第20話 宴会の始まり

ぼくたちはギルドに戻ってきた。


 エンジュがギルドの扉を開けると一番最初に反応をしたのは受付のお姉さんだった。

 「団長!どこに行っていたんですか!心配しましたよ」

 お姉さんは嬉しそうでもあり、安心したような表情をしていた。団長なら大丈夫と口では言っていたが実際これだけ長期間不在で不安だったのであろう。

 

「すまない。あとで説明する。」

 エンジュさんはその二言だけ言った。言葉は少ないがお姉さんは満足そうな顔をしている。何か通じ合うものがあるのだろう。


「はい、わかりました。おかえりなさい!」


「ただいま。」


「宴会の準備をします!」


 そんなやり取りをしているとギルドメンバーが集まってきた。

「団長!よくぞご無事で。」

「おかえりなさい」

「待っていましたよ。」

 

 エンジュさんが少し気まずそうな顔をしながらみんなと話している。


 ぼくはコンと話をしていた。

「いやー、色々あったけど丸く収まってよかった。」


「そうじゃな。一件落着じゃ。疲れたのー。」


「コンさん、お話があるのですが。」


「なんじゃ?」

 コンが気を抜いたような顔をして答えた。


「最初にブチ切れて、エンジュさんを威嚇したのは誰でしたっけ?」


 コンが罰の悪そうな顔をした。

「いや、それはじゃな。主様を無視したアイツが悪いんじゃ・・・」


「コン。」


「ごめんなのじゃ。」

 少し落ち込んで、耳が垂れていてかわいい。


「でも、ぼくのために怒ってくれてありがとうね」


 耳がピンとなって嬉しそうな顔に変わった。これもかわいい。

 少しだけ頭を撫でたら、ほっぺを赤くして下を向いた。



 「宴会を始めましょう!」


 大量のお酒と料理が机に並べられてた。見たこともない料理がたくさん並んでいる。しかしひときわ目に付くのは酒の量だ。酒でプールでも作ろうとしているのか?というぐらいの量だ。


「団長の帰還祝いだ。」

「団長、副団長前に来て挨拶をしてください。」


 みんなが樽で出来たジョッキを片手にこちらを見ている。エンジュさんと並んでみんなの前にいる。エンジュさんが先に何か言えと言わんばかりにことらに目で合図をしてくる。しょうがないなぁ~。


「皆さん、エンジュさんが無事帰還しました。私はさっき初めて会いましたが今こうして並んでいられることを嬉しく思います。団長が長期で不在にしている間に色々なことがありました。ぼくたちが色々あったように、エンジュさんも皆さんのために行動をしてきました。事情は後で説明してくださる思います。あとの挨拶はエンジュさんに任せようと思います。」

 エンジュさんがこちらをみて、もう少し話してくれ。というような顔をしているがスルーした。


「みんな、迷惑をかけたな。俺はワイバーンを討伐した後にこの辺一帯の異常を調査していた。その結果、4神獣の均衡が崩れたことが判明した。この先こちらの国にも大きな影響が出るのは間違いない。それぞれが強くなりギルド自体が力をつけなければこのこの国を守ることはほぼ不可能だろう。しかし、俺がいない間に随分ギルドの雰囲気も変わりみんな強くなったようだな。これもみんなの頑張と副団長オラシオンのおかげだと思っていてる。今後俺たち「シャドウフレア」はさらに力をつけこの国を支えていこうと思う。みんな力を貸してくれ.俺たちの国を守るぞ。」


「おお!!!!」


 エンジュのカリスマ性はすごい。みんなの士気が一気に上がった。


「今日は楽しんでくれ!乾杯!」


「乾杯!」


 宴会が始まった。みんな今までの不安が飛んだかのように晴れやかな顔をして宴会を楽しんでいる。

 横にいるエンジュに話しかけた。

「やはり、本当の団長がいると雰囲気が違いますね。」


「そうか?」


「はい、ぼくだけではやはり役者不足でしたね。」

 

「何を言う、おれがいない間ギルドを守ってくれたのはオラシオンだろ?本当に感謝している。ところでオラシオンはどこから来たんだ?」


「ぼくは、あの山の向こうの村から来ました。初めて訪れた大きな都市がここです。」


「え?オラシオンはまだ冒険者になったばかりなのか?」


「ええ、そうです。コンと出会ってギルドに入るたためにこの町に来ました。そうしたら以前のような状態です。」


「じゃあ、あまり冒険できていないんだな。すまない。」


「気にしないでください。ぼくが冒険にでた目的は今も叶っている途中なので。」


「目的?何が目的なんだ?」


「幸せに暮らすことです。」


「幸せに暮らすこと?」


「はい。そうです。父と母とくらしていて幸せではあったんですが、それは両親から貰っている幸せだと思ったんです。ぼくは自分が強くなって幸せを維持できるようになりたいんです。そして死ぬときは大切な沢山の人の囲まれていたいです。」


「そうか、いい願いだな。」


「なので、ギルドのみんなと過ごす時間も幸せのうちです。」


「オラシオンさえよければ、この町に拠点を置きつつ色んな場所に旅に出るというのはどうだ?依頼をこなしながら、世界を旅することもできて良いと思うのだが。だからこのまま副団長としてシャドウフレアに残ってほしいと俺は思う」


「副団長続けていいんですか?」


「ああ、もちろんだ。オラシオンほど強い奴は中々いない。一緒にギルドを発展させていこうじゃないか!」


「はい」

 正直エンジュに会うまでは、このギルドの団長が戻るまでの代役で副団長をしているつもりだった。だから団長が戻ったあかつきにはこのギルドをさるつもりでいた。しかしもう少しここにいたいという気持ちが芽生えた。


 宴会も終盤にさしかかり、みんな酔いつぶれていた。辛うじて数人だけ意識を保っていた。あとはみんな机に頭を預けている。コンはご機嫌な顔をして僕のかたに頭を預けている。エンジュは微笑ましいような顔をしてみんなを見ている。


 ああ、楽しい宴会だったな~

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