてこの日は何事もなかったかのように解散し、俺は玲にも話すことを決めた。

明日は日曜日だし、玲と遊ぶか通話するかで伝えよう。

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