第28話 旅立ちの日

昨晩コンとお楽しみを終えて早々に眠りについた。そして今日は早く眼を覚ますと決めていた。予定通りにいつもよりかなり早く目が覚めた。コンは横で気持ちよく寝ている。

「コンさん、少し町にお散歩に行ってきますね。聞いてないか。」

 コンは耳をパタパタとさせているが寝ているので聞いてはいないだろう。


 町に行くために顔を洗って、着替えをした。

 見慣れた家だが当分お別れになるのか、最初一人で旅に出たときはこんなに早く失いたくない幸せを見つけることになるとは思わなかったな。振り返ると何気ない日常がとてもキラキラした宝ものに感じた。朝起きると一人ではない幸せ、話す相手がいる幸せ。失いそうになって初めて分かるものも沢山有るんだなぁ。

 いや、ぼくはこの幸せを守るために旅に出るんだ!弱気になりそうな心を奮い立たせて、自分に言い聞かせた。

 なぜ町に行くかというとギルドのみんなには挨拶せずに行くつもりだったので、せめて最後に町をみて回ろうと考えていたのである。

 町に行ったがさすがに、朝早すぎて誰もいない。町は静かで薄っすら霧がかかっている。

「うーん、お散歩にきてみたものの特にすることもないな。とりあえずギルドをみて帰るか。」

 まだ朝が早いのでギルドには誰もいないはずなので行ってみることにした。


 ギルドの前につくと異変に気が付いた。人の気配を感じる。それも沢山の人の気配だ。こんな時間にみんな居るわけがない。盗賊か?

 ぼくは刀に手をかけて中に飛び込んだ。

 エンジュさんと目が合った。

「え?」

「あ。」

 お互い少し硬直して、エンジュさんが口を開いた。そして周りにみんな居ることに気が付いた。


「来るの早くないか?」


「いや、朝のお散歩で。てか、なんでみんな居るんですか?」


「オラシオンが旅立つことをみんなに話したら、すぐに集まってきたんだよ。」


「みんな・・」


「副団長水臭いじゃないです。黙って旅立とうとするなんて。」

「そうですよ。寂しいじゃないです。」


「みんな、すまない一人で行くと言ったら止められると思って。」


「それは止めますよ。たださっきみんなで話し合って決めました。正直俺らが御供しても足手まといになってしまいます。なので副団長が帰ってくるまで強くなって待っています。そして将来なにかあるときは必ずお役に立ちます。」


「その時は頼む。」

 正直ぼくはみんなの顔をみてすでに泣きそうになっていた。うまくしゃべれないぼくをみてエンジュさんが最後にこう言ってくれた。


「信じて待っているぞ、副団長。たのんだ。この町のことは任せておけ。」


 そのあともみんなと話をして、自宅に戻った。

「おかえりなさい、主様。」

「ただいま、コン」


 朝ごはんを作って待っていてくれた。ご飯を食べながら軽くコンと話した後に旅立つ時間になった。

 玄関の外までコンが見送りにきてくれた。

「主様、必ず帰ってきてくれ。わらわは信じてまっておる。大好きじゃよ主様」

ほっぺにキスをされた。


「必ず帰ってくるよ。約束だ。」

 コンが満開の笑顔を見せてくれた。


 ぼくはハクを呼び出して、黒いマントを身にまとい刀を腰に差した。

 胸には4神獣のかけらのペンダントをつけている。


「立派になったの。主様。」あんなに小さくてかわいかったのに。


「ハク、いくぞ。」

「クン!」


 ハクに、またがり後ろを振り向かずにこういった。


「コン!いってくる」

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