目が覚めると同じサークルの女子が隣で寝てた。

はなびえ

朝チュン

 軋むベットの音。

 すべすべとしていて肌触りの良い毛布。

 聞き慣れない時計の振鈴に初めて見る純白色の天井。

 目が覚めるとそこはいつもの狭い我が家ではなく、ホテルのような場所だった。

「はっ?え......どこ?」

 昨夜のことは朧気にしか覚えていないが確か同じサークルの桜木 ゆなと飲みに行っていたはずだ。。。

 .......途端に嫌な予感がして思わず、横を振り替える。

 そこには小柄でまるで小動物のような女子がスヤスヤと寝ていた。

 透き通るような栗色の髪に長い睫毛。

 まるでガラス細工のようにきめ細かく繊細な顔。

 ........間違いない。

 今、隣で寝ている女子は桜木だ。

「んんぅ!...おはよ」

 俺からの視線を感じ取ったのか桜木が重たそうに眼を見開いた。

 宝石のようにキレイな碧色の瞳に思わず吸い込まれそうになる。

「今、何時?」

「10時半だな」

「......そっか。なら頑張れば3限からなら出れそうだね」

「ああ......ってそれよりこれどういう状況!?」

 もしかして酔った勢いで.......そんな最悪の状況が頭を過る。

「.......昨日は熱い夜だったね?」

 桜木は自らの豊満な胸を強調するように持ち上げた。

 頬を赤らめ、こちらにウィンクしてくる様は事後そのものだ。

「えっ?マジ...?」

「ごめん。うそ」

「心臓に悪いよ!?」

 失恋して相談に乗って貰ったの挙句、酔った勢いでなんて桜木に対して不義理過ぎる。

「あはは、ごめんごめん~澤田くん面白い反応するからついね」

「マジで桜木傷つけたと思ってビビったわ」

「別に傷つかないよ~」

 そう言いながら身体を伸ばしている桜木の様は妙に色気があるように見えた。

 桜木に連動してパタパタと動くロングヘア―の髪にバスローブ越しでもこれでもかと強調されているボディーライン。

 多少の恋愛経験はあれど、元カノとそういうことすらしたことがない俺に取って目に毒だった。

「.......ふぅ~ん?桜田くんのえっち~」

「はっ?何が!」

「いやっ、流石にバレバレだっつーの」

 桜木はニマニマと少々イラつく笑みを浮かべながら俺の鼻を人差し指で突いてくる。

「初心ですな~童貞くん!」

 桜木がこちらへと寄ってきたせいか桜木のシャンプーの香りが鼻腔に入り込んできた。

 まるでお花畑の中心にいるかのような甘く優しい香りに身が包まれる。

 でも、何だか少しだけ違和感があった。

 ........あれ?なんか俺の頭からも同じ匂いがする気がする。。。

 短時間しか効果をなさないシャンプーの香り。

 なのにも関わらず同じ香りがしている。

 ........あれ?

「...なあ、桜木本当のこと言ってくれないか?」

「......は、初めてだったんだよ?」

 つまりはそういうことだろう。

 ......お、俺はなんてことをしてしまったのだろう。。。

 付き合ってもいない女子の初めてを貰うなんて言語道断だ。

「な、な~んてね!何もなかったよ!うん」

「どっちだよ!?」

「......今はひみつ」

 昨夜のことについて語られるのは数年後になるとはこの時の俺は思いもしていないのだった。

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目が覚めると同じサークルの女子が隣で寝てた。 はなびえ @hanabie

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