第9話 シリアスの裏でほのぼの
クチナシに連絡し、るばあの部屋に向かう最中俺は考え事をしていた。たぬと話している時、誰かが近くを通ったのだ。たぬとはアイコンタクトで気づかぬふりをするよう伝え会話を続けたが、あの惨劇の話をする覚悟をしたほうが良いかもしれない。あまりにも早すぎるが、最終手段として考えておこう。そう決めた時だった。
「とわにぃ!私達も行く!」
りめあとりぃなが後ろから走ってくる。何故二人がここにいるのか。りめあはたしかるばあと同じ能力者の家系…いや待てよ?能力…家系…
ズキッ…突然の頭痛に俺は思考を放棄した。今はそれどころじゃない。後回しだ。
「わかった。後でちゃんと話聞かせろよ。」
「うん。覚悟してる。」
二人に確認を取りるばあの部屋の前に立つ。
嫌な予感がしていた俺は勢いよくドアを開ける。視界に入ったのは倒れ込むるばあの姿だった。
「るばあ!!!」
***
永遠に皆を任されたクチナシ。
「皆、永遠が先勉強してろって。なんか腕時計のシステム気になっていじり始めちゃったんだって。」
「とわにぃすごっ!分解とかしてそう!!」
にんじんの言葉にクチナシは安心する。とっさに思いついた嘘は案外通用したようだ。
「なぁ組長。りめあとりぃな、るばあがおらんのやけど。」
「るばあは体調崩して休んでる。食べ過ぎたのかな?」
今はとにかく理由をつけて皆の疑念を晴らすしかない。クチナシは思いつく限りの嘘を並べていった。
「りぃなとりめあはるばあを見てくれてるよ。だから先に勉強してろって永遠が。」
「りょーかい。じゃあ始めるかぁ…」
きりも納得し、各々が勉強を始める。それを見たクチナシも安心して自分の問題に取り組むのだった。わかんねぇぞおい。と思いながら。
***
「るばあ?おい!」
るばあは気を失っていた。入ってきた二人も目を見開いている。
「力の使いすぎ…?いやそれにしては酷い症状…」
りめあの言葉に俺は首を傾げる。先程のカオスドッジから時間は立っているし、食事を挟んでいる。…さっきの頭痛といい、何があるのだろうか…。たぬと話している時通った人物と関係があるのだろうか。
「ふたりとも、るばあをベッドに。」
「「わかった。」」
俺は部屋についている救急箱から体温計を取り出し熱を測る。
「熱は…なっ!?」
「どうしたの?」
「何だこれは…」
体温を測るためるばあの口に体温計を入れた瞬間、体温計に表示されたのは《Memory》という文字だった。…記憶?
「とわにぃ…はぁ、話すしかないか…」
「りめあ?これがなにかわかるのか?」
「ごまかさなくて良いよ。私聞いちゃったの……たぬと永遠の会話。」
「りめあだったのか。」
「バレてたんだ…さすがだね。」
これは本当に全てを話す覚悟をしたほうが良いかもしれない。りぃなはよくわからない顔をしているが、りめあと一緒にこっちに来たということは何かを知っているのだろう。
「このMemoryって文字がなんで出てきたのかはわからないけど、さっき言ってた皆の記憶が無いって話に関わってると思う。」
「私も、その話はりめあから聞いた。」
だからりぃなも来たのか。だが本当に話すならるばあの体調が治ってから。今の段階で二人にだけ話すのはやめておこう。
「るばあの体調が良くなったら全てを話す。それまでだけ我慢してくれ。」
「ちゃんと話してよ。」
「ああ。」
りめあに釘を差されたが、一度言った以上俺はちゃんと話す。とにかく今はるばあの体調を…
「るばあ?」
「…僕寝てた…?あれ、とわにぃ…どうしたの?」
***
教室ではみぃあと雪愛を除き全員が熟睡していた。
「これ…勉強の意味ある?」
「ないよね。」
二人だけが黙々と問題を解いていく。
「まだ永遠達戻ってこないし…起こすか。」
「私が起こすよ。」
そういってみぃあは軽く宙をチョップする。
「「「いっ!」」」
それだけで全員が目覚めた。
「面倒だから全員一斉にうなじチョップ。」
「これで起きたね。じゃあ続きやろう。」
こうして何も知らない彼女らの勉強会は進んでいくのだった。
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