第19話

 彼らを放置して暴力沙汰になってしまったらまずいので、いつでも吸収術を発動できるようにして未だに監視を続けているわけだけど。


 何が面倒だっていうと仲のいいメンバーで6人で固まって来てしまった。とかであれば一度引き返して5人で再びくれば問題がないんだ。


 でも今回は彼らの様子を見る限り男性5人、女性1人で固まっていて、男女で揉めているようだ。女性は社会人から最近スキルに覚醒した人かな。


 聞いている感じではおそらく今日の講習が終わった新人の女性を甘い言葉で誘って連れてきたんだろう。


 女性は支援職がよく使っている初心者用のナイフを持っているし恐らく支援職だと思う。


「すまねぇな。ボス部屋は俺たちだけで行くわ」

「あなた達が一緒に行けば簡単に攻略できるって言ったから!!!」


「ボス部屋には5人までしか入れねぇんだよ。すっかり忘れちまってたんだよ。大丈夫だ。何かあっても事故があって1人で突っ込んだってことにしておいてやるよ」


 男達はヘラヘラしながらそう言い放つとボス部屋に入り規定人数を超えたためボス部屋が閉じてしまった。途端に女性は絶望の表情をしてその場にしゃがみ込んでしまった。


 やっぱり置いてかれてしまったみたいだ。僕がここにきてすぐに探索者に持たされるデバイスで録音、録画してある。それより僕としてはボス部屋に入りたいんだけど、流石にお姉さんをここにおいていくのはまずいし連れて帰ってあげたい。


 このまま1人になってしまったら地上に帰ることすら難しいだろう。

 ある程度潜っていた僕ですら今までは石のゴーレムを倒すのを苦労したんだ。新人ではまず倒せないし、何より僕たち支援職にはソロで潜るにはこのゴーレムダンジョンと相性が悪い。


 ひとまずお姉さんに声をかけてみよう。


「あの、大丈夫ですか?」

「んぇ?ぐすん..。かわいい....。君は..?」


「僕はハルって言います。お姉さんが困っていると思ったので、よかったら地上まで送っていきましょうか」

「本当?!できるなら是非お願いしたいんだけど、一つ聞いてもいい?」


「はい?別に構わないですけど....。」


「それじゃあ聞くけど、君何歳?ダンジョンは保護者の同意があっても15歳からしか潜れないんだよ!」


 お姉さんは急接近して僕の肩を掴むと真剣に僕の目を見て注意した。


 いや聞くところそこ?!もっとなんでさっきまで助けてくれなかったのかとかを聞かれるんだと思っていたよ。


 ちょっ、ち、近い...。何かいい香りもしてきた。

 控えめに言ってとてもいいプロポーションをさせている。青少年には大変毒なので早く離れてほしい。


「それに女の子が1人で探索してたら、さっきのわたしたちみたいに変な男につけ纏わられるかもしれないわよ。気をつけた方がいいわ」


 あれ?助けたのは僕だよね?それをお姉さんがいうのかとも思うけど..。


 ここで僕は自分の一つ致命的なミスに気が付く。今の僕は瑠璃に買ってもらった白い猫耳のパーカーを着ている状態なんだ。


「あの..僕は男ですよ。」


「?!?!」


「何もそんなに驚かなくても」


「いえ、ごめんなさい。格好からしても女の子にしか見えなかったから」


 これに関しては完全に僕が悪いので何もいえないがやっぱり僕は逞しい男としてみられることはないのかな...。



========

あとがき


ようやくメインヒロインの登場です。

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