第11話

 瑠璃はゲンコツを振り下ろした頭を抑えていた。


「……いたぃ…」


「今回ばかりは瑠璃が暴走するのが悪い。」


「そ、そうですが。いいじゃないですか兄妹愛の範疇です!」


「はぁ、さっきのは兄妹愛どころか狂気かカオスだよ。」


「まぁ、ひとまず、解除しようと思わないでくださいね!!押し倒しますよ。」


 逆になぜそれで脅せるのかと聞きたいところだけれど。現に今の僕には効果的面だ。


「わかったよ。それじゃあ『設定』の使い方を教えてもらってもいいかな。」


「はい。『設定』は自身の行いを設定し直して行使することができるんです。ただ制限も多いですが。」


「制限?」


「例えば、設定できる能力の数は10個までです。そして......。」


 瑠璃は詳しい『設定』の内容を教えてくれた。瑠璃が設定した『術式3番 治癒』という治癒の技があるらしい。

 この設定は『瑠璃の怪我が治る』という行動を『自分を呼び他人の怪我が魔力を消費した分だけ治す』という設定に変更しているそうだ。ただし、瑠璃の保持している魔力量以上に魔力を消費しないという制限の設定もかけているらしい。

 これを設定しないと自分の限界量以上に魔力を吸い取って、最悪は自分が死んでしまうそうだ。


 しかし、このスキルの成長の振り幅は大きいらしく初めは設定で弄れることは少ないらしい。


「そうですね。わかりやすい例がありますよ。『術式2番 雷刀』という設定は刀に雷を纏わせる技です。この技は調整を多く重ねているので設定が細かいのですが、簡単に言えば静電気を強化しているんです。」


「静電気を強化ってことはもしかして自分に食らっちゃうみたいな感じ?」


「さすがお兄様!天才です!」


 瑠璃は目を煌かせて僕を褒めるけど、そんなに褒められるようなことじゃないんだけどなぁ。


「ちなみに強化された電気はだいたい1億ボルトなので、本物の雷と同じくらいです。でも火力の調整もできますよ。」


 瑠璃は手に雷をバチバチと出現させる。


「え、なにそれこわい」


「だからお兄様も設定のスキルを使う時は気をつけてください。」


「わかったよ。瑠璃はうまく使えててすごいね。」


「はうぅ。ありがとうございます。でもお兄様もアダマンタイトゴーレムを倒されたのです。すごいどころじゃありませんもっと誇ってください。あの時は戦闘スキルも職業だってサポートのものでしたのに。」


「あの時は天馬さんと正義があいつのコアを剥き出しにしてくれたからだよ。覆われているものは収納できなかったけど、そうじゃないならもしかしてと思ったんだ。あれ、ていうかなんで瑠璃が名古屋ダンジョンに?」


「お母様が『何かある』と言われたのです。お母様ももっと占いの精度を上げてくだされば、お兄様が傷つくことがなかったのに。」


 お母さんがここに来るように言ったのか。というか占い?お母さんは占い師とかじゃなかった気がするけど。

 うちのお母さんは何かとお父さんと共に海外を飛び回ることが多いけど、今まで両親の仕事内容を聞いたことがなかった。ただ両親の仕事部屋に探索者関連の物がいくつかあったので、探索者に関係する仕事についているのだとは思っていたけど。


「ところで占いって?」


「あれ、お母様のお仕事について聞いてないのですか?お母様は日本とアメリカのギルドアドバイザーなのですよ。」


「ん?」


 おかしなことを聞いた気がする。お母さんがギルドアドバイザー?だってギルドってダンジョン探索者の管理をやってるところだよ?それの日本どころかアメリカのアドバイザーって。


 僕は理解できずに首を傾げてしまった。これは詳しく聞く必要がありそうだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る