第9話

 朝起きたら家に帰したはずの瑠璃がおり、その隣には黒服のスーツを着こなした男がいた。明らかに黒服の方は見覚えがないし、瑠璃と一緒にいるってことは不審者ではないだろうし。


「春さん、私はダンジョン庁とギルドの合同調査本部の龍輪 天智と申します。入院中に失礼かと思いましたが緊急性があったので参りました。今回はアダマンタイトゴーレムの出現時の状況についてお話を伺いたいと思っております。」


 ダンジョン庁といえば主にダンジョンから産出する資源の中でも国家プロジェクトで使用する物の管理やダンジョンについての研究、能力使用の犯罪の取り締まりなど国に直接関わるような事を行う国の直轄機関だったはず。


「春さんが目を覚まされるまでに既に天馬さんにも事情聴取を行っていたのですがやはり情報は多いほうがいいですから。」


「なるほどそういうことですか。そういうことでしたら大丈夫です。ぜひ協力させてください。」


 僕は了承するとあの場で起こったことを自分が感じた感情すら全て事細かに伝えた。これが少しは役に立って今回みたいなイレギュラーが少なくなるといいな。そういえば..。


「僕がなんでここに入院しているのか知っていたりしますか?本当だったら僕の身体はもっとボロボロで治るはずなかったんですが。」


「ええ、知っています。ですがすでにご存知だったんじゃなかったんですか?」


「いえ、先ほども伝えたようにアダマンタイトゴーレムに攻撃を喰らってすぐに意識がなくなっていたので....。」


 龍輪さんは謝罪をして驚きながら教えて下さった。。


「そうでしたね。すみません失念してました。春さん、あなたを助けたのはあなたの妹の瑠璃さんですよ。てっきり兄弟なので既にお聞きしているのだとばかり思っていました。」


 僕は意外な人物だったことにびっくりし ぽかーん としてしまう。僕の中では久しぶりに会うことのできた妹という印象が強すぎて、瑠璃が自分自身で私は強い強いと言っていたがあくまでも年相応の範疇だと思っていたのだ。


 しかし、今回僕を助けるために瑠璃が行ったのは確実に体の大部分が破損する程の傷、最悪死んでいたかもしれない体を傷一つ無く回復させたんだ。こんなの間違いなく普通の探索者の実力じゃない。これ程の回復方法をもつ探索者の価値は計り知れない。


「瑠璃なんで教えてくれなかったの!?そんなすごいことができたなんて。」


「お兄様を助けることなんて当たり前のことでしたので言いませんでした。怪我をしているお兄様をみたときは心臓が止まりそうでしたよ。」


「心配してくれてありがとう。それにしてもすごいと思うよ!なんでそんなスキルを持っているのに有名じゃないんだろう。」


 瑠璃は褒められたことでモジモジしていた。


「失礼しますが、それは春さんが知らないだけで少なくとも探索者の方はみなさん知っていますよ。ひとまずこれ以上の情報はいただけそうにありません。では私は話も聞いたのでそろそろ本部に戻ります。何か思い出しましたらこちらにお願いします。」


「わかりました。瑠璃が有名ということについては本人から聞きたいと思います。」


事情聴取を終えた龍輪は名刺を渡すと一礼してから帰っていった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る